【週末民話研究】徳川吉宗も興味を示した、鐘ヶ淵の沈鐘伝説
鐘ヶ淵(かねがふち)は、東京都墨田区北部の旧地名です。荒川区と墨田区の境界線である隅田川が大きく西から南に曲がる淀みの部分には、鐘ヶ淵の「沈鐘伝説」があり、一帯の旧地名と東武伊勢崎線・鐘ヶ淵駅の名前の由来となったとされています。この伝説に登場する鐘の正体には複数の説がありますが、代表的なものは3つ。①元和6年(1620年)に普門院という寺が移転する際、船で荷物を運搬している最中に落とした半鐘②長昌寺という寺の釣鐘が、享保5年(1720年)の洪水によって流されたもの③戦国時代に千葉氏が北条氏に敗れた際、千葉氏にゆかりのある瑞応寺の鐘が戦利品として北条氏に奪われた。しかしこれを船で運んでいたところ、鐘から突然奇妙な音がして川面が荒れはじめ、恐ろしくなった人たちは仕方なく川に鐘を沈めたいくつかの説があってなんだか謎に満ちた鐘ヶ淵の沈鐘伝説ですが、江戸時代にもこの謎に強い興味を示した人がいました。8代将軍の徳川吉宗です。