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ツウ旅
日本全国を「ツウ」な視点で旅する連載。ときには東京から離れて、まだ知らない土地を歩いてみよう。

最新記事

茨城県取手市 ~利根川の彼岸でぶらり無頼さんぽ~
東京と茨城を最短で結ぶJR常磐線と国道6号。その最南端にある茨城の玄関口が取手市である。水戸街道の宿場町として栄え、現在は10万人強が住む東京のベッドタウン。東京藝大のキャンパスもあり、アート作品があちこちに展示されている。大きな川に挟まれた水辺の町はまた、平将門伝説が多く残る歴史の町でもある。ときに『散歩の達人』2020年11月号の特集のテーマが読書と聞いて、真っ先に浮かんだ顔は谷崎三島に坂口安吾。私の偏った趣向はともかく、安吾は取手に少々縁がある。各地を転々とした安吾は、この町にも8カ月ほど住んだことがあり、いくつかの随筆に取手が登場する。安吾は「トンカツ屋とソバ屋以外に食堂がない」と書い...

この連載の記事一覧

山形県鶴岡市~東北一大きい町は、クラゲにグルメに楽しみいろいろ
山形県の西南端、新潟県に接する鶴岡市は東北一の面積を誇るまち。東西約43km、南北約56kmと広大で、東京23区全域と比べてもなんと2倍以上ある。山、平野、海岸と多様な環境が揃っているので遊びの切り口も多彩。出羽三山の信仰、日本遺産「サムライゆかりのシルク」、朝日連峰の山々、クラゲに人面魚と枚挙にいとまがない。平野部は日本有数の穀倉地帯でもあり、バラエティー豊かな食材が、日本で唯一の「ユネスコ食文化創造都市」を支えている。歴史的には徳川四天王の筆頭、酒井忠次を祖とする庄内酒井家の城下町。町を歩くとなぜか江戸時代の空気を感じる。そんな歴史や文化風土をベースに物語を紡いだのが当地出身の藤沢周平。市...
鹿児島県屋久島~ヤクスギ!だけじゃない、晴登雨読の文芸島
国内で新たな登録があり何かと話題の世界遺産。その先駆け、平成5年に日本初の世界自然遺産となった屋久島は、誰もが一度は訪れたい場所の一つ。本土最南端から約60㎞に浮かぶ周囲132㎞の島で1万2000人あまりが暮らす。意外かもしれないが、島の周囲はすべて東シナ海だ。島の魅力は「ヤクスギなどの特殊な植生や、海岸部から亜高山帯に及ぶ植生の垂直分布など貴重な自然云々」と、ユネスコが認めた特徴を持ち出すまでもないだろう。北限の熱帯・亜熱帯性植物、火山島でないのに溶岩が見られたり、干潮時だけ入れる海浜温泉、集落ごとに異なる独自の文化や習俗など興味を引くものも多い。文化人をはじめ移住する人が多いのも当然だ。島...
茨城県土浦市~レンコンにそばにカッパ伝説と、見どころ食べどころ満載!
室町時代からの城下町、水戸街道の宿場や霞ケ浦の水運のまち、さらには海軍のまちとして、茨城県南の商都として発展してきた土浦市。筑波山と我が国第二の広さを誇る湖・霞ケ浦という二大観光地にはさまれ、最近はサイクリングのベースとしても知られてきた。農業県の茨城だけあって魅力的な食材も豊富。とくに霞ケ浦湖畔の低湿地を利用したレンコンは名産で、レンコンを使ったご当地カレーでの地域おこしが順調だ。当地出身のスターも多い。元大関・髙安をはじめ、取手二高や常総学院を率いた高校球界のレジェンド木内幸男、その教え子の安藤統男(もとお)元阪神監督などファンにはたまらない。12 月28日まで土浦生まれの漫画家「小林じん...
