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ここに来るまで忘れてた。
ロックバンド「トリプルファイヤー」ボーカルの吉田靖直が、毎回ひとつの街をテーマに思い出を綴るエッセイ。

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絶対私が正しくても、なぜ大垣はかたくなに認めないのだろうか?
絶対私が正しくても、なぜ大垣はかたくなに認めないのだろうか?
私が属するバンド、トリプルファイヤーのドラム担当・大垣とは大学1年以来の長い付き合いだ。大垣はメンバーの中では比較的人当たりがよく陽気な雰囲気を持っているため、初対面のバンドと楽屋が一緒になった時などは彼の積極的なコミュニケーションに助けられる。メンバーで唯一、正社員として働いている常識人でもあるのだが、たまにちょっと変だなと思うことがある。今までの付き合いの中で気になったのは、時折私の主張をかたくなに認めない点だ。かなり前の話になるが、本番前の楽屋で「外食チェーンでどこが一番お金を掛けずお腹いっぱいにできるか」を論じ合ったことがあった。私の答えはずばり、「はなまるうどん」である。高校の部活の...

この連載の記事一覧

楽器街でギターを買い、楽器街でギターを売るまで
楽器街でギターを買い、楽器街でギターを売るまで
大学に入学してすぐバンドサークルに入った。何十ものサークルがある中で、最も意識が高そうなところを選んだ。大学生になってまで、遊びのバンドをするつもりはない。全力で取り組みたかった。あわよくば、プロのミュージシャンになりたいとも思った。
オークションで落札したヤンキーくさいおしゃれバイク
オークションで落札したヤンキーくさいおしゃれバイク
初めて原付を買ったのは二十歳の頃だった。当時、ピザ屋のデリバリーで日常的に原付に乗っていたこともあって、自分の愛車が欲しくなったのだ。ホンダのスーパーカブやVespaなど欲しいバイクはたくさんあったが、迷った結果「tomos」に決めた。スロベニア製のおしゃれなバイクだ。レトロな自転車のようなかわいい見た目で日本でも人気がある。
店の名物、チーズドリアは、なぜかおいしくなかった
店の名物、チーズドリアは、なぜかおいしくなかった
亀戸で文章作成のバイトをしていた時期があった。私は基本的にバイト先で明るく振る舞うということができないのだが、特にそのバイトにおいては顕著であった。同じ班のメンバーが私以外全員女性だったことが大きい。女性が多い職場特有の明るい雰囲気にうまく溶け込めず、ただ黙って仕事に集中しているフリをしながら、実際は誰より人の目を気にしていた。
ピザ屋のバイトで忘れ物をし、噓に噓を積み重ねていった夜
ピザ屋のバイトで忘れ物をし、噓に噓を積み重ねていった夜
生来の気の小ささと自尊心の強さのせいだろう、保身のための小さな噓をつき、その辻褄を合わせるため噓を積み重ね、後戻りのできない状況を招いてしまうことが多い。話の流れで出てきた知らないミュージシャンを知っているフリをしたせいで、その後も「あー、あのアルバムもいいよね」「うん、リズム隊が最高だよね」など延々と噓の相槌を打ち続けなくてはならなくなる。最初から正直に「知らない」と言っておけばよかった。そんな時にいつも思い出すのが、昔バイトしていた高田馬場の宅配ピザ屋での一夜だ。
夜行バス大爆発の危機
夜行バス大爆発の危機
数年前の冬、広島でライブをした。ライブはそれなりに盛況に終わり、地元のバンドマンに連れて行ってもらったお好み焼き屋での打ち上げも盛り上がった。場はお開きになろうとしていたが、まだ帰りたくない。せっかくの広島を楽しみ尽くしたい。私は、車に機材を詰め込み帰り支度を始めるメンバーに「もう1日残っていくわ」と告げ、一人広島のサウナに宿泊することにした。
阿佐ケ谷「スターロード」に行きつけの店がほしかった。
阿佐ケ谷「スターロード」に行きつけの店がほしかった。
地元から上京して半年間、大学に近い高田馬場に住んでいた。高田馬場とはいえ駅から徒歩25分の場所なので周りには住宅しかない。場所もあまり好きになれなかったし、半年住んだ頃からネズミが大量に発生、糞尿被害に耐えられなくなったので引っ越すことにした。今度はもう少し駅から近い、楽しい街に住もうと思った。
彼女とデートの最中、ものすごく好みの女の子に出会ってしまったら?
彼女とデートの最中、ものすごく好みの女の子に出会ってしまったら?
