【上野の名物!絶品とんかつが食べられる店】
ヒレかつ、パン、ソースが見事に三位一体。上野『井泉本店』のかつサンド
東京メトロ銀座線または日比谷線、上野広小路駅から徒歩1分のところにあるのは、「お箸できれるやわらかいとんかつ」のキャッチフレーズで有名な老舗『井泉本店』。昭和5年(1930年)、初代店主・石坂一雄さんがオープン。現在は4代目の石坂桃子さんがのれんを守っている。
昭和の初めごろ、豚肉は固くて食べにくかったのだが、それを『どんな人にも食べやすいとんかつにしたい』と、豚肉の下処理などに工夫をこらし、お箸できれるやわらかいとんかつを開発した。すると、連日600人ものお客さんが行列をなしたという。
また、初代の女将が当時、周囲で働いていた芸者衆のために、日本で初めてのかつサンドを考案。指で持っているだけであとがついてしまうフワフワのパン、甘さ控えめのソースをたっぷりまとわせたヒレかつは超がつく柔らかさ。90年以上愛される三位一体の味わいだ。おみやげもいいが、温かいできたてもおすすめだ。
『井泉本店』店舗詳細
『とんかつ まんぷく』の極厚かつは甘い脂で後味さっぱり
御徒町駅北口から徒歩2分。アメ横商店街の裏路地にある、1962年創業の『とんかつ まんぷく』。当初はカレーライスやスパゲッティなど、豊富なメニューの洋食屋だったが、少しずつメニューを絞ってとんかつメインに。いまは2代目の小澤隆生さんが跡を継ぐ。
おいしいとんかつを目指し、先代の頃から分厚かったロースかつをさらに分厚く。試行錯誤しながら厚さ4cm、重さ300gの超極厚ロースかつを作り上げた。肉は群馬の上州せせらぎポークに、パン粉も都内の有名とんかつ店の多くが御用達という中屋パン粉工場に変えた。
揚げ方にもこだわり低温でじっくり揚げながら、重く沈んだかつが焦げないよう、時々持ち上げる。最後、高温でさっと揚げることで外はサクサク、中はしっとり。細やかな肉質の赤身に、ほどよい甘い脂。油切れがいい肉で、最後までさっぱりいただける。ほかにもロース焼肉、ハムかつなどの定食や、目玉焼きのトッピングも人気。
『とんかつ まんぷく』店舗詳細
衣はサクサク赤身はしっとりと絶妙なロースかつ『とん八亭』
とんかつ屋が多い上野界隈で気兼ねなく立ち寄れる老舗といえば、『とん八亭』。アメ横の裏手にある「たぬき小路」沿いに、昭和22年から店を構えている。目立たない場所にあるとはいえ、行列覚悟で足を運んでほしい。11時半から14時半、わずか3時間の間で早々に売り切れてしまうほどの人気店だ。
一番人気はロースかつ定食1900円。ほかにヒレかつ定食2200円、一口かつ定食1300円がある。丹念な仕込みと熟練の技術には、「おいしく食べてもらいたい」という店主と奥様の想いが感じられる。ほんのり桜色の切り口が美しいサクサクのとんかつ、食べやすくカットされたふかふかのキャベツ、先代の奥様から受け継がれたぬか床の漬物、豚スジの出汁が美味な味噌汁など、どれもこれも箸が止まらない。
格式ばることなく、食べ方はお客さんのご自由にどうぞ、というスタンス。何度も通いたくなる名店だ。
『とん八亭』店舗詳細
大森の名店の流れを汲む上野の老舗『とんかつ まる一』のかつ丼定食
上野の人気スポットの裏手にあたる入谷方面に、大森で行列必至の名店『味のとんかつ 丸一』の系譜のとんかつ屋がある。『丸一』大将の匠の技を受け継ぎ、1994年に『とんかつ まる一』としてオープン。食通のオーナーこだわりの衣が立ったサクッと感のあるとんかつが味わえる。
上ロースかつ、上ヒレかつ(単品で各1760円)のほかにリーズナブルなサービス定食が5種ある。すべてにごはん、豚汁、お新香、ミニサラダが付いて、ロースかつ、ヒレかつ、かつ丼の3種は1320円。夜営業の居酒屋の部『中川亭』でもとんかつを注文できる。
一番人気はロースかつだが、カツ丼の旨さもあなどれない。半熟卵でとじられた熱々のとんかつが、ほんのり甘みの効いた出汁を含み、お肉も衣もいい塩梅にしっとりとしていて美味。ごはんがどんどんすすむ旨さだ。とんかつを1枚1枚、注文が入るごとに仕込む職人の手仕事のこまやかさが随所に感じられ、昔ながらの懐かしい味わいのとんかつに大満足だ。
『とんかつ まる一』店舗詳細
