きっちり木枡(ます)で量る実直な姿勢も魅力『ふくべ』【日本橋】
屋号の『ふくべ』は酒を入れるひょうたんのこと。昭和14年(1939)に創業し、親子3代で暖簾(のれん)を守る。日本酒はカウンター奥に置かれた4斗樽の「菊正宗」をはじめ、全国の銘酒41種類をそろえる。注文後、一合枡で日本酒を量り、漏斗(ろうと)で徳利に注いで提供するのは“ごまかしがない”という姿勢の表れ。しかも、日本酒は温めると膨張するため、少し大きい一合一勺の徳利を使用する。絶妙な加減の燗酒をぜひ味わいたい。
『ふくべ』店舗詳細
料理と日本酒の達人が最高の組み合わせを提供『ヨイノフネ』【久我山】
居酒屋と割烹の間をゆく居心地の良い店で、2023年春にオープン。料理長の渡邉北斗さんが大事にするのは出汁と旬菜。塩ベースの透明に近い出汁は、とことんやさしく素材を引き立てる。日本酒担当の石本孝生さんは10年以上お燗番を務め、温度帯で表情が変わる日本酒の個性を知り尽くしている。日本酒の品ぞろえは定番を据えず、本醸造から純米大吟醸までを幅広い。5勺(半合)550円~で注文できる。
『ヨイノフネ』店舗詳細
/アクセス:京王電鉄井の頭線久我山駅から徒歩1分
長屋の雰囲気とともに理屈抜きで酒肴を味わう『手盃蛮殻』【月島】
100年近い歴史をもつ2階建て長屋の2階で、夕方から夜22時まで営業する日本酒バー『手盃蛮殻(てっぱばんから)』。1階は立ち飲み『酒房蛮殻』になっていて、同じ家の中で“はしご酒”を楽しむこともできる。「難しいことは抜きで、大人が自由に酒と肴を楽しめる酒場にしたい」とは店主の大野尚人さん。日本酒は常温や燗酒がうまい「喜正」や「鷹来屋(たかきや)」など約30種。酒肴はひと手間をかけながらも素材の持ち味を大切にした一品がそろう。
『手盃蛮殻』店舗詳細
コの字カウンターで浸る日本酒の奥深い世界『井のなか』【錦糸町】
店内に入ると目に飛び込んでくるのはコの字カウンター。店主・工藤卓也さんのこだわりで、10m以上ある一枚板から作ったという。この店の自慢は“底なしにある”と自負する日本酒の数々。冷酒、燗酒といった飲み方も含めて、選んだ料理に合うものをすすめてくれる。料理は和洋韓中とバリエーション豊かで、日本酒好きも意外な組み合わせに驚くそうだ。店主の優しい人柄を示すように子ども連れでの利用もできる。
『井のなか』店舗詳細
UKロックをBGMに宮城県の酒と肴を楽しむ『562_ colony』【両国】
宮城県の日本酒と郷土料理の魅力を伝えたい、と米澤大輔・悠子夫妻が2023年4月に開業した。冷酒は「蔵王」や「宮寒梅(みやかんばい)」など宮城県の地酒が中心だが、燗酒は和歌山県の「菊御代(きくみよ)」や新潟の「鶴の友」などもそろえている。大輔さんは無類の燗好きなので、加減も申し分ない。カキのオイル漬け、南三陸のホヤ串、鶏と根菜のクリームチーズ和えなど、悠子さんが手がける酒肴も日本酒に寄り添い、心地よく酔える。
『562_ colony』店舗詳細
旬の焼き魚をつつき、ぬる燗を傾ける『燗アガリ』【西武新宿】
まるごと一尾の焼き魚とぬる燗酒を味わい、最後は炊きたてのコシヒカリで締める。そんな楽しみ方ができる“ろばた焼き”の店だ。カウンター席に座れば、ろばた焼きの象徴である大きなシャモジに乗せて料理や酒を提供してくれる。焼き魚は骨を取り除いてくれたり、ご飯の残りをおにぎりにしたりと家庭的なサービスも好評だ。日本酒は宮城県の「天賞」のほか、「丹沢山」「玉川」など。飲み放題付きコースもあり、小宴会でも重宝する。
『燗アガリ』店舗詳細
真の日本酒好きが集う大人の隠れ家『和酒処 さなぶり』【浦和】
浦和日本酒酒場のパイオニア。“お酒の好みは百人百様。酒質も地域もバランスよく揃える”を心がけ、常時約40種類をそろえる。定番の銘柄は「勝駒(かちこま)純米」「博多練酒(はかたねりざけ)」「米米酒(こめこめしゅ)」など。すべて半合(90ⅿl)で提供する。旨味を凝縮させた汐(しお)うに、ニシンの山椒漬け、辛子明太子の皮をジャーキー風にした博多なかなかなど、全国から選りすぐった酒肴の数々も日本酒好きの心をくすぐる。大人の隠れ家となる一軒だ。
