【カレー】店主が選び抜いたスパイスが口いっぱいに広がる
ときどき無性に食べたくなるカレー。店主が試行錯誤の末に選び抜いたスパイスが口の中にじんわりと広がる様を体感したら、きっとクセになってしまう。
半熟玉子がのったアイコニックなカレー『HAGI CAFE』(日暮里)
谷中銀座の路地裏で人気を集める一軒家カフェ。消えゆく東京の街並みを残そうと、半世紀以上前の木造建築をリノベーションした味のある内装が魅力だ。数あるフードメニューの中で評判なのはオリジナル配合したスパイスで作ったキーマカレー。口に入れた瞬間にスパイスの香りが弾け、あとからタマネギの甘みがふわりと広がっていく。丁寧にハンドドリップしたHAGISOのオリジナルブレンド550円はフルーティーな香りとコクが自慢。
ココナッツ香るブラジル伝統の味『KAKULULU』(東池袋)
池袋のビル群をバックに、緑に覆われた牧歌的な佇まいが魅力の『KAKULULU』。店主の高橋悠さんと馴染みのミュージシャンたちがここを訪れ、ライブが定期的に開かれる。人気は魚介をトマトとココナッツミルクで煮込んだブラジルの伝統料理・ムケッカ。ライスには炙ったキャッサバ粉と数種のスパイスを合わせたファロッファが振りかけられ、異国の味わいを醸す。
眺めのいい席で味わう爽やかなスパイスカレー『WOOD STOCK』(吉祥寺)
吉祥寺駅からちょっと離れた住宅街の一角で40年以上愛される喫茶店。晴れた日にはテラス席でおいしい空気を感じながらの食事が人気だ。3種のカレーが名物で、とりわけ人気のオリジナルカレーは約30種類のスパイスと野菜の水分だけで煮込んだ爽やかな辛さと風味が特徴。食後はフルーツたっぷりの自家製シフォンケーキ500円や、ドリップしたコーヒーから作る自家製コーヒーゼリー500円がおすすめ。
スパイスとピクルスの香りで心が躍る彩りカレー『喫茶 ランドリー』(森下)
古い工場の1階をリノベーションしたカフェ。店名のとおり、洗濯機と乾燥機、ミシンなどを備えた“まちの家事室”は、手作り菓子や雑貨販売、新鮮野菜のマルシェを開催するなど多様な顔を持つ。人気メニューは、野菜と挽肉、数種のスパイスで丁寧に仕上げる無水カレーライス900円。秋田県の農家から仕入れる米には自家製ピクルスが彩りよく並ぶ。クローブやシナモンが軽やかに香るクラフトコーラ600円とのセットで1500円。
夫婦で磨きあげたスパイス香るカレー『raccoon』(西荻窪)
週末だけ営業というスタイルで2017年にオープンすると、瞬く間にカレーファンの間で話題になった店。丁寧にローストしたタマネギの甘みを感じるポークカレーと、野菜やキノコをスパイスで炒めた野菜カレー、そして週替わりカレーの3種をラインナップする。どのメニューにするか迷ったら、2つの味を楽しめるハーフ&ハーフがおすすめだ。2020年からは月曜、金曜にテイクアウト営業を開始し、イートインは土日のみとなっている。
/定休日:水・木/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩5分
【ナポリタン】ふっくらやさしい麺と確かな味付けでフォークが進む
口に入れたときに「これこれ!」とピンとくる、ふっくらとした麺としっかりとした味付け。ナポリタンを食すなら、やっぱり喫茶店は外せない。
四十数年の歴史を物語る『珈琲 琵琶湖』(梅屋敷)
梅屋敷駅の西に延びる商店街の途上にあるレトロな喫茶店。豊富なフードメニューの中でひと際人気なのは、ナポリタンだ。香りのよいデュラム・セモリナ粉100%で作った1.7mmの中太パスタを、完熟トマトケチャップでしっかりと味付けする。豚挽肉やマッシュルーム、タマネギ、ピーマンなどの食感を残したまま調理するのもこだわり。オリジナルブレンドとセットなら900円で味わうことができる。
イタメシ・ブーム前から変わらないトマトソース『DOELL』(宮の坂)
打ち合わせ客やノートパソコンを広げる客とは縁のなさそうな雰囲気のレトロ喫茶。白い内装とブラインドから漏れる陽光は、アメリカの西海岸にいるような錯覚に。トマトの旨味が際立つナポリタンは、昔から変わらず看板商品だ。「ケチャップ味は無粋。うちはイタメシ・ブームの前からトマトソースを使っててね」とは店主談。辛味のアクセントがほしいときは自家製ハバネロオイルをひと回し。
隠れ家喫茶で味わう野菜たっぷりナポリタン『珈琲専科ポルシェ』(梅屋敷)
駅前商店街から少し離れた隠れ家的な喫茶店は、2022年5月で創業45年を迎えた。店主の石橋幸英さんが笑いながら「開店した当初は白木の壁だったんだけどね」と話す店内はしっかり飴色に育ち、ランプのやさしい灯りが落ちる。野菜たっぷりのナポリタンとサイフォンで淹れたコーヒーは、11時30分~13時30分に提供されるランチセットなら890円ととてもリーズナブルだが本格派だ。