新潟県津南町~越後最奥の秘境を訪ね五感で楽しむジオサイト
長野県との県境に接した新潟県最南端の町。信濃川や中津川が流れ、国内最大級の河岸段丘の雄大な景色が広がる。一年の5カ月が雪に覆われる日本有数の豪雪地帯でありながら、この河岸段丘を利用して先史時代から人々が生活を営み文化を築いてきた。豊かな自然風土は、魚沼コシヒカリや段丘上でつくる高原野菜など、今も質の高い食材の宝庫だ。独特な地形から町内全域がジオパークにも認定されている。秘境で名高い秋山郷にもジオサイトは多い。昭和の初めに秋山郷を訪ねた測量隊に、村人が「源氏はまだ栄えているか?」と聞いた話は、やや眉唾なエピソードだが、戦後しばらくはそんな話が本当に思える秘境だったのだろう。「大地の芸術祭 越後妻...
宮城県石巻市田代島~ネコ好きまっしぐら!モフモフ散歩の島時間
宮城県北東部の牡鹿(おじか)半島の先端近くに浮かぶ田代島は有名な「ネコの島」。「ひょっこりひょうたん島」のモデルともいわれる周囲11.5kmの小島に、国内はもとより外国からもたくさんの観光客が訪れる。そのほぼ全員のお目当てはネコ。もはや観光客ならぬ観「猫」客である。島では昔、養蚕が盛んでネズミから繭を守るために飼いだしたのが「ネコの島」の始まりらしい。漁が盛んなため、縁起物としても大切にされてきた。そんなこんなで現在ネコの数は100匹以上。かつて1000名以上いた住民は現在40名足らずで、ネコと人間の数がとうとう逆転してしまった。島で感じるのは、ネコと人とのほどよい距離。こちらから近づけば人懐...
栃木県益子町~陶芸と中世の歴史に親しむ
江戸時代の末期、常陸国笠間藩(現・茨城県笠間市)で修業した陶工が、益子に窯を築いたことから始まったとされる益子焼。最初は水がめや火鉢、壺などの日用品がおもな製品だったらしい。その後、昭和に入って濱田庄司が創作活動を開始、民芸運動によって一躍有名になった。芸術的な面も持つようになり、作家が集まることで自由な創作環境が育っていった。現在は400人強の陶芸作家や窯元が活躍する陶芸の里に発展。笠間焼とともに、関東の二大陶器生産地になり、店も350軒あるという。陶芸に気をとられて忘れがちだが、文化財がたくさん残されているのも魅力の一つ。中世の文化財で国指定重要文化財の建造物が一番多いのは京都で2位は奈良...
栃木県鹿沼市~掃除には鹿沼箒!! お茶とあんこを巡る”あん”行脚
江戸日本橋から27里(約100km)、麻や木材の集荷・加工でにぎわった宿場町。市街で街道が2本に分かれているのがめずらしい。中世以前からの街道筋は東側で日光道中壬生通(日光西街道)という。城址に近いほうの道は殿様の壬生氏が小田原攻めで滅亡後、家臣が消えた城下へ自然に人が集まった結果、日光例幣使街道として整備されたとか。近年、日光例幣使街道を中心に電線が地中化されて見違えるようにスッキリした景色になった。有名な秋祭りでの山車の繰り出しも俄然スムーズになったそうな。街の特産といえばかつて全国一の生産量を誇った鹿沼箒。天保年間からの伝統を守る箒職人が、現在お一人でがんばっている。地場産の香り高い鹿沼...
群馬県安中市~2020年の「遠足」はアスリート気分で!
安政初、もとい日本初のマラソンといわれるのは、安政2年(1855)に安中藩で行われた「安政遠足(あんせいとおあし)」だ。それにちなんで、安中では毎年5月にマラソン大会が行われている。2019年2月に封切られた映画『サムライマラソン』の元ネタとあって、いつも以上に盛り上がっているようだ。「安政遠足」を考えたのは、幕末の安中藩主で「学者大名」の異名を持つ板倉勝明(かつあきら)。安中の文化に大きな影響を残した殿様で、かの新島襄をはじめ、明治って活躍した安中ゆかりの文化人は勝明の教えをしっかりと受け継いでいる。幕末まで6代にわたって安中を治めた板倉家には、勝明のように学識が高い人物が多かった。「安中教...