『和酒処 さなぶり』店舗詳細
時間が磨き、育てる熟成日本酒の世界『きたぽん酒』【広尾】
「気になる銘柄を集めるうちに増えてしまった」と笑うのは店主の北尾秀仁さん。その数は500本近くあり、店内の至る所に一升瓶が並ぶ。そのほとんどは寝かすことで奥深く個性的な味わいになる熟成日本酒だ。開店から6年が経過し、「熟成日本酒の会」を年に数回開催するまで、品ぞろえが充実した。酒肴はどの酒でも受け止められる野菜御膳セットがおすすめ。アラカルトでは、職人が仕上げたフランス産の生ハムを試したい。
『きたぽん酒』店舗詳細
日本酒と和食の最高のコラボを実感『酒と肴 ててて』【荻窪】
軒先の杉玉と暖簾(のれん)が目印。店主の中田浩司さんは、日本酒居酒屋で、女将(おかみ)の成美さんは懐石料理店でそれぞれ腕を磨いた。日本酒と和食のプロが作る旬の素材を使った料理は、酒との相性がピッタリなものばかり。「料理に合う日本酒を」と注文すれば、約50種類そろう日本酒の中から候補を出してくれる。店名の「ててて」とは、「作り手、飲み手、伝え手の3つの“手”が由来です」と成美さん。親交のある杜氏(とうじ)が付けてくれたという。
『酒と肴 ててて』店舗詳細
瀬戸内の鮮魚と燗酒と朗らか母娘に癒やされる『へちもん』【京成津田沼】
愛媛県出身の母・こずえさんといつも元気な娘の真貴さんが切り盛りする居酒屋。愛媛県八幡浜から直送される魚介類と、イリコや昆布の出汁をとることから始めるおふくろ料理が好評で、毎日手書きの品書きから選ぶ。日本酒は真貴さんのこだわりから流行を追わず、自分が認めた蔵元のものを仕入れている。10数年前から燗酒の魅力に目覚めたそうで、それぞれの持ち味を引き出した良い加減の燗酒を提供してくれる。
『へちもん』店舗詳細
居心地の良い空間に毎日寄り道したくなる『小鉢と日本酒 たとえば。』【西荻窪】
看板料理は小鉢盛り合わせ。ホウレン草の白和え、ポテトサラダなど、日替わりで15種類ほどの料理が用意され、3点980円、5点1280円、7点1580円を選ぶことができる。日本酒は「龍勢」や「福田」など、全国から旬の酒や稀少なものを取り寄せ、半合(90ⅿl)580円から提供。3種飲み比べセット1080円もある。料理は視覚から味わうものという考え方から食器にもこだわっている。前日21時までの予約でコースにも対応。
『小鉢と日本酒 たとえば。』店舗詳細
燗酒とスイーツのペアリングがクセに『酒好房 かえでの杜』【阿佐ケ谷】
日本中のおいしい酒と国産食材を使った手作り料理でもてなす居酒屋。店主の冨田和裕さんは1カ月かけて酒蔵巡りをしたほどの日本酒好きで、自ら厳選した約30種を提供する。料理の腕前も確かで、和食、イタリアン、エスニックなどの創作料理が味わえる。極めつけは燗酒のあてになるスイーツだ。「和の究極卵」を使ったプリンはカラメルの隠し味に醤油とショウガを加える。甘みが引き締まり、酒と合わせると卵の風味がふくらむ。
『酒好房 かえでの杜』店舗詳細
日本酒を知り尽くしたお燗番の燗酒に感動『えんらい』【渋谷】
うまい燗酒との出合いがきっかけで日本酒に目覚めた店主の坂嵜(さかざき)透さんによると、燗酒は“飲み進めるうちに、飲んでいることを忘れるほど体に染みてくる”ことが魅力という。日本酒の品ぞろえは「白鷹」や「玉櫻」などの燗酒タイプが中心で、カウンターには酒燗器が置かれ、お燗番が目を光らせる。一方、本格焼酎、レモンサワー、ハイボールなどもあり、燗酒を押しつけない懐の深さもある。酒に寄り添う滋味な肴も魅力だ。
『えんらい』店舗詳細
取材・文・撮影=アド・グリーン 撮影=岡田孝雄、鈴木愛子、高野尚人、丸毛透、加藤熊三、原幹和、井上洋平、小野広幸
『散歩の達人 東京名酒場』より