なぜ金髪と力士だったのか?

灯り好きの理由としては、私の生まれ故郷が東京・新宿だからというのもあるだろうか。家は繁華街から離れた住宅街にあったとは言え、幼い頃から「真っ暗な夜」を体験したことはなかったように思う。周囲は常に、店の灯りやネオン看板に照らされていた。
特に幼少時に気に入っていたのは、山手通り沿いのビル屋上に設置されていたコカ・コーラのネオン看板である。ただ点灯するだけではなく、ストライプが画面を移動したり、文字が点滅したりするもので、ずっと見ていても飽きることがなかった。また、JR高田馬場駅のホームから見える質店の看板も、気になるネオン看板の1つであった。扇形のネオンの前に、裸の金髪女性と力士の人形が中腰で向かい合っている。なぜ金髪女性と力士なのか。なぜ裸なのか。謎は解けないまま、いつしかネオン看板は人形ごと撤去されてしまった。

気がつけばネオンは衰退していた

今改めて、夜の街を見渡してみる。「ネオン」は夜の街の代名詞ともなっているが、現在の繁華街に「ネオン看板」は意外と少ない。ネオン看板のように見えても、実際は低電圧で長期的なコストを抑えられるLEDネオンだったりして、ネオン管を用いた看板は減少の一途をたどっているように思う。JR神田駅のホームから見えていた日光観光協会の「NIKKO is NIPPON」という渋いネオンサインも、近頃撤去されてしまった。

神田駅の「NIKKO is NIPPON」看板。 夜に撮っておけばよかったと後悔している(2014年撮影・神田)
撤去されてしまったネオン看板(2019年撮影・神田)

渋谷駅近くの「渋谷中央街」入り口ゲート看板も、周辺の再開発に合わせてスタイリッシュなモノクロ看板に変更された。一本隣の「ウェーヴ通り」のネオンゲートがかろうじて残っているのを見ると、わけもなくホッとしてしまうこの頃である。

というわけで、電光掲示板やデジタルサイネージに彩られる令和時代の繁華街で、ネオンサインに出くわすと、心の中でつい声援を送りたくなってしまう。そんな街で出会ったネオンサインの一部を紹介したい。

現在のオシャレな渋谷中央街ゲート(2020年撮影・渋谷)
いまだネオンが残るウェーヴ通り(2020年撮影・渋谷)

まず基本は単色で文字を書いたもの

一番シンプルなのは、単色で店名が書かれたネオンサインだろうか。いかにも「ネオンサイン」という感じのたたずまいである。

味のある店名ネオン(2020年撮影・大塚)
店名ネオンは筆記体がよく似合う(2020年撮影・錦糸町)
熱海銀座のゲートネオン(2015年撮影・熱海)

ここに色とりどりのネオンが用いられると、また趣は異なってくる。

カラフルな文字ネオン(2020年撮影・大塚)

文字が太く強調されたネオンたち

文字が太く強調されたネオンサインもある。新宿・歌舞伎町でも、もはやネオン看板は少数派となっているが、その中に2軒あるバッティングセンターはいずれもネオンサインの店名が光っている。

歌舞伎町のオスロ―バッティングセンター(2020年撮影・新宿)
歌舞伎町の新宿バッティングセンター(2020年撮影・新宿)

「ソープランド」は昭和な雰囲気

JR中央線の車窓から見える吉祥寺のソープランド看板も、夜になると赤字で力強く「ソープランド」と照らし出される。いずれにしても昭和の雰囲気が醸し出されている。

中央線から見える吉祥寺のソープランド看板(2020年撮影・吉祥寺)
電車から見えない方の電気はついていない。しかしなぜ「ラ」と「ン」で行を分けたのだろう(2020年撮影・吉祥寺)

輝く唇とだるま

ネオン管で描かれるのは文字ばかりではない。自由が丘の「くちビル」では、夜になるとその名の通りの唇型ネオンサインが輝く。高田馬場の居酒屋「酒の蔵だるま」のだるま型ネオンもかわいらしい。

 

ダジャレとして完成されている「くちビル」(2017年撮影・自由が丘)
一筆書き風のだるまがかわいい(2020年撮影・高田馬場)

多色遣いのネオンは絵画的

多色遣いのネオンは絵画的でもある。大塚のパチンコ店「ひょうたん島」のネオン看板は、都内で5本の指に入る「私の好きなネオン看板」である。

私が最も気に入っているネオン看板(2020年撮影・大塚)
点滅するタイプのカラフルネオン(2020年撮影・新宿)
ビリヤードの球が電気切れしてしまっているのがかわいい(2020年撮影・高田馬場)
多色遣い看板(2020年撮影・高田馬場)

奥深き「文字抜け」の世界

「切れたネオン管」と言えば、「パチンコ」の「パ」の字だけが消えてしまう現象もよく知られているが、私が出会った看板では「ン」だけが消えていた。「パチコ」。何となくとぼけた味わいである。

ストライプが移動するタイプの看板(2020年撮影・高田馬場)
「パチコ」(2020年撮影・高田馬場)

前述のバッティングセンターでも「宿」の字だけが消えており、「新 バッティングセンター」と何か別の意味合いが生じていた。(写真21)

「新バッティングセンター」(2020年撮影・新宿)

昨今のコロナ禍において、「夜の街」は何かと特別視され、厳しい視線が向けられている。もちろん感染予防に全力で努めなければならないだろうが、それはどんな人であっても同じことである。今後夜の街からネオンサインが消えてしまうことのないよう、祈らずにはいられない。

絵・取材・文=オギリマサホ