群馬県板倉町~三県境を散歩でまたぐ⁉ 揚舟乗って水郷さんぽ~
2018年の夏、隣の館林市を取材したとき「板倉町には水郷があって舟遊びができる」と聞いて、とても気になっていた。板倉町は「鶴舞う形」群馬県のくちばし部分、群馬県最東端にあり、ほぼ平坦地に町が広がっている。南に利根川、北に渡良瀬川が流れ、谷田川が町を東西に横断して流れる。面積の半分以上が農地という、のどかな町だ。多くの川や沼に囲まれ「群馬の水郷」と呼ばれ、水と生きてきた板倉町には独特な文化や歴史があるという。じつをいうと、2011年に「利根川・渡良瀬川合流域の水場景観」が国選定重要文化的景観に選ばれていたとは初耳だった。また、昔は古東京湾がこの辺りまで入り込んでいて「海なし県」群馬で唯一貝塚があ...
埼玉県嵐山町~城、武将……そうだ嵐山、行こう。
古都をそぞろ歩きたくなる早春。だが京都は遠い。関東近辺の小京都も行きつくしたし。そういや埼玉県の小京都・小川のそばに嵐山があるではないか。都心から60㎞圏、東武東上線で池袋から1時間強というほどよい遠さの町で約1万8000人が住む。財テクの名著で知られる「公園の父」本多静六博士が、都幾川(ときがわ)河畔と京都嵐山の景観が似ていると言ったことから人気となり町名にもなった。コンパクトな町なので見どころは?と思いきや、坂上田村麻呂に始まり、藤原利仁(ふじわらのとしひと)、畠山重忠(はたけやましげただ)、木曽義仲、太田道灌の息子資康(すけやす)など名だたる武人の史跡がそこかしこに残る。最近は「続日本1...
山梨県富士川町~人情噺“鰍沢”の舞台で、アッと驚く為五郎~‼
耳新しい町名だが、日本三大急流の一つ「富士川」を連想し、増穂町(ますほちょう)と鰍沢町(かじかざわちょう)が合併した町と聞けば、おおよその見当はつくだろう。甲府盆地の南西端にあり、かつて舟運や身延詣でで大いに栄えたエリアである。西に南アルプス、東に富士山を望み「ダイヤモンド富士」もみられる。落語好きには人情噺『鰍沢』の舞台としても知られ、平和主義の宰相、石橋湛山(たんざん)や米長邦雄永世棋聖という個性的なキャラクターの故郷でもある。さて、ここでクイズをひとつ。「富士川」の読みは?町名・河川名とも「ふじ『か』わ」が正解。ほとんどの人が「ふじ『が』わ」と思っていると地元住民は嘆く。『き』『ぎ』の茨...
静岡県駿河湾~富士と駿河湾を傍らに、 伊豆を愉しむ春の船旅
関東人にとって、伊豆はとても身近な存在だ。ちょっと息抜きに小旅行したいとき、すぐ頭に浮かぶ王道の観光地。至れり尽くせりで何度行っても飽きないが、アプローチを変えたら新たな発見があるかもしれない。地図をみると静岡市の清水港と西伊豆の土肥港を結んでいる航路が目に留まった。駿河湾フェリーだ。出港から到着まで約70分、間近に富士山を眺める定期航路は唯一無二の存在。ときには海上散歩もいいかも。海と船、富士山、伊豆が一度に楽しめるのはポイントが高い。世界文化遺産の三保松原を挙げるまでもなく、駿河湾と富士山のコラボは鉄板の絶景。心躍らせて清水次郎長の港町から船に乗り込み、グルメ満載の伊豆へ。紺碧の海、夕日で...