中野には学生時代からよく行っていた。家から近くて中古CD屋や本屋が多かったから買い物しに行っていたのだが、中野という街自体も好きだった。
喉から手が出るほどゆずのストラップが欲しかった
喉から手が出るほどゆずのストラップが欲しかった
初めて東京に行ったのは小学6年生の時だった。夏休みの終わりの1週間、10歳上の姉が上京して住み始めた井の頭線池ノ上のアパートに、幼馴染と一緒に遊びに行くことになったのだ。
ティッシュ配りの才能が目覚めたらどうしよう!? とワクワクして考えた
ティッシュ配りの才能が目覚めたらどうしよう!? とワクワクして考えた
もう絶対にギャンブルはやめようと思った。「衣食足りて礼節を知る」という言葉があるが、最低限のお金がないと心が荒んでいくのは本当だと思った。やっと目が覚めた。これを機にちゃんと働いて、中身のあるお金を稼いでいこうと誓った。しかしこの期に及んでも仕事は選びたかった。とりあえず飲食店はテキパキとした動きが求められるから自分には無理だろう。あまり体力がないので肉体労働も厳しい。
サウナを語るにはどうしても『しきじ』に行っておかなければならないと思った
サウナを語るにはどうしても『しきじ』に行っておかなければならないと思った
小学生の頃、たまに親が健康ランドに連れて行ってくれた。子供なので、いろんなお風呂があると全種類をコンプリートしたくなる。その中で、少しハードルが高いが、水風呂にもできるだけ入るようにしていた。試行錯誤するうちに、サウナで限界まで耐えると水風呂に入りやすくなることがわかった。
幸運のネクタイを巻いて、ひたすら新聞営業の電話をかけ続けた
幸運のネクタイを巻いて、ひたすら新聞営業の電話をかけ続けた
何年か前にCSの音楽番組に出演した際、よく当たると評判の占い師にバンドの行く末を占ってもらった。我々のバンドは「今年が分岐点となる重要な年だから必死に頑張った方がいい」とのことだった。私はうんうんと頷きながら、疑いの目を向けていた。そんなものは、いつ誰に対しても当てはまる言葉だと思ったからだ。だが私個人に対する「あなたの『楽してお金を儲けたい』という強い思いが、バンド全体に悪影響を与えています」という鑑定を聞いたとき「この人は本物だ」と思った。
“魂の解放”を求めて2泊3日、東北一周の旅へ
“魂の解放”を求めて2泊3日、東北一周の旅へ
日々の制作に行き詰まり、先の見えない鬱々とした毎日を送っていた。何もアイデアが湧いてこない。やる気も出ない。本を読んだり、体を動かしてみても何も改善しない。もっと根本的に、素朴で原始的な感覚に立ち返らなくては解決しない気がした。
全日本3位とダンス対決という危険な賭けに出た夜の西麻布
全日本3位とダンス対決という危険な賭けに出た夜の西麻布
地元の友達に誘われ、初めてクラブに行ったのは20歳前後の頃だった。連れて行ってもらったのは出会い目的の客ばかりの、いわゆる「チャラ箱」だ。友達は女の子に次々と声を掛け、10分もすると仲良くなっていた。羨ましかったが、ゴリゴリした色黒の男たちの中で場違いな存在としか思えず、一人黙ってクラブを退出。渋谷駅前で喉の限界までタバコを吸い、数時間始発列車を待ったのである。
こいつにだけは負けたくない!と初めて思った窪塚気取りの暗いやつ
こいつにだけは負けたくない!と初めて思った窪塚気取りの暗いやつ
高校生の頃、将棋部に入っていた。とは言っても、練習に参加したのは3年間で5回にも満たない。いわゆる幽霊部員だ。将棋自体は小学生の頃からたまに遊びでやったが、系統的に学んだ人には全く歯が立たない。「穴熊」「矢倉囲い」などの初歩的な戦術すら理解していないレベルだった。
神職の資格を取った次の日、友を失い、恋が残った
神職の資格を取った次の日、友を失い、恋が残った
色々なところで言っているが、私の実家は神社である。長男の私は、幼少時代から親族や近所の人に「早く立派な神主になれよ」と言われ続けてきた。そのたびヘラヘラしながら「そうっすねー」と受け流してきたが、大学生にもなると圧が高まってくる。親から電話がかかって来るたび「早く國學院大學に通って神職の資格を取れ」と言われるようになった。
岡村&小出の夢のセッションを見た直後、虚を突かれた話
岡村&小出の夢のセッションを見た直後、虚を突かれた話
