切り抜いた紙を当てるだけの平面タイプ
5月下旬に緊急事態宣言が解除されてからも、啓発の意図か収束への願望か、マスク姿になったままの像は街のあちらこちらに見られる。こうしたマスク像たちの傾向を見てみたいと思う。
まず、像が着けているマスクの種類である。平面の像の場合、たとえばスタンド全体に絵が施されている狛江のガソリンスタンドでは、切り抜いた紙を当ててマスクに見立てていたが、立体像の場合はどうだろうか。
人間用マスクを流用しているタイプ
立体像の大きさが人間とほぼ変わらない場合、普通に使われている不織布マスクが流用されることが多い。これは手軽に装着できるので各地の銅像に着けられている。
しかし問題は、公共の銅像に無断でマスクが着けられてしまうケースがあることだ。
渋谷のハチ公像にも一時期マスクが着けられていたのだが、こちらも無断装着だったようで、渋谷区の観光協会が困惑していることが報じられた(「朝日新聞」2020年5月1日)。しかも無断装着の場合、もしかすると使用済みのマスクが着けられているのかも知れず、そうなると衛生的にも問題がある。
私が調布の公園で見かけたぬらりひょんも、人間用マスクを着けていたが、数日後には外されていた。こちらももしかすると公式のマスク姿ではなかったのかも知れない。
その像専用のファッション性あふれるタイプ
一方、その像専用のマスクが作られる場合もある。不二家の店頭にいるペコちゃん人形は、ミルキー柄のマスクを装着している。三越のシンボルでもある入り口のライオン像も、三越マークの入ったマスク姿だ。こちらは企業アピールにもなると同時にファッション性も兼ね備えており、同じ柄のマスクが発売されたらぜひ欲しいと思わせてくれる。
動物にマスクをつける際の涙ぐましい工夫の数々
ところで、マスクをつけられる像は人間とは限らない。多いのはやはり動物の像である。野方の食堂の店先にいたブタもいち早くマスク姿になっていたし、清瀬駅近くにいるプレーリードッグ像も立派な防塵マスクを装着していた。
しかしここで一つ問題が出てくる。
人間の像であればマスクを耳に引っかければ済むのだが、たとえばドラえもんのように、引っかける耳を持たない像の場合はどうするのだろうか。
上記の三越ライオンの場合、背面でヒモを結ぶ形で対応していた。マスク像にはさまざまな工夫が凝らされているのである。
もはや生物ではないタイプ
こうしてマスク姿になっている像を探していたある日、友人から衝撃的な画像が送られてきた。代々木上原のスナック入り口に立っていたというそれは、マイクであった。マイクが手作りのマスクをしている。もはや生物でもない。
各地のマスク像が早く見られなくなるに越したことはないのだが、しかし今だけしか見ることができないこうした姿を見かけると、人々のユーモアと生き抜く強さを感じて少しホッとするこの頃である。
絵・取材・文=オギリマサホ