『国境の南、太陽の西』に描かれた青山という街【村上春樹の東京を歩く】
「僕はBMWのハンドルを握ってシューベルトの『冬の旅』を聞きながら青山通りで信号を待っているときに、ふと思ったものだった。なんだか僕の人生じゃないみたいだな、と。」(『国境の南、太陽の西』より)僕のあまり多くない自慢の一つに、古い初版本やサイン本の蒐集がある。若い頃は好きな作家のサイン会に出向いたり、古本屋で初版本を探し求めたりしたものだ。そういうわけで、いつ購入したのかはまったく覚えていないが、今回語りたい村上春樹『国境の南、太陽の西』も初版単行本を持っている。