愛知県岡崎市 ~家康公の故郷は 味噌八丁クルマ八丁~
江戸幕府を開いた徳川家康公生誕の地で知られる岡崎は、人口約39万、愛知県で3番目に人口の多い中核市。江戸時代は「神君出生の城」として名だたる譜代大名が城主になり、東海道の宿場町としても栄えた。ちなみに市街中心にある「康生町」、この地名は家康公の生誕が由来。ほんとうに家康公ありきの街である。岡崎では名古屋グルメを語るに欠かせない「八丁味噌」をはじめ、石工品や三河仏壇などさまざまな伝統産業が育まれ、中京圏らしく現在は自動車産業も盛んだ。八丁味噌を使った定番グルメのほか、今回紹介できなかったが「岡崎まぜめん」も話題だ。またグレート家康公「葵」武将隊の面々とラーメン店がコラボした「家康らぁめん」も巷で...
和歌山県 南紀白浜&田辺 ~東京から南紀へたった70分!! ジャイアントずくめの熊野詣でへ~
パンダ好きの聖地「アドベンチャーワールド」や世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」など魅力あるスポット盛りだくさんの南紀白浜と田辺。陸路だとやや遠く感じるが、1日3便もある飛行機を使えば、羽田空港から最短で70分ほど。こんなに便利な南紀白浜への空路を関東人の8割が知らないとか……もったいないことである。ともあれ空路なら国内屈指のリゾート・白浜温泉はあっという間だ。またお隣の田辺は、古くからにぎわってきた熊野詣での中心地。平安時代の旅人を思って古道を歩き、厳かに霊地を訪ねたい。ほんの少し歩いただけで「中辺路(なかへち)フェチ」になれるはずだ。紀伊田辺駅でレンタサイクルを借り、南方熊楠(みなかたく...
静岡県 森町 旅行けば〜遠江の国に 小京都とコーンの香り
静岡県西部にあって 「遠州の小京都」 として知られる風情豊かな森町。江戸時代には、お伊勢参りの途中に立ち寄るのが当たり前だった火伏せの神 「秋葉山(あきはさん)」 に通じる秋葉街道の宿場町だった。いまも当時の街道脇には、格子戸の町家や土蔵があちこちに残り当時をしのばせる。お茶の出荷や古着の商いでも大いににぎわった。そんな経済環境は高い文化も育んだ。京都から伝わった伝統芸能や祭り、旬の花々、陶芸など上質な観光資源がたくさんある。小京都の常で和菓子の名店も多い。豊かな自然と温暖な気候の森町は、おいしい食材の宝庫でもある。高級茶などのブランド農産物が数多く、とくにトウモロコシは有名。6月ごろには、毎...
千葉県 富里市 ~駿馬とスイカのサラブレッドタウン~
成田は日本の空の玄関口とあって身近だが、そのすぐ隣なのに、あまり足を向ける機会のない富里。行ってみると、台地とそこに入り込んだ谷津田からなる地形が興味深い。かつて耕作に不向きだった台地は、大部分が長い間無住の原野で平安時代ごろから馬が放牧されていた。江戸時代には幕府直轄の牧となって牧士という特殊な身分も生まれた。その後は近代牧畜の先駆けとなり、競走馬育成が盛んになった。そんな歴史ある馬産地とあって、今も牧場や乗馬クラブが多い。また、食感がよくて甘いスイカ、収穫量日本一のニンジンなど「富里ブランド」と呼びたい特産も有名だ。とくにスイカは、皇室へ献上したこともあって「富里スイカ」の名が昭和初期から...
栃木県 塩谷町 ~水あり、山あり、心あり。自然と人情豊かなアクアの里~
栃木県には、日光をはじめ、鬼怒川温泉、塩原温泉、那須高原といったメジャーな観光地が目白押しだ。それらに囲まれ、しかも県都・宇都宮のすぐそばに、ツウ好みの静かな町、塩谷がある。人口1万あまり、栃木県最少という密でない小さな町のいちばんのウリは、なんといっても自然。とくに「日本名水百選」のなかでも、屈指のおいしさと軟らかさを誇る「尚仁沢湧水」は見逃せない。一般観光客の多くは通り過ぎてしまうそうだが、じつにもったいないことだ。高原山の麓に開け、豊かで良質な水と土に恵まれた塩谷は、農作物もおいしい。「たかはら山麓水街道」という、このエリアの食のキャッチフレーズが言い得て妙だ。穏やかで親切な住民と触れあ...
