屋久島三山縦走

縄文杉も楽しめる洋上のアルプストレッキング

花崗岩の山地は奇岩怪石の宝庫。途中日本最南端の泥炭湿原もある。

人気ルートは樹齢7200 年とも言われる縄文杉往復だが、約8 割が単調なトロッコ道で人も多いから思いきって縦走するのも手だ。九州最高峰である宮之浦岳(宮之浦御嶽)、永田岳(長田御嶽)、黒味岳(黒御嶽)の三山は標高2000 m近いけれど、登り口が高く距離は長くても思うほどキツくない。白谷雲水峡から入り山小屋2~3泊で淀川入口に抜けるか、淀川入口から小屋1~2泊で荒川口か白谷雲水峡に出るコースがオススメ。●協力金1泊2000 円。

山々が一望できる太鼓岩。白谷雲水峡の辻峠そばにある。
縦走路から往復90分の永田岳。右に3時間強下れば縄文杉に会える。

白谷雲水峡&ヤクスギランド

大スギ多過ぎ!!ハイキングで会えるヤクスギ群

くぐり杉。ヤクスギは異形のために伐採を免れた側面もある。

ヤクスギや多様な原生林が見られる2 つの自然休養林は縄文杉と並ぶ定番観光スポット。倒木更新や切株更新、近世の伐採跡もじっくり観察できる。ヤクスギの基準は樹齢1000 年超えでそれ以下は「小スギ」らしいが、樹齢3000 年の弥生杉を前にすると納得してしまう。白谷雲水峡は映画「もののけ姫」のモデルといわれる「苔の森」でも有名。

清流が織りなす景観は庭園のよう。雨上がりがいい。
ヤクスギと照葉樹林の混生。足元をめずらしいシダやコケが覆う。
着生したスギを枯らして成長するヤマグルマは屋久島特有の景色。
「しなやかな線が女体のよう」と公募で2013年に名付けられた女神杉。
住所:鹿児島県屋久島町宮之浦/営業時間:管理棟8:30 ~16:30/定休日:無

千尋滝

アニメキャラの名前にもなった名瀑

由来になった右岸に迫る圧巻の一枚岩は250 × 300 mの花崗岩。

尋、千人が手を結べるほど大きい岩盤から名付けられた。落差約60 mの滝自体は遠目なので迫力はそこそこだが、この大岩盤は大川の滝に負けない絶景。標高270 mの展望所からの眺望もよい。駐車場に登山口がある本富岳の読み「モッチョム」は方言で女性器の意味とか。陰陽に見える山容が理由だが、地元住民は赤面せずに言えるのだろうか。

一湊珈琲焙煎所

焙煎道を究める港町のコーヒーショップ

コーヒー豆は180g1200円~。

東京で書籍編集をしていた女性が夫とともにUターン、島の伝統的な古民家を改装して焙煎所を営む。「豆から語りかけられる」と忠幸さん。井上製作所の焙煎器で豆本来の甘みを最大限に引き出し、その時々で最良と思える高品質でストーリーのあるコーヒーを販売。編集室を併設し島の情報発信にも意欲的。

オーナーの高田忠幸さん・みかこさんは散達創刊号からの愛読者。
屋久島の海の玄関口、宮之浦港のフェリー待合所にある。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦1208-1
県営フェリー待合所 2F/営業時間:11:30~17:00/定休日:火・水

民宿 晴耕雨読

ディープな島の話が聞ける?リピーターの多い宿

オーナーの長井三郎さん。フリースペースにぎっしりと本が並ぶ。

『屋久島発、晴耕雨読』(野草社)を著したり、シンガーソングライターの顔を持つなど多才なオーナーはUターンの島出身者。島の季刊誌『生命の島』編集者時代に成り行きで民宿を始め20 年以上になる。本棚とキッチンのあるフリースペースに、夜ごと初対面の旅人が集まり酒を飲み語らう。

住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦136-1

喫茶 樹林

島の自然を守りたい思いが伝わる森のカフェ

辛さが選べるオーロラカレー860 円は、店を引き継いだ眞臣さんの自信作。

現店主・日吉眞臣さんの父・眞夫さんが発行人だった雑誌『生命の島』の情報談話室が前身。ほとんどがスギ材の建物、ヤクスギのテーブル、子供が自由に遊べる庭など。屋久島関連本の閲覧や購入もできる。屋久島産の有機無農薬の紅茶、自家製の屋久島産フルーツジュース430 円~。