私のような一般的に認知度の低いインディー・バンドマンでも、たまにはメジャーなミュージシャンとかかわる機会がある。特に印象に残っているのは、岡村靖幸さん、Base Ball Bearの小出さんと一緒に飲みに行った夜だ。
ボルダリングジムで出会った気持ちいい若者との気まずい時間
ボルダリングジムで出会った気持ちいい若者との気まずい時間
地元の香川で、車で栄えた街へ行く時にいつも通る国道がある。国道は善通寺市を通過する。祖父母が住んでいたのでよく遊びに行った場所だ。今では道沿いの店が様変わりしていて、憧れていたレンタルビデオ屋も古本屋もない。
絶対向いてないIT企業に就職し、一年半辞めることだけ考えた
絶対向いてないIT企業に就職し、一年半辞めることだけ考えた
できるだけ労働を避けて生きてきた私だが、一度だけ就職したことがある。五反田の小さなIT企業にシステムエンジニアとして新卒採用されたのだ。プログラミングの知識も経験も全くなかった。まあ働き始めれば何とかなるだろうという考えは甘かった。
なぜ私にだけ客引きが寄ってくる? そのシステムについてのツラい考察
なぜ私にだけ客引きが寄ってくる? そのシステムについてのツラい考察
自分は他人に軽んじられやすい方だと思う。それを初めて認識したのは小学校低学年の頃。仲の良い友達の家に遊びに行ったら、別に親しくなかった同級生も交え、鬼ごっこをすることになった。その同級生に「お前、どこ住んどん?」とたずねられたので自分の地区を教え、その後で「お前は?」と聞き返した。彼は「俺はこの近くやで」と答えながら、どこか釈然としない顔をしていた。鬼ごっこをしている途中、タッチが当たったかどうかという議論になった。「お前の手、絶対届いてなかったやん」「いや、届いとった」「服にかすっただけやろ」「いや、ちゃんと当たっとったし」「噓つくなよお前〜」などと言い合いしたとき、彼は一瞬ためらった後、少...
撮影現場の女性スタッフ2人と足利から東京まで電車で帰る気まずい2時間
撮影現場の女性スタッフ2人と足利から東京まで電車で帰る気まずい2時間
役者として映画やドラマの撮影に参加したことが何度かある。正しい演技の仕方も役者の醍醐味も今のところよくわからないが、とりあえず仕事にしては楽しい部類である。撮影中、寒い日は周りがサッカーの控えが着るようなベンチコートを着せてくれたり、お茶を持って来てくれたりする。恐縮しつつも、慣れないVIP待遇がうれしい。ドラマに出たと言うとガールズバーなどの店員が一目置いてくれることもある。
あのベテラン警官から受けた、高圧的職務質問が忘れられない
あのベテラン警官から受けた、高圧的職務質問が忘れられない
警官からの職務質問、いわゆる職質を受けたことが過去に4、5回ある。職質を受けるということは、「こいつは何らかの罪を犯しているのではないか」と疑われているということだ。警官は疑うのが仕事なので仕方がないのだろうが、やはり人から疑われるのはいい気がしない。しかし警官のそういった活動のおかげで日本の治安が守られているのだろう。なので私は職質されても変に不機嫌な顔をせず、穏やかに微笑みながらポケットの中身を見せる。2、3分も普通に対応していれば何事もなく解放される。しかしそんな善良な一般市民の私にも、腹が立ちすぎて「逆に悪いことしてあいつらを困らせたい」と非行少年のような気持ちにまでさせられた、忘れら...
受験で姉の家に泊まり込んだら、何気ない話し方で金を要求された
受験で姉の家に泊まり込んだら、何気ない話し方で金を要求された
大学受験の時期、滑り止めなども含めて2週間ほど東京に滞在する必要があった。ちょうどその頃10歳上の姉が東京で会社員をしていたので、しばらく姉の住む高円寺のアパートに泊めてもらうことになった。東京に行ける時点で高揚していたが、雑誌「たのしい中央線」や大槻ケンヂのエッセイでよく知っていた高円寺で短期間でも暮らせるというのは私にとって現実離れしたうれしいことだった。東京の大学を受験するクラスで仲がいいメンバー3人と羽田に着き、モノレールで浜松町に向かうと東京タワーが見えた。誰からともなく、せっかくだから昇っていこうか、ということになった。東京タワーの安い方の展望台に昇り、360度の景色を見渡す。「い...