老舗の味が楽しめるとんかつ居酒屋『菜肴ますだ』
実はこの店、昭和41年創業のとんかつ屋『かつ進』の姉妹店だ。料理長の坪好雄さんは長らくかつ進で働いてきたベテラン。とんかつはクリスピーな衣にブリっとした食感で、肉の旨味が詰まっている。お酒は酒好きを自任する女将、増田千佳子さんセレクト。「お酒のことならなんでも聞いてください」。価格もリーズナブルで、かつ進と同じく普段遣いの店にぴったりだ。老舗のとんかつに、こだわりのおいしいお酒は、まさに"とんかつ居酒屋"と呼ぶにふさわしい。
『菜肴ますだ』店舗詳細
御徒町にあらわれた驚きの超巨大とんかつ『吉池食堂』
御徒町のランドマークである『吉池』が2014年にリニューアル、その9階にあるのが『吉池食堂』だ。そこに突如出現したざぶ豚カツ3500円は、30cm×30cmの600gという前代未聞の大きさ。その大きさゆえに用意に時間がかかり、2日前に予約しないと食べられない。宴会コースのオプションとしても注文する人も多いとか。酒を飲むのがコミュニケーションなら、そこで出てくるとんかつも話のネタである。これぞ大衆酒場の心意気。
『吉池食堂』店舗詳細
中国出身の女性店主が引き継ぐ老舗の味『蓬莱屋』
大正元年(1912)創業のヒレカツ専門店。上質の豚ヒレ肉を、二度揚げすることで中まで柔らかくジューシーなヒレカツを作り上げた。映画監督の小津安二郎がこよなく愛した店としても知られ、映画には実際に登場人物がヒレカツを食べるシーンも登場する。2階の座敷席を模したセットを撮影所内に作り上げたというエピソードも有名。現在の店主は、先代に見込まれて養女になった中国出身の山岡燕芳さん。もともとはアルバイト店員だったという。
『蓬莱屋』店舗詳細
【ガッツリ食べたい!デカくて旨い愛されランチ】
大きいことはいいことだ! アメ横で愛される『昇龍』の重量級ジャンボギョウザ
各線上野駅から2~3分ほどで辿り着く上野の老舗町中華『昇龍』。アメ横界隈ではここの巨大なギョウザはあまりにも有名だ。現在の店舗は、JRの高架橋耐震工事による約1年の休業期間を経て2018年にリニューアルオープンしたものだが、よくぞこんな器用に高架橋の間を縫って建てたものだと感心してしまうユニークでインパクトある店構え。JR常磐線と山手線の2つの高架橋の間に挟まるように建つ。
ここのギョウザはとにかく大きいが、その味は繊細だ。焼き目はこんがりパリパリ、皮はもっちり、餡はむっちり。豚ひき肉よりキャベツの比率の方が高いのに、肉の旨味や食感がしっかり感じられる薄味仕立て。その餡をたっぷり包む厚めの皮もお店で手作りする。
「うちのギョウザは、野菜たっぷりであっさりした味付け。ほかの料理もそんなに強い味にせず、やさしい味付けにしてる」と店主の野澤昌治さん。「ちょっと足りないかなぁぐらいの味付けの方が飽きがこないし、また食べたくなるんだよ」という先代の父の教えを守り続ける。これこそが、『昇龍』のおいしさのDNAだ。
『昇龍』店舗詳細
老舗肉卸直営の上野アメ横の超人気店『肉の大山』でコスパ抜群のステーキランチを堪能
JR上野駅不忍口を出て2~3分も歩けば到着する上野アメ横の超人気店『肉の大山』。店頭の立ち飲みコーナーには、名物のコロッケやメンチカツ目当てのお客さんが11時の開店と同時に集まる。その奥のレストランでは、老舗食肉卸直営ならではのランチが、お手頃価格で味わえる。
ランチタイムには近隣のビジネスマンや、アメ横を訪れた観光客などで店の外まで行列ができるほどの盛況ぶりだが、ステーキ、ハンバーグ、牛と豚の生姜焼きに鶏もも唐揚げ、ミックスグリルなど自慢の肉料理のほとんどが1000円以下で食べられる。しかもそのすべてがなかなかにボリューミーだ。
オーストラリア産のサーロインステーキ150gが990円で食べられる大山ステーキは、ランチメニューの一番人気。サイドメニューには豚汁、漬物、ドリンクバーが付く。ステーキの付け合わせにはポテトサラダと生野菜に、ローストベーコン1枚が添えられている。この味と大盤振る舞いには、誰もがかなりしびれるはずだ。
『肉の大山』店舗詳細
【おしゃれなひとときを過ごしたい時はここ!】
フレンチシェフのカツサンドをカフェ『ブラッスリー・レカン・キャフェスペース』で優雅にいただく