荒地再生から変遷するべく自然のあふれる店。空港の徒歩圏内にある。
23年続き、平成21年冬号をもって終刊となった「生命の島」84 号全巻を店内で閲覧できる。
住所:鹿児島県屋久島町小瀬田826-31/営業時間:10 :00~15:30 LO/定休日:日

愚角庵

地を耕し言葉を綴り島の文化を牽引した表現者の庵

仏教に造詣の深かった三省。庵には遺言で祈った薬師如来の像が。

詩人・作家の山尾三省(1938 ~ 2001)は、40 年前廃村だったこの地を終ついのすみかに選び東京から移住。島の自然や人々の暮らしを詩や文章で伝えながら晴耕雨読の日々を送った。移住当時には、原生林保護運動にも携わった。思索を深めた書斎「愚角庵」が生前のまま遺されている。

執筆した机。彼がガンジスの清らかさに例えた川が窓外を流れる。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町一湊白川山/営業時間:10:00~17:00(要予約)

岳参り

中世から伝わる特徴的な島の山岳(三嶽)信仰

60 あまりの石塔が立ち並ぶ牛床詣所は宮之浦地区の遥拝所。

長峰集落では鎮守で行程の無事を祈願し海岸で身を清めて登る。今年はサカキ、酒、集落で作られた米と塩、水、今年発行の500円硬貨、山から下ったものをお返しする意味を込めた海岸の玉石などが山頂の権現様に供えられた。

早朝から正午頃にかけて向岳の権現様に岳参りをする長峰集落。

島の電気事情

自然エネルギー100%できっちりと自己完結

宮之浦に移る前一湊にあった屋久島電工の桟橋の跡。奥は矢筈岳。

90%が森林で地形が急峻、雨量豊富な屋久島は水力発電に都合がよい。その利を生かして屋久島電工は島内に3つの水力発電所を造り電力消費が大きい炭化ケイ素を製造している。発電量のうち1/ 4は配電組合などを通じて島内の家々に供給。大手電力会社が独占せず電力自由化のはるか前から独自の供給網で発送電が分離されている日本唯一の地域だ。

Restaurant&Wine Barヒトメクリ.

屋久島情報とグルメを発信

昼はランチ、午後は喫茶、夜はディナーやワインを楽しみたい。

自然な農法で育てた島の野菜などの食材を使った料理が楽しめる。「屋久島と人をめくる・めぐる、頁をめくる」の思いで名付けた季刊~年刊ペースの地元誌『屋久島ヒトメクリ.』出版元の直営店で、バックナンバーや島の書籍が揃い特産品も販売。自然派ワイン600 円~。

屋久鹿ジャーキー10 g540 円~、まるごとたんかんジュレ1296 円。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町 宮之浦2467-86/営業時間:11:30~20:30 LO(月曜は
~17:30 LO)
/定休日:月・火

焼酎

読書のお供に超軟水で割った芋焼酎を

もっともポピュラーな三岳をはじめ黒麹使用の水ノ森など多種多様。

屋久島には安房地区に工場を持つ焼酎メーカーが2社ある。島の河川が「屋久島宮之浦岳流水」として名水百選に選ばれているだけあって、超軟水で育ったイモと水で仕込んだ焼酎はまろやかな味わい。とくに仕込みと同じ島の水で割ると格別だ。みやげには割り水用に島の水もセットで買いたい。島民は空港そばのスーパーでまとめ買いしている。

家で作った焼酎に課税されたので、やむなく流した川の名前とか。

散歩亭 ダイニング&バー

安房川を眺めて洋風島グルメに舌鼓

店名は「セイントポート=聖なる港」にもかけている。

新鮮な島の食材を使った料理やカクテルが楽しめる。テラス席もありしゃれた店ながら、カウンターがあるので1 人でも入りやすく、他の客とも会話しやすいフランクな雰囲気。ランチはパスタと季節のサラダ、ドリンク付きで980 円~。

飛魚マリネと香味野菜のサラダ仕立て650円。季節のスパゲッティ850円〜。焼酎の種類も多い。
ジャズ喫茶として1975年創業。ダイヤトーンの名機が語る。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町安房2364-17/営業時間: 11:30~14:00 LO、18:00~翌1:00 /定休日:第1・3日(変動あり・ランチは日休)

ヤクニク屋

2014年創業、島で唯一のヤクシカ解体精肉所

屋久島が舞台の椋鳩十の童話「片耳の大鹿」を思い出すが大きさは本土のシカより一回り小ぶり。

山中や西部林道などで見かけるヤクシカは屋久島と口永良部島に生息するニホンジカの亜種。島内に2~3万頭生息し農作物や自然環境に現れ始めた悪影響を軽減する目的で年間約5000頭が有害捕獲されている。精肉所ができたことで、体が小ぶりなため柔らかい肉や皮を食用や皮革製品などに活用する道が開けた。

