40数年の歴史がある老舗喫茶

山小屋風の外観。2階の窓の上にある赤いテントのひさしがかわいい。
山小屋風の外観。2階の窓の上にある赤いテントのひさしがかわいい。

扉を開けると、太い木の柱や梁、ステンドグラスのランプシェードが目に飛び込んでくる。開業以来変わっていないというインテリアは、「純喫茶」と呼ぶにふさわしいレトロな雰囲気がある。40数年の歴史があるが、清掃などが行き届いており、内装のメンテナンスも行っているので古びた感じはなく、ママさんが生けるという花が高級感さえ与えている。

店内では花やランプが効果的に使われている。
店内では花やランプが効果的に使われている。

店の看板メニューになっている「昔ながらのナポリタン」

昔ながらのナポリタン。単品730円、セット900円。シュガーポットで供される粉チーズをたっぷりかけて味わおう。
昔ながらのナポリタン。単品730円、セット900円。シュガーポットで供される粉チーズをたっぷりかけて味わおう。

メニューを開いて驚かされるのは、フードメニューの多いこと。スパゲティー12種類、ピザ5種類、ピラフ3種類、ドリア5種類、トースト6種類、ホットケーキ6種類、サンドイッチ5種類、さらにケーキなどもあり、そのどれもがドリンクとのセットにできる。

「開業当時は喫茶店ブームだったので、他店ではやっていないことをやろうと食べ物を重視したのです。それに加え、お客様の要望に応えていたら、こんなに多くなってしまいました」と店主が話す。

そんな多彩なメニューの中でも一番の人気を誇るのが「昔ながらのナポリタン」。イタリア・バリラ社製のデュラム・セモリナ粉100%使用の1.7mmの中太パスタは、もちもちとした食感で、食べごたえがある。ともに炒める具は、あえて食感を残したゴロゴロとした豚挽肉とマッシュルーム、ピーマン、タマネギなどの野菜。完熟トマトのみで作った濃厚なケチャップで和えたその味は、まさに喫茶店で食べる昔ながらのナポリタンだ。

ホットもアイスも、コーヒーは豆や淹れ方にこだわる

純喫茶というと薄暗いイメージがあるが、通りに面して大きな窓があるので店内は明るい。この店ではピンク電話も現役。
純喫茶というと薄暗いイメージがあるが、通りに面して大きな窓があるので店内は明るい。この店ではピンク電話も現役。

コーヒーは味と香りを失わないように、こまめに豆を挽き、注文を受けてから1杯ずつサイフォンで淹れる。オリジナルブレンド400円は、ブラジル25%、ガテマラ20%、コロンビア20%、モカ15%、ホンジュラス20%をブレンド。メニューにブレンドの割合を表示しているのは、自信の表れだろう。

アイスコーヒー420円~の作り方も独自のもの。最も焙煎が強いイタリアンローストしたブラジル主体の豆をネルドリップで淹れ、急冷するので、ほろ苦さが逃げず濃厚な味が特徴だ。1年中味わえるというのも、人気の高さを裏付ける。

木の柱や梁がインテリアのアクセントになっている。漆喰壁も何度か塗り替えているのだという。
木の柱や梁がインテリアのアクセントになっている。漆喰壁も何度か塗り替えているのだという。

客席を見渡すと、商店街にある店ということもあって年配の常連さんが多い。「親子3代にわたって来てくれるお客様もいます」と店主が話す。

地域に根ざした、地元の人に愛される空間なのだ。

取材・文・撮影=塙 広明