【オムライス】卵のとろける食感と味わい深いライスで満たされる
オムライスの柔らかなフォルム、やさしい黄色は見ているだけで幸せな気持ちになる。ふくよかな旨味もとろりとした上品な舌触りも隅々まで堪能しよう。
ふわふわのメレンゲの下は旨味凝縮のチキンピラフ『Ailnoir』(高円寺)
長年ホテルシェフとして働いていた原賢一さんが店主を務める自然派食材カフェ。交通事故の後遺症で思うようにフライパンをあおれなくなったことがきっかけで、原さんはオリジナリティあふれるオムライスを考案。注文のたびに溶き卵をミキサーで混ぜること十分弱。角がしっかり立ったメレンゲを、野菜の切れ端やヘタで作るベジブロスで炊いたチキンピラフにのせていく。ミニサラダ、自家製の酵素ジュースが付いたセット1650円も好評だ。
シルクのようなやわらかな舌触り『喫茶YOU』(銀座)
1970年に銀座で創業。店の代名詞になっているのは、見ただけでふわとろ食感とわかるオムライスだ。焼き目のないシルクのようなオムレツの柔らかさの秘密は、ホイップクリーム。ナイフを軽く当てるだけで中身がとろりと流れ出て、皿いっぱいに広がっていく。11時からのランチセットはドリンクが付いて1300円~。さらにプラス200円でフロートドリンク付きセットにできる。
“飲める”と話題のオムライス『little pool coffee』(表参道)
一番人気は「とろとろ」。バーミキュラライスポットで炊くことで米本来の旨味が引き出されたライスが、とろとろ卵、甘みの強いケチャップと調和し、飲み物ののように喉を滑り落ちる。一方、卵で包んだ「ふわふわ」は、ライスと卵のバランスが絶妙。トリュフオイルand チーズを筆頭に、カレー・サルサソースなどを使ったアレンジメニューも人気。『little pool coffee』ではランチボックス、姉妹店『buhibuhi』ではお皿で提供する。
アレンジオムライスの可能性に魅せられる『夜もすがら骨董店』(鶴川)
チーズ入りドライカレーを卵で包み、スパイシーなカレーソースをかけたカレーのオムライスと、エビピラフを同様に包み、濃厚ホワイトソースをかけたピラフのオムライス935円が人気。「オムライスはやっぱり包みたい」と店主。ライスとオムレツが分かれた流行りの形ではなく、ふわとろながらも“包む”ことにこだわる。食材ロス削減のため、ほかメニューで余った材料を掛け合わせたまかないとして考案されたが、今や多くの常連に愛される。
【トースト】個性的な食材と食パンが織りなす幸福感
新鮮な野菜、卵ペースト、あんこ、シチュー……。芳醇な香りの食パンとの共演を想像するだけでもお腹が鳴りそうだ。コーヒーと一緒に頬張りたい。
四十年愛される、偶然の産物『デン』(鶯谷)
一斤の食パンをくり抜き、中に熱々のグラタンを入れた元祖グラパン。先代がまかないにグラタンを作った際、耐熱皿が店になかったため、代わりに食パンを使用したのが始まり。40年経った今では店の名物だ。「自分で食べたいと思ったから」と2代目・根元たかのりさんが考案したデミグラパン980円も好評。牛すじシチュー入りのとろとろ食感がたまらない。「考えないこともない」という次作に期待が募る。
トーストと焙煎の香りが満ちる『カフェ ビィオット』(神田)
ネルドリップで淹れたコーヒーが評判のお店だが、お目当てはドリンクとセットでのみ注文可能なミックストースト450円。毎朝仕入れている新鮮なレタスやトマトをたっぷりサンドしている。付け合わせは具沢山のポテトサラダと酸味を抑えた甘めの味付けのピクルス。トースト・付け合わせともに野菜本来の歯応えと旨味を生かした味付けだ。テイクアウトを行っていないのも、鮮度を重視しているからこそ。
やみつきになるアンプレス『珈琲ショパン』(神田)
淡路町にこぢんまりと佇む、約90年の歴史を持つ老舗喫茶。チーフの佐々木信博さんの落ち着いた物腰とは対照的に、ひっきりなしに注文が入るのは、アンプレス550円だ。ひと口齧ると、パン両面に3回ずつ重ね塗りされたバターの塩味と、熱で溶けたあんこの甘みが口いっぱいに広がる。特注の角食パンは通常よりひと回り小さく、この物足りなさもやみつきになる要因か。まだ食べ終わらぬうちから再訪を決意する。
厚切りトーストに素朴な味わいの卵を『珈琲家族』(恵比寿)
この店のオープンサンドは、昭和50年創業時から変わらないレシピ。厚切りトーストにたっぷりのった卵ペーストは、粗めに潰された卵とマヨネーズを和えたものに塩胡椒をほんのり利かせた素朴な味わい。メニューには“ミニサラダ付き”のみの記載だが、お菓子やミニサンドイッチも添えられている。「あったらうれしいかなと思って」とほほえむ店主の人柄も、この店が長く愛される理由のひとつに違いない。
構成=都恋堂