自宅で酒場を再現するコツは……?

酒場ごっこを始めたのは、緊急事態宣言後、家にこもり始めてすぐのこと。酒場の国の民は、干からびるのが早いのだ。

砂漠のオアシスを求めるかのように、Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSやグルメサイトで酒場のテイクアウト情報を探し、自宅で酒場を再現する日々。私のルーティンはこんな感じだった。

①テイクアウト・通販する店を決める
②通販ならば注文!テイクアウトならば、注文内容を決めてから食べる直前に購入
③一緒に飲むお酒を購入(現在はお店でテイクアウトできる場合も)
④再現度が上がるサイドメニューやアイテムを用意
⑤乾杯!!

コツは③④の工程を面倒臭がらずにやることが大切だ。特に④の工程は仕上げの作業に近く、店の気に入っている部分を再現するといい。サイドメニューでもいいし、グラスや器、BGMなんかもアリだ。

さて、私なりの酒場再現をご覧いただきたい。

新宿の人間交差点『ベルク』のビール×シャルキュトリ

セット内容はその時によって変わるので、随時サイトでチェックしよう。
セット内容はその時によって変わるので、随時サイトでチェックしよう。

言わずとしれた新宿のカフェ・ビアバー『ベルク』。本筋と外れるが、この店は老若男女幅広い層が集うため、勝手に人間交差点と呼んでいる。

そんな『ベルク』のECサイトでは、名物のソーセージやレバーパテを詰め合わせたセットが購入できる。自粛生活で殺伐とした我が家にお店の味が届いたときは思わず拝んだ。

「ベルクブルスト(肉粒入りソーセージ)」と家にあったザワークラウトで、お気に入りメニューの「ソーセージ&クラウト」風に仕上げた。「レバーパテ」や「ポークアスピック」、「ヴァイスブルスト」も、なんとなくそれっぽく盛り付けてみる。

ビールは近所の酒屋さんで購入。過去の思い出を再生しながら、「あぁ、あの銘柄が手に入れば……。」と考えるのも、なかなか楽しいのだ。

どれも口にした瞬間に肉の旨みやコクが広がり、感動で声が上がる。ビールも進んでいつの間にか空っぽになっていた。

・ベルク公式ホームページ
http://www.berg.jp/

※6月1日現在は店舗も営業中!店内は飲食スペースに加えて、新鮮な野菜や果物などが並ぶマルシェも。

赤羽の宝『まるます家』のうなぎ×ジャン酎

赤羽の人気大衆酒場の『まるます家』はテイクアウトのみで営業中。「うなぎ弁当」、「うなぎの蒲焼」、「きも焼き」などうなぎ料理をメインに販売し、あの「ジャン酎」も持ち帰ることができる。

この日は「うなぎの蒲焼」と「ジャン酎」を持ち帰り、自分で「たぬき豆腐」を作ってみた。

木綿豆腐に、わかめ、きゅうり、カニカマ、揚げ玉を乗せてめんつゆをぶっかけ、わさびを添えただけ。こんなにシンプルな料理なのに本物とは何かが違う。自家製揚げ玉や出汁の違いだろうか。

脂じんわり、香ばしい焼き具合。贅沢をして調子が出てきたのか、日本酒に寄り道したりした。

「ジャン酎」にライムとミントを足して、モヒートも作った。『まるます家』は“お酒は一人3杯まで”が決まりだが、家だと制限がない。酒がスイスイ進む。絶好調のまま飲み終え、家にコの字カウンターが欲しいと願いながら寝た。

『まるます家』公式Twitter

※6月1日現在はテイクアウトのみで営業中

住所:東京都北区赤羽1-17-7/営業時間:11:00~19:00LO/定休日:月(祝の場合は翌)、月に1度連休あり/アクセス:JR各線赤羽駅から徒歩3分

老舗酒場『味珍』の豚の珍味×焼酎梅割り

いろんな種類を少しずつ贅沢に盛り付け。麺類にトッピングしても旨いんじゃないだろうか。
いろんな種類を少しずつ贅沢に盛り付け。麺類にトッピングしても旨いんじゃないだろうか。

創業60年以上、横浜で愛される老舗酒場『味珍』は、店の名物である豚の珍味のほとんどがECサイトで取り寄せできる。3週間ほど日持ちするので、大量に購入。納品書には、手書きで「たくさん注文ありがとうございます。」と書き添えてあった。

酒は、常連客の多くが注文する焼酎の梅割りがいい。むっちりした食感の「豚足」や、ホロリとやわらかい「頭」を頬張りながら、酒をかっ食らうのだ。

梅のシロップはamazonで購入。甘さと梅の濃度がもの足りなかったので、「お、お客さん、困ります!!」と心で唱えながら、梅酒を入れてみた。もはや別物の美味しい梅割りが誕生した。

箸休めにはお店で「ラッパ」と呼ばれている白菜の甘酢漬け。こちらは「ラッパーツァイ」でレシピを調べ、自家製し添えてみた。豚→酒→ラッパの三角食べは永遠だった。

『豚の味珍』公式HP
http://www.maichin.jp/index.html
※6月1日現在は営業再開。

再現してみてわかったこと

自宅で愛する酒場を再現してみて“絶対に店でしか味わえない”ポイントがハッキリ見えてきた。たぶん、これが酒場の正体なのだと思う。きっと人によって違うのだけれど、私の場合はザワザワしたお店の活気だったり、優しいお店のおばちゃんだったり、味のあるコの字カウンターだったりした。一人酒を飲みながら、あの味には酒場の空気も含まれていたんだとしみじみ愛を深めたのであった。

写真・文=福井晶