コーンの箱に描かれていた男の子は何者なのか

いつの頃からか移動販売車も来なくなり、あのコーンの箱を家で見なくなって久しい。しかしあの金髪の男の子には、割とよくお目にかかっている。行楽地の売店に、必ずと言っていいほどソフトクリームを抱えたあの子の人形が立っているからだ。

実はこの人形と、「コーンの箱の金髪の子」が同一人物であることに、私は長らく気が付いていなかった。ソフトクリームの販売元である日世のホームページによれば、この子は1950年代からコーンのパッケージに描かれており、60年代以降は各地に人形として登場してPR活動をしていたということである。ならばもっと早く同一人物と気が付いても良さそうなものであったが、名前のないこの子を、キャラクターとして強く認識することがなかったのかも知れない。

後に、赤いリボンの女の子とともに「ニックン&セイチャン」と命名されたこの子は、現在でも日世のイメージキャラクターとして各地で活躍している。行楽地で彼らを見つけるたびに、「よっ、今日も頑張ってるね」と微笑ましい気分になる。ところが彼らを観察しているうちに、それぞれの場所で特徴が異なることに気が付いた。今回はその違いを探ってみたい。

ニックンとセイチャンを細かく観察してみる

上野公園の売店。以前はこの位置に消毒液のテーブルはなかったと思われ、ニックン&セイチャンもテーブルの設置と同時に外に置かれるようになったのだろうか。
上野公園の売店。以前はこの位置に消毒液のテーブルはなかったと思われ、ニックン&セイチャンもテーブルの設置と同時に外に置かれるようになったのだろうか。

まず大きさについて。通常、ニックンとセイチャンは体長1mくらいなのだが、上野公園の売店にいたニックンとセイチャンは、テーブルに乗るほどの小さいサイズであった。スペースの都合ということなのかも知れない。消毒用のアルコールとともに並べられた彼らは、ソフトクリームの販促とともに、手指消毒の大切さを訴えているように見えた。

大体ペアでいることの多い彼らだが、ニックン単体で立っているタイプもある。

筑波山のニックン。頭髪はツルンとしている。
筑波山のニックン。頭髪はツルンとしている。

同じニックンと言っても、筑波山の彼は頭髪がツルンとしており、

奈良のニックン。三本の毛が折れてしまわないか心配になる。
奈良のニックン。三本の毛が折れてしまわないか心配になる。

奈良にいた彼は頭から毛が三本生えている。この違いを見分けるのは至難の業である。

2人で立っている場合も、状況は様々だ。

奈良の2人。適度に離れている。
奈良の2人。適度に離れている。

奈良の2人は適度な距離を保っているが、

銀閣寺の2人。他の場所に比べて明らかに顔が赤い。
銀閣寺の2人。他の場所に比べて明らかに顔が赤い。

銀閣寺近くの店舗では密着しており、そのせいか2人の顔が心なしか赤らんでいるように見える。

更に奈良のセイチャンは赤地に白の水玉リボン、銀閣寺の彼女は赤地に青の水玉リボンという細かな違いに気が付いた人は、ニックン&セイチャン上級者だろう。

2人の行く末が気になる

2人の力の差が生まれているところもある。

益子の2人。この上下関係ができるまでに何があったのだろうか。
益子の2人。この上下関係ができるまでに何があったのだろうか。

益子では、ニックンよりも一段高い所にセイチャンが立っていた。一体何があってセイチャンが優位に立つことになったのだろう。

これまで見た中で一番行く末が心配になる2人、それは山梨の鳴沢氷穴近くにいた。

日が暮れてから撮ったということもあるだろうが、いかにも寒々しい鳴沢氷穴の2人。
日が暮れてから撮ったということもあるだろうが、いかにも寒々しい鳴沢氷穴の2人。

ただでさえ巨大ソフトクリームを抱えているニックンとセイチャン。その脇に彼らの身長ほどもあろうかというソフトクリームが2つも置かれているのだ。涼しい氷穴で、こんな大量のソフトクリームを食べて、お腹を壊さないだろうか。老婆心ながら心配してしまう。

日本全国の行楽地には、まだまだ個性豊かなニックンとセイチャンがいるはずである。子どもの頃のアイスの思い出を胸に、彼らに会いに行く旅を続けていきたい。

絵・写真・文=オギリマサホ