JR上野駅の旧貴賓室を活用したレストラン『ブラッスリー・レカン』併設のキャフェスペース『ブラッスリー・レカン・キャフェスペース』は、レトロで落ち着いた雰囲気のカフェ。駅の喧騒からしばし離れてフレンチのシェフが作るカツサンドが堪能できる。
ヨーロッパのクラシックなパブのような雰囲気の落ち着いた店内には、カウンターに止まり木、ソファー席があり、壁に散りばめられたフォトフレームやレトロな丸いペンダントライトにトキメいてしまう。1日に約40万人近い人が行き交う上野駅構内の喧騒から切り離された静かな空間で、ゆったりとした時間を過ごすことができる。
果たして、運ばれてきたカツサンドは驚くほど厚いカツがトーストしたパンに挟まれた魅惑的な風情。使用している豚肉のブランドにはとくにこだわりはないそうで、なによりもこだわっているのは火入れだ。中心にほんのりピンクが残るプロの火入れ。これが名店レカンの究極に柔らかいカツを作り上げている。
『ブラッスリー・レカン・キャフェスペース』店舗詳細
高架下のおしゃれなカフェのボリューミーなサンドイッチ『egg baby café』
御徒町駅から高架下をほんの1分ほど進むと、まるでニューヨークの街角に来たかのようなカフェが現れる。2018年のクリスマスにオープンした卵料理専門店『egg baby café』だ。かつての高架下のイメージとはほど遠いおしゃれ女子たちが日々行列を作る。
『egg baby café』のランチは、サンドイッチ(エッグベイビーサンド with フレンチフライ990円)、エッグトースト(エッグトースト with フレンチフライ880円)、カルボナーラ(エッグベイビーカルボナーラ with 自家製パン1100円)、サラダ(たまごとファーマー野菜のパワーサラダ with 自家製パン1100円)の4種類。
一番人気はエッグベイビーサンド with フレンチフライ。なんと一人前に合計4個の卵が使われているボリューム満点のサンドイッチだ。店のメニューはすべてが手づくりで、サンドイッチのパンも自家製。パン自体に甘みがあって、耳までおいしい。
『egg baby café』店舗詳細
仏料理がベースの気軽に味わえる一皿『ビストロ Enn』
「仕込んだ分が売り切れたら、申し訳ないけど早仕舞い」と、恐縮する菊地幹人シェフ。都内老舗ホテルなどでの経験を看板に独立し、昼も夜も、培ってきた技術を存分に披露する。特注のパン粉をまとった黄金色のメンチは、牛7:豚3の種をまとめて低温で揚げること6分。熱々を頬張ると弾力を感じるや否やふわりとほどけ、ジューシーな口中にご飯をいざ! これがまたつややかな粒が立つ千葉県産コシヒカリ。食材選びに魂を込める菊地さん一番の自慢だ。
『ビストロ Enn』店舗詳細
恐竜をイメージしたメニュー!『ムーセイオン』
おすすめメニューは恐竜の足をイメージさせるハンバーグ。濃厚なドミグラスソースと食べ応えのあるボリュームも人気の秘訣だ。活火山をモチーフにしたチキンカツもぜひ食べてもらいたい一品。
『ムーセイオン』店舗詳細
【伝統の一品をたのしもう】
文化財級のレトロ庶民派そば屋『翁庵』
明治32年に創業したこちらのお店。昭和2年に建てられた建物からは歴史と趣が感じられる。自慢のそばは北海道産そば粉を使用した二八そばだ。イカ天を使ったイカ丼もオススメの一品。
『翁庵』店舗詳細
女性を虜にする"レバタン"『珍珍軒』
「僕自身、他店で同じメニューを見たことがありません」。3代目・河田幸一郎さんが断言するのは、鶏ガラや豚骨で取った塩味のスープのタンメンにレバニラ炒めをオンした「レバニラ湯麺」900円。通称、レバタンである。レバーには隠し味に醤油やゴマ油を少々。香ばしくもパワフルな味わいを演出。さぞ男性に好まれる味かと思いきや、「むしろ女性のお客様のファンが多くて」と河田さん。キャベツやニンジン、野菜たっぷりなのも人気の理由なのだ。
『珍珍軒』店舗詳細
藪の味と伝統を守るのれん分け1号店『上野藪そば』
