1634年創業の和菓子店『両口屋是清』
寛永11年(1634)に愛知県名古屋に創業した和菓子店『両口屋是清』。貞享3年(1686)に第二代尾張藩主、徳川光友公から賜ったという『御菓子所 両口屋是清』の直筆の看板文字は、現在も同店のロゴに使われる。
伝統を大切にする一方で、平成18年(2006)には表参道ヒルズにカフェ「Rstyle by 両口屋是清」(閉店)を、平成28年(2016)には新宿NEWoManに新業態『和菓子 結』を出店するなどの新しい試みが注目を集めてきた。
2021年7月には和菓子のおいしさ、楽しさを伝える新たな手法として、オンライン和菓子教室をスタート。一足先に体験取材した12月の教室の申し込みから和菓子の完成までをレポート!
「単月コース」と「3か月コース」から選べるオンライン和菓子教室
『両口屋是清』のオンライン和菓子教室は、「春コース(3・4・5月)」、「夏コース(6・7・8月)」、「秋コース(9・10・11月)」、「冬コース(12・1・2月)」の全4コース。各回、月替わりの生菓子を2種類×3個作る。
参加に際しては、単発の「単月コース」(1回4,400円)と、月1回×3ヶ月の「3か月コース」(全3回11,000円)の2種類から選べる。3か月コースはかなりお得感がある。
12月のオンライン和菓子教室を体験!
今回体験取材したのは、「2021年冬コース」の12月の回。実際のオンライン和菓子教室では「サンタクロース」と「侘助(わびすけ)」の2種類の生菓子を教えてくれるそうだが、今回は1種類、「サンタクロース」作りを体験した。
真っ赤な帽子の「サンタクロース」は、関西で主流の、餡に小麦粉やもち粉などを加えて蒸してもみこなす「こなし製」。「煉切(ねりきり)」と似ているけれど、より弾力があり、あっさりとした甘さが特徴だ。
ちなみに茶人に好まれる椿をかたどった「侘助」は、関西風の桜餅でおなじみの道明寺粉を使うそうだ。
事前に届く『両口屋是清』の材料を使う。味は保証付き!
オンライン和菓子教室は、『両口屋是清』の公式オンラインショップから申し込む。和菓子を購入するのと同じように注文・支払いをすれば完了だ。
申し込みが無事に完了すると、事前に材料が送られてくる。同店の生菓子に使うものと同じ材料なので味は保証付き。既に半分は成功したようなものだ。
材料に加え、作業台に敷いたり餡にかぶせて乾燥を防いだりするポリシートとレシピが同梱されている。
道具は申込時に指定されたものを自分で用意する。特別な道具を使うことはなく、多くの家庭にありそうなもの、もしくは代用できるものが中心だ。
オンライン和菓子教室当日の準備。材料と道具。
オンライン和菓子教室当日は、事前に届いた材料と、指定された道具を用意しよう。「サンタクロース」の材料は、「こし餡」、赤い「こなし生地」、「白あん」。
同梱のポリシートを敷けば作業台が汚れず後片付けが手軽だ。
道具は事前に指定されたものを自分で用意する。「サンタクロース」作りに使うのは、「はかり」、「先の細い箸」、「丸みのある箸」、「水10ml」、「濡れ布巾」、「茶こし(または「ふるい」)」。はかりはなくても作れるそうだ。
「サンタクロース」の作り方を見て学ぶ。
今回和菓子作りを教えてくれたのは、和菓子職人の山口聡士さん。2004年に入社し、焼き菓子の製造を経て、2008年からは上生菓子作りを担当。百貨店やお茶会での実演も務め、名古屋市の東山店での和菓子教室講師も担当する。
講師や受講者の簡単な自己紹介の後に、生菓子の説明が続く。材料と道具の最終確認が済んだら早速実演をスタート。
本来は教室に参加した人だけが学べる内容を少しだけ公開。おおまかな手順は
1)餡を3等分して丸める。赤いこなし生地も練ってから3等分して丸める。はかりがなければ目分