高田馬場の「長崎飯店」で皿うどんの軟麺。
高校の修学旅行は広島と長崎。その長崎での自由行動で同じ班の「美味しんぼ」を愛読するグルメ王に連れて行かれたちゃんぽんの店。客のいないひっそりとした板張りの薄暗い店内におばちゃんに迎えられる記憶。ぐるなびも食べログもない時代の話。大丈夫かと心配になる。
美味しかったかどうかは全く覚えてないけれど、通ぶってグルメ王が食べる皿うどんの太い麺がとても印象に残ってる。とろりとした餡に絡む太い麺。母親が作る市販のパリパリの硬い麺の皿うどんしか知らないおいらはびっくりしとても美味しいそうだの思い出。
そんな皿うどんを食べられるお店を高田馬場で見つける。高田馬場駅前の「幸寿司」を曲がる路地を少し下る先のビルの半地下の飲食店街の店頭のサインボードに『長崎名物と皿うどん(硬麺と軟麺)』。軟麺の響きにあの日を思い出し、迷わず閉店間際に滑り込む。
刻まれる年季を感じるこぢんまりとしたお店。お店の名は「長崎飯店」。おばあちゃんに迎えられる。押し込まれるように鎮座する赤い円卓とテーブル席。テーブル席に座りお冷やとお箸を運ぶおばあちゃんに「皿うどん、軟麺で」とお願いする。奥の厨房に向かい「皿うどん、軟麺―」とオーダーを通す。
カコンカコンと小気味よい鍋の音を聞きながらのんびり待つ。少しして、からしと共に皿うどん。ちらりのぞくピンクの彩りにそそられるトロんとした餡がこんもりとする麺顔。とりあえずもやしときゃべつをムシャ。ねっとり絡む旨味が詰め込まれた餡に痺れる。
ぐいと麺を引きずり出す。わお。この麵の絵面でご飯3杯は行けそうな少し焼き目のつく素敵な太い麺。ムシャと啜る。もっちむち。かみ締める小麦。おいしい。からしを乗せ、少し酢を回し餡とともに麺を啜る。
豚肉、きゃべつ、もやし、きくらげ、ゲソにあさりにむき海老にかまぼこと盛りだくさんな具。小さい牡蠣がころりと出てくるしあわせ。大事に食べ進み、最後のころ定番という「金蝶ソース」をかけてみる。ふわり薫るウスター。なんだか懐かしい味。残る餡を絡め麺を啜り皿を持ち上げて平らげる。
おいしいが口をつく。毎日でも食べたい皿うどん。井之頭五郎さんが食べたのは渋谷の本店のほう。の1971年創業の姉妹店。ごちそうさま。