明治25年(1892)に『連雀町藪蕎麦』(現在の『かんだやぶそば』)からのれん分けされた第1号店。そばは北海道産や福井産のソバを使用した細打ちの二八そば。冷たいそばは風味が生きる手打ち、温かいそばは製麺機で固めに仕上げる。出汁も冷たいそばには鰹節と宗田鰹、温かいそばには鯖節を使うなど、味へのこだわりも強い。藪そばといえば、「そばにちょっとだけつけて食べる」という辛口のつゆが有名だが、この店では、かえしに2種類の醤油をブレンドし、風味豊かに仕上げている。
『上野藪そば』店舗詳細
伝統を守る老舗の極上天ぷら『天寿ゞ』
店主の鈴木康夫さんは、「天ぷらは、衣の出来栄えでおいしさが決まる」という先代からの教えを守り、練りすぎずに軽い口当たりの衣作りにこだわる。揚げたての天ぷらは、衣がサクッと軽い。しかも、包まれた食材は水分がほどよく抜け、旨味と香りがギュッと凝縮。塩を付けて食べると、もう最高。ビールも一緒に頼みたくなる。一方、天丼は、甘めの天つゆが天ぷらの中までしっかりと染み込んで、ご飯との相性がバッチリだ。
『天寿ゞ』店舗詳細
【エスニック×麺のニューウエーブ】
甘辛酸旨のハーモニーにやみつき『Tay Ho Quan(テイ ホー クアン)』
ベトナム政府公認のシェフから料理を学んだという店主のグエウンさん。フォーやブンボーフエなどハノイの定番麺が充実し、プルンとした細麺のブンをタレに付けて食べるブンチャーが人気だ。タレの中に潜んだ肉団子と豚バラのグリルのうまみと、日本人に合わせてほんの少し甘みを強めたという甘酸っぱさのバランスが見事! ハノイの風景に似ているという、蓮の緑の葉で覆いつくされた不忍池の眺めにも癒やされる。
『Tay Ho Quan』店舗詳細
ほのかなラム肉の香りと醬油風味が絶妙『一笹焼売(イッテイシュウマイ)』
内モンゴルのラム肉を使った麺類は、ラムの骨をじっくり炊いた出汁がベース。日本人が食べやすいように醬油仕立てのタレを合わせたスープは、ラム肉の風味とともに深いコクが広がるやさしい味だ。歯応えのあるもっちりとした刀削麺にもよく絡む。さらに、自家製ラム肉チャーシューのしっとりとしたやわらかさに感激。卓上の自家製ラー油を加えてパンチを効かせるのもあり!
『一笹焼売』店舗詳細
【上野駅からちょっと歩くけど、それでも食べたい絶品グルメ】
丹後の味を堪能する『海鮮丹後 あみの食堂』(稲荷町)
丹後出身の安田浩健(ひろたけ)さんは里帰りで久々に食べた故郷の米と魚の味に感動し、「これは、絶対ファンがつく」と確信。地元の農家と漁師から直接仕入れた食材だけを使い、店を開いた。名物のあみの丼は、丹後の漁師飯の代表格。分厚く切ったイナダとサゴシは、ワサビを混ぜた特製醤油で漬けに。やや硬めに炊かれたご飯に所狭しと盛り、噛むほどに魚の脂がコシヒカリの甘みと混ざり合って後を引く。半分ほど食べたら生卵を崩して一気にかきこむのが、通な食べ方だ。
『海鮮丹後 あみの食堂』店舗詳細
味わい穏やかなイタリアン『ティンパニ』(新御徒町)
キンと冷えた野菜スープをすすると、ヒヨコ豆由来のとろみの奥にセロリの辛味を感じてうっとり。月・火は季節を感じる野菜満載の塩味やトマト味などのパスタ。また水・木・金はにぎやか惣菜と十六穀米のワンプレートランチが楽しめる。どれも透明感のあるテイストで、食べ進めるごとに心地よく、夢中になってしまう。時間勝負の昼時も「一皿をビシッと決めたい」と店主・荒川憲一さん。さりげなく力を込めている。
『ティンパニ』店舗詳細
素材の良さをストレートに活かす『グリル ビクトリヤ』(鶯谷)
「ごちゃごちゃやらずに、素材の良さをストレートに活かせばいいの」と物言いも下町風ストレートの店主・大原俊一さん。マルゲリータ2100円は、外カリ、中ふわの生地も酸味を利かせたトマトソースも自家製だし、手ごねハンバーグ(ランチ1300円、ディナー1400円)も注文ごとに肉をひいて焼くなど、ご主人の実直な仕事が光る。「奢(おご)るからぜひここの名物しょうが焼き(ランチ1100円、ディナー1400円)を食べてみて」という常連さんや、ご近所の林家一家など、50年近く地元っ子が通うのも納得。
『グリル ビクトリヤ』店舗詳細
取材・文=かつとんたろう、新井鏡子、京澤洋子、丸山美紀(アート・サプライ)、大熊美智代、パンチ広沢、コバヤシヒロミ、鈴木健太、井島加恵 撮影=小野広幸、新井鏡子、京澤洋子、丸山美紀(アート・サプライ)、大熊美智代、パンチ広沢、コバヤシヒロミ、金井塚太郎、井上洋平