ビュッフェスタイルで10種以上のミャンマー料理が味わえる!
入店すると、ミャンマー料理のスパイスの香りに食欲をそそられる。奥のカウンターには複数の料理が並べられ、その数はスープ、デザートなどを含め10種類以上もある。
ランチタイムは入店して自分の席を決めたら、自由に取って食べていいというスタイル。
ミャンマー料理でも、おかずは白米といっしょに食べる習慣。お米は日本のものとタイのものを半分ずつ混ぜて、日本人もミャンマー人にも食べやすくアレンジしているそうだ。
ミャンマーで代表的な「チェッターヒェン」「モヒンガー」を味わう
メインである、ミャンマー料理で代表的なチェッターヒェンとモヒンガーをまずはいただいてみよう。
チェッターヒェンとは、チキンのおかずという意味で、チキンとジャガイモをカレー風味に煮込んだもの。玉ねぎ、にんにく、しょうがの3つを入れて煮込んで香味を出している。じっくりと火が通され、スパイシーだがそんなに辛くない。鶏肉はやわらかく、ごろごろと大きく煮られたじゃがいもは、ほんのりと甘さが感じられ、ほっこりとするおいしさだ。
「モヒンガーとは、魚介スープで食べるそうめんのことです」とオーナーのチョウチョウソーさんが教えてくれた。ミャンマーでは朝昼晩いつでも食べる身近な軽食で、日本でいうところの立ち食いそばのような存在とのこと。
やわらかく茹でられたそうめんを皿に盛り付けたあと、あたたかい魚介スープをかけ、お好みでナンプラーや唐辛子、パクチーなどをのせる。出汁はサバなどの白身魚から取り、レモングラスで風味付けられ、しっかりと濃いめのお味。
上にのったまるい形の野菜は、バナナの木の柔らかい部分を煮たもので、繊維感が強いが味が染みていてとても食べ応えがある。
他にも選べる料理の数々は、煮物が多いけれどそれぞれ味が違うため、キャラが立っていて楽しい。食べたいものをお皿にのせて、いろいろなミャンマー料理を味わってみよう。
チョウチョウソーさんがランチビュッフェを始めたきっかけは、「自分が母国にいるときに食べていたものを、日本の人にも食べさせたい」という思いから。その中でいろいろな種類の料理があったほうがバランスよく食べてもらえるため、ビュッフェという形にいたった。
そんなチョウチョウソーさんが日本に来たのは1991年のことだった。
「ミャンマー料理を日本人に紹介したい」
チョウチョウソーさんが日本に来たのは政治的な理由だった。ミャンマーでの政治活動により政府に迫害され、1991年、日本に亡命。その後、難民認定されて定住したのだという。
そして建築現場や、イタリア料理店、ラジオの国際放送のアナウンサーなど、さまざまな仕事を経験したのち、2002年に『Ruby』を開店。「ミャンマー料理を日本人たちに紹介したい。そしてミャンマーの人たちも母国で食べたものを日本で食べられたら一安心するかな」との思いで始めた。今やお店は20年を超え、チョウチョウソーさんは人生の半分以上を日本で過ごしたことになるそうだ。
「大変でした。でも人とのふれあいは好きだし、人と出会って自分が学ぶこともあるため店を続けています」とチョウチョウソーさんは話す。
波乱万丈な生活の中で、ミャンマーと日本をつなげる店を続けるチョウチョウソーさん。周辺で働いているサラリーマンも多く来店し、また取材時も留学生らしきお客さんがごはんを食べに来ていた。『Ruby』の料理は、これからも母国が恋しくなった人の身も心もあたため続けるだろう。
取材・文・撮影=千乃あいみ