『東小路飲食店街』
月夜に照らす酒場の光もいいが、夕暮れの少し前、空がまさに群青色になる頃にこの路地が映える。そこを歩いていると、酒場の店先からは仕込み中の音と匂いが漂ってくる──呑兵衛の町、大井町にて。
『地獄谷』
おどろおどろしいその名の路地は、大田区大森にある。山王小路飲食店街、別名『地獄谷』の入口から深い階段を降り進むと、その谷底には酒場の光がおぼろげに輝いている。
〝地獄〟とはいうけれど、どこか暖かみ感じるその光は、この谷底にある安らぎの場を灯しているのだ。
『神楽坂』
その名の通り〝坂〟できた町、神楽坂。ただその他にも「ここ、ほんとに令和なの……?」という、古き良き路地が多く存在するのだ。人がひとり通れるかぐらいの路地を通っていると、自分が猫にでもなったような気分になる。
神楽坂……いや、神楽〝路地〟といってもいい、路地の町である。
『ハモニカ横丁』
この路地にある酒場の店主が答えて曰く、ハーモニカの口の部分のように、小さい間取りが連なっているから〝ハモニカ横丁〟と呼ぶのだそうだ。夜な夜な、路地を照らす赤い提灯たちが吹くハーモニカが、「おいでおいで」と呑兵衛たちを誘惑する。
『未来が見える名もなき路地』
超絶再開発中の渋谷。その中の町のひとつに『桜丘町』がある。ここは再開発のど真ん中にあるにもかかわらず、閑静で探すと古い店が隠れ潜んでいる町だ。その中にある『名もなき路地』から駅の方角を見ると、超高層ビルを背景とした無機質な開発現場が広がる。まるで〝近未来〟を感じさせるその眺めは、再開発が終わるまで〝期間限定〟という儚き光景なのだ。
刻々と過ぎていく時間の尊さと、これからの未来を予感させる、大都市ならではの路地である。
──東京オールド路地ャース
この古きよき路地を愛する人々がいる限り、その小さな〝一筋〟は決して消えることはないのだ。
取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)