歌舞伎町の「うな鐵」でしあわせな夜。
くされる縁の仲間と数年ぶりに集まる。その仲間の旦那が好きだったところ。目指す歌舞伎町。ゴジラの横。ギラギラした輩が集う通りを抜け辿り着く昭和。
大きな提灯に大きな文字で「うな鐵」、「きも焼き」、「クリカラ」。縄の暖簾をくぐりこんばんは。1962年創業という「新宿うな鐵」。
蒲焼きやうな重の定番からうなぎのいろいろな部位を串に刺して炭火で焼く「串焼き」が名物の大衆寄りの酒場。
焼き場を囲むカウンターと小さなテーブル席。こじんまりの空間。おじさんと同伴とカップルが集う。2階は座敷の大広間。予約したテーブル席に案内され連れを待つ。
あいつ、こいつと到着し、とりあえずビールを2本と旦那の分も入れた数のグラスを頼む。
とくとくとくと注ぎ乾杯。
ぷはー、うまい。
お品書きを眺め、「鰻串焼きのおまかせ5本」と夫人夫妻がいつも頼んでいたという「うなぎのたたき」をお願いする。
「生姜がのる奴ですよね」と確認するも店員さんは「白焼きにポン酢の」と意思の疎通が取れぬままたぶんそれとお願いをする。
遅れている連れの分を焼いて良いですかの気遣い。少し焼きを待ってもらう。お通しで細切りの大根。そのまま食べると味がしない。串に添え食べるらしい。
立ち込める煙と立ち込める薫り。これだけで進むお酒。最後の連れが到着して焼きをお願いする。しばらく堪る会話で消費するビール。堪る空き瓶。少しして届く串焼き。
「串巻き」から。ムシャと頬張ると程よいあぶらの身とパリと芳ばしい皮。おいしい。「白ばら」、「くりから」、「ヒレ」、「肝」と続く。
ぷっくらの肉厚の鰻のお腹の身が巻かれる「くりから」にわさびをまぶし頬張り浸るしあわせと「肝」の苦みをおいしいと感じ登る大人の階段。
熱燗がのみたくなり一合だけお願いする。熱つの徳利をお手拭きでくるみ傾けてお猪口に注ぎふわり漂うアルコールを嗅ぎくいと飲む。沁みる。
盛り上がる頃に「うなぎのたたき」。青葱と生姜がたっぷりと載る姿にこれこれと喜ぶ夫人。白焼きにポン酢。ふっくらな身と染み出る甘みに抜ける生姜の薫り。おいしい。一人で抱え込みたい衝動を抑える。
追加でうなぎの首の肉の「かぶと」と蒲焼が連なる「短尺」。どれもこれも愛おしく愛でる鰻。ほっくりのきぬかつぎと大きく肉厚の椎茸を頬張りここ数年のたまる近況を脈絡なく陽気に語り笑う。
数十分おきに頼み、飲み干すチューハイのグラスが並ぶテーブル。あの頃に戻るしあわせな夜。ごちそうさま。
ほろ酔いで闊歩する歌舞伎町で呼込みに写真を頼み記念撮影をしてまたねと別れる。