ここで大人の世界に仲間入り!?『ランチョン』

「学生さんは、ゼミの先生に連れられて来ることが多かったかな」とは、4代目の店長・鈴木寛さん。私もその一人だ。頻繁に通ったわけではないのに記憶に残っているのは、安くて量が多いことが最優先だった普段の店との違いが新鮮だったからだろう。10年以上ぶりに食べたオムライスは、トロトロのオムレツとトマトソースには深みがあり、やっぱり大人の味。今度は常連を見習って、古本屋街を散策した後にビール一杯なんて使い方もしてみたい。
『ランチョン』店舗詳細
特濃ボリュームのデンジャラスマッチ『ボーイズカレー』
創業37年。近頃では神保町と言えばカレーでしょ、ということになっているけれど、ここはそのはるか前から変わらぬ味で学生やサラリーマンの腹を満たし続けてきた。しょうが焼きも開店当初からの人気メニュー。ピークタイムには1時間に100 人ものお客さんをさばくため、調理はスピードが命だ。ゆえに肉にも強火でガッと火を入れて、フライパンの中からもファイヤー! 厚めのロースが2 枚と、ボリューム感も抜群だ。
『ボーイズカレー』店舗詳細
酒を恋う、江戸前うなぎ『うなぎ かねいち』
書店帰りの一人客が白焼きをつまみ日本酒でくつろぐ1階、近隣会社の宴会でにぎわう2階座敷。神保町にのれんを出して丸40年、なじみ客が多い、敷居の低いうなぎ屋だ。現在は、鈴木貴之さんと久志さん兄弟が、父親の味、江戸前うなぎを受け継ぐ。さばいて白焼き、後に蒸し、タレをつけ焼く国産のウナギ。その脂の風味を淡白なタレが引き立てる。夜は、酒がすすむ日替わり料理があれこれ。うなぎ屋で、粋に飲めてこそ、おとなかな。
『うなぎ かねいち』店舗詳細
出汁の香り咲く一杯のうどんが酔客をとりこに『ささ吟』
フレンチの修業歴9年という異色の経歴をもつ店主・吉家(きっか)桂三さん。だが、「東京のうどんはほぼ食べ歩きました」と"うどん愛"は強く、その中でも自分が好きな関西風うどん居酒屋を3年半前に開店。茹でても小麦の香りが逃げない道産小麦を使った自家製麺は、もちもちクニュクニュの食感で舌を喜ばせる。昆布出汁と、やや酸味があってフワッと立ち上る鰹カツオ出汁のやさしい味わいは、酒の締めに抜群。
『ささ吟』店舗詳細
富士山をイメージした元祖・冷やし中華『揚子江菜館』
明治39年(1906)創業の老舗店。冷やし中華の元祖ともいえる五目冷やし1540円は、昭和8年(1933)に二代目が考案。高く積んだ麺に、糸寒天やチャーシュー、キュウリなどを周りに盛り付け、富士山の四季をイメージしている。ほかにもシイタケやエビ、錦糸玉子におおわれた中にある肉だんごなど、具材が多彩だ。やや甘めで酸味があるタレで細麺と具材に一体感を与える。
『揚子江菜館』店舗詳細
手が止まらなくなる危険な”軽さ”のピザ『pizzeria zio pippo』
膨らんだ縁の焦げの香ばしさを、一刻も早く口の中に封じ込めるべし。ピッツァは、1枚240gの生地を使うビッグサイズ。店主曰く、「空気をたっぷり含ませて生地を練り、軽い食感に仕上げます」。この軽さが、あれよあれよと完食へ導いてくれる。夜は、粗挽き豚肉のサルシッチャなどの一品料理とワイン、〆にピッツァだ。さらに、別腹用のデザートピッツァも魅惑的。軽さは、ある意味危険かも。
『pizzeria zio pippo』店舗詳細
とろみがついた、あんかけ風の中華カレー『北京亭』
大学をはじめ、多くの学校が林立する白山通り沿いに50年以上続く中華料理店。先代の頃からの人気がカレーライス840円。中華鍋で炒めた鶏ガラに中華スープ、油通ししたニンジン、タマネギ、豚肉、少量の唐辛子と豆板醤などの調味料とカレー粉を入れて軽く煮込む。最後に片栗粉でとろみをつければ完成だ。タマネギのシャキシャキ感と、鶏ガラスープのコクとピリリと残る辛さが絶妙で、どんどんスプーンが進む。
『北京亭』店舗詳細
讃岐うどんの名店の15周麺を知っていたか?『うどん 丸香』
15周年を迎えた年に、15周麺と銘打ち、麺を大きく改良した。「もちもちとキレ、やわらかさとハリ、洗練と田舎麺――。相反するものを両立したくて。全体的にはより温かいかけうどんに合う味と香りの麺になったと思う」と店主・谷口春紀さん。やや細身の麺を啜すすればむっちりと押し返すのびやかな麺が舌に愉悦をもたらし、爽やかな小麦の香りと伊吹イリコの出汁が余韻を残す。毎日食べたい王道の一杯なのだ。
『うどん 丸香』店舗詳細
見た目も味も芸術的な、塩蕎麦『黒須』
黒須太一さんが、醤油と煮干の2種で店を始めたのは2016年。すぐに人気店となり1年後、満を持して始めたのが「塩蕎麦」。3種の中で一番値が張るのはもちろん素材にこだわるから。出汁は水と大山地鶏のみを使用、塩ダレは、厳選した乾物と6種類の塩を独自にブレンド。「塩が一番難しいですね。基本しょっぱいだけですから」。芸術的な「塩」をぜひ!
『黒須』店舗詳細
カロリー焼きで栄養と元気をチャージ『キッチンカロリー』
「ガッツリ食べるぞ!」と、気合を入れて訪れた店。名物は、初代が考案したカロリー焼きだ。ガーリック醤油で炒めたカルビと、パスタやタマネギを一緒に食べると、見た目のボリュームが噓のように完食。「就職を報告に来てくれた学生さんもいるよ」と笑う2代目の江本篤哉さんを慕う客も多く、スポーツ界で活躍している先輩方が今も食べに来るとか。現在は、3代目として息子の雄哉さんも共に厨房に立つ。我らのカロリーはこの先も安泰だ。
『キッチンカロリー』店舗詳細
取材・文=半澤則吉、かつとんたろう、佐藤さゆり、松井一恵(teamまめ)、鈴木健太、井島加恵、速志 淳 撮影=小野広幸、オカダタカオ、須田卓馬、丸毛 透、yOU(河崎夕子)、関 尚道、鈴木俊介、高野尚人、加藤昌人、井上洋平