ヤクニク屋の鹿肉は島内の多くの飲食店で味わえる。
住所:鹿児島県熊毛郡屋久島町宮之浦421-34

革cafe〝ariga-to〞

命に感謝しつつ丁寧に作られるヤクシカ革小物

ヤクシカ革の島財布1万1000円~、長財布5 万3000 円~。

ヤクシカ革作家の清水舞さんが、植物由来のタンニンでなめし、染料のみで仕上げた丈夫でしなやかなヤクシカ革を手縫いで仕上げる革小物。ステッチが美しく糸が切れにくい。裏表の皮がウマとシカ(馬鹿)のキーホルダーなどオーダーにも柔軟に対応してくれる。

おり1550 円、キーホルダー1550円など手頃なものも手触りは上質。
住所:鹿児島県屋久島町一湊2282-2(2020年に宮之浦へ移転予定)/営業時間: 11:00~18:00/定休日:不定

シドッチ神父上陸の地

禁制下に潜入、殉教した最後の宣教師

宝永5年(1708)裃を着て上陸した恋泊の岩礁を教会裏手から望む。

シドッチ神父(1668~1714)はキリスト教禁制の江戸時代、屋久島に上陸を果たしたイタリア人宣教師。東京都文京区の切支丹屋敷跡で発見された遺骨が彼のものと確定した2015年の話題は記憶に新しい。彼の聖母像を基にしたステンドグラスが飾られる教会ではシドッチ祭が例年11月23日に行われる。

教会玄関に並ぶ復顔像と上陸時持参の聖母像、上陸風景のパネル。

手打ちそば松竹 まつたけ

亜熱帯の島で味わう本格そば

そばと天丼・魚めし・とろろ飯・飛び魚の棒寿しセット各1080 円。

熊本産のソバを屋久島の水でしめて手打ちした関東風の二八そば。細めでツルツルとのど越しがよい、旬の野菜などの天ぷらとともに、ヤクスギが香る古民家の座敷で楽しみたい。島の西側には店がほとんどないので貴重な存在でもある。ざる600 円、うな丼セット1450円。

屋久島に行ったらかならず食したい飛び魚の棒寿し。単品600 円。
住所:鹿児島県屋久島町栗生1684/営業時間: 11:00~15:00(売り切れまで・夜は予約で営業)

エビス様

風雨に耐えて海に暮らす人々の安全を見守る

風化したエビス様が多いが麦生の浜エビスは極彩色の完全体だ。

おなじみ漁業の神様。屋久島では「えべっさん」と親しまれ、漁港のある集落には海に向かって浜エビス、集落内に岡(村・町)エビスが対をなして祀られていることが多い。島を一周するときは気に留めてみよう。浜エビスは漁港周辺、岡エビスは漁協近くの港を見下ろす小高い場所を探すとよい。

朝ドラ「まんてん」ロケの小物が15 年を経て里の風景に溶け込む。
口永良部島を望む屋久島灯台の突端に鎮座する。ハシゴで塀を越えて参る、意外な立地に驚く。

一湊散策

ほどよい広さの集落をまったり散歩

海風対策なのか壁一枚の破風がとても合理的な願船寺。

「かおり風景100 選」に選ばれた「サバ節工場」がある首折れサバ発祥の古い港町。石垣が囲む民家や遺跡、愛嬌のあるエビス様、番屋峰、矢筈岬などぐるりと回って3時間ほど。クルマで県道を南下すると平家落人伝説が残る吉田集落、ウミガメの産卵で知られる永田いなか浜に至るが、途中の東シナ海展望所のオブジェがなぜかリクガメ。モヤっとしつつ『なっちゃん食堂』で食事をしてキャンプ場へ。

人里離れた静かな一湊大浦キャンプ場。横に大浦の湯もあり便利。
旧測候所の機銃痕。島は近代まで戦乱がほとんどなかったが、空襲で各集落は大きな被害を受けた。

さーや Yoga 屋久島

心身を見つめるYogaで五感を通し自然とつながる

人気の日の出・サンセットYoga。日の出は春田浜で行い茶会も開く。

オーダーメイドのセルフメンテナンス中心のリラックスストレッチヨガ。武家造の古民家のスタジオを拠点に、日の出や日没の海辺、林間などさまざまな屋外でのヨガを積極的に実践。自然のサイクルを意識してのヨガは、屋久島ならではの新鮮な体験だ。

取材・文・撮影=飯田則夫
『散歩の達人』2017年9月号より