茨城県 笠間市 ~トリビアをもとめて歴史と芸術の里へ~
茨城県のほぼ真ん中、東京から100㎞ほどの距離にある笠間は、里山に囲まれた盆地状の街。陶芸と笠間稲荷神社で知られる観光立市だが、今年6月に笠間焼が日本遺産に認定され、ますます意気軒昂(けんこう)だ。歴史好きには、今も市民の崇敬を集める中世の領主、笠間時朝(ときとも)が興味深い。くしくも彼は7月号の本連載で紹介した栃木県塩谷町の領主、塩谷氏の血筋。和歌にたけた有能な御家人で、京都の三十三間堂など各地に仏像を多く寄進した教養人でもあった。笠間氏は戦国時代末期に衰退したが、益子氏との争いが一因だったとか。同じ陶芸の里として蜜月な現在からすると意外でおもしろい。意外といえば、笠間は坂本九や座頭市、忠臣...
新潟県 小千谷市 ~継之助、錦鯉、ウシ。みんなヨシター!な街~
毎年、秋に行きたくなるのが新潟。新米には少し早いが、緑から黄金色に変わり頭(こうべ)を垂れていく稲穂に心が和む。新潟県のほぼ中央、米どころの越後平野南端にある小千谷(おぢや)市は、信濃川の河岸段丘上に市街地が発達した人口約3万5000人の商人町。牛の角突き、錦鯉、小千谷縮が名物だ。とりわけ錦鯉は本場中の本場。世界中からたくさんの愛好家が訪れる。また、歴史好きにとっては北越戦争の激戦の舞台、鉄道ファンには首都圏のJR電車を走らせる水力発電所が気になるだろう。見どころの多い小千谷だが、現地ではいまだ中越地震の記憶が新しい。当時受けた恩に報いようと、東日本大震災では被災者を民泊で迎え入れた。昔から人...
埼玉県 毛呂山(もろやま)町 ~モロモロぶったまげ! な歴史の里~
毛呂山は奥武蔵の山々の麓に広がる、人口3万人強の静かな町。西は外秩父山地、東はなだらかな平地、JR八高線と東武越生線が走り、都心から50㎞とベッドタウンとしても注目だ。果樹栽培が盛んで、とくにユズは江戸時代(伝承では奈良時代とも)から栽培され、日本でもっとも古い産地といわれている。地区名が付けられたブランド「桂木ゆず」は全国的に有名だ。旬を迎える11月からは、ユズが香る低山ハイキングが楽しい。毛呂駅と向かい合ってそびえる大病院をはじめ、医療関係の施設もたくさんある。そのうちの一つの病院が1965年にチベット難民を受け入れたことをきっかけに、チベットとの交流が盛んなのは意外な事実。その縁でチベッ...
茨城県取手市 ~利根川の彼岸でぶらり無頼さんぽ~
東京と茨城を最短で結ぶJR常磐線と国道6号。その最南端にある茨城の玄関口が取手市である。水戸街道の宿場町として栄え、現在は10万人強が住む東京のベッドタウン。東京藝大のキャンパスもあり、アート作品があちこちに展示されている。大きな川に挟まれた水辺の町はまた、平将門伝説が多く残る歴史の町でもある。ときに『散歩の達人』2020年11月号の特集のテーマが読書と聞いて、真っ先に浮かんだ顔は谷崎三島に坂口安吾。私の偏った趣向はともかく、安吾は取手に少々縁がある。各地を転々とした安吾は、この町にも8カ月ほど住んだことがあり、いくつかの随筆に取手が登場する。安吾は「トンカツ屋とソバ屋以外に食堂がない」と書い...
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