高校3年の吹奏楽四国大会前日、宿舎前で私と彼女に起こったこと
高校3年の吹奏楽四国大会前日、宿舎前で私と彼女に起こったこと
高校では軽音楽部に入りたかったが、私の高校には軽音楽部がなかった。迷った末、吹奏楽部に入ることにした。吹奏楽にあまり興味はなかったが、今後バンドをやるなら音楽関係の部活をやっておいた方がいいと思ったのだ。あえて女子の多い環境に身を置くことで、女子の前だと挙動不審になってしまうコミュニケーション能力の低さを叩き直す意図もあった。楽器はコントラバスを希望した。コントラバスはエレキベースと構造が近く、練習の成果をバンドに反映しやすいだろうと思ったし、当時ビールのCMでいかりや長介がコントラバスを弾いていた姿がかっこよくて憧れたのもある。4月の終わり頃、私が入部届を出した時点でほとんどの楽器の枠は埋ま...
一瞬で天国と地獄を両方味わった“合コンのハシゴ”というすごい事態
一瞬で天国と地獄を両方味わった“合コンのハシゴ”というすごい事態
合同コンパ、いわゆる合コンに誘ってもらうことがたまにある。呼ばれたらうれしいので用事がない限り参加するが、誘いは半年に1回あるかないかだ。しかし1度だけ、一晩で2件の合コンをハシゴした忘れられない夜がある。バイトで知り合った友人が呼んでくれた合コン。彼は若手の芸人で、他の参加者も自分以外はみな芸人だった。初対面の芸人のノリに置いてけぼりにされないか不安だったが、恐れていたギャグを披露しあうような空気にもならず、穏やかに楽しく合コンは進行した。開始から2〜3時間が経ち、女子たちとも打ち解け切ったように感じられた頃。「そろそろ二次会でも行きましょう!」との誘いに対する彼女たちの反応は、予想外に芳し...
ラジオに出るときはお酒を飲む。という行為は果たしてNGか?
ラジオに出るときはお酒を飲む。という行為は果たしてNGか?
お酒が飲めるようになって以降、ことあるごとにその力を借りながら生きて来た。学生時代の就活やバイトの面接、男女混合の飲み会、上司に謝罪の電話を掛ける時も、事前にお酒を飲んで外交的な自分を取り繕って挑むようにしていた。ライブの前は250mlくらいのペットボトル焼酎を1本、コンビニのお茶で割って飲むのが長年のルーティンになっている。たまにテレビやラジオに出る時にも、ある程度お酒を飲んでおく。積極的な発言が求められる場で萎縮して何も話せず、負のオーラを発散するだけで終わったことが度々あった。お酒は私にとってコミュニケーションを取るための特効薬のようなものだ。適当にやってもなんとかなるっしょ、と舐めた気...
祖父の訃報を受けて故郷に帰る時、その弁当を選べる姉は頼もしかった。
祖父の訃報を受けて故郷に帰る時、その弁当を選べる姉は頼もしかった。
兄弟がいて良かったな、と一番思うのは肉親が亡くなった時かもしれない。大学1年の夏、実家で一緒に住んでいた祖父が亡くなった。80を過ぎても竹藪から竹を切り出してホウキを作ったり、神社の石段を掃除したりしていた祖父だが、足腰が弱って部屋から出なくなってからは急速に老いが進行し、意識が朦朧としていることも増えた。寝たきりになって近所の病院に入院した時、きっともう家に帰って来ることはないだろうと思った。受験が終わって上京し新鮮な日々に胸を躍らせていた私は、祖父を思い出すことも減っていた。亡くなった知らせを聞いた時、せめてもっと見舞いに行っておけば良かった、朦朧とする意識の中で途切れ途切れにでも祖父の人...
絶対私が正しくても、なぜ大垣はかたくなに認めないのだろうか?
絶対私が正しくても、なぜ大垣はかたくなに認めないのだろうか?
私が属するバンド、トリプルファイヤーのドラム担当・大垣とは大学1年以来の長い付き合いだ。大垣はメンバーの中では比較的人当たりがよく陽気な雰囲気を持っているため、初対面のバンドと楽屋が一緒になった時などは彼の積極的なコミュニケーションに助けられる。メンバーで唯一、正社員として働いている常識人でもあるのだが、たまにちょっと変だなと思うことがある。今までの付き合いの中で気になったのは、時折私の主張をかたくなに認めない点だ。かなり前の話になるが、本番前の楽屋で「外食チェーンでどこが一番お金を掛けずお腹いっぱいにできるか」を論じ合ったことがあった。私の答えはずばり、「はなまるうどん」である。高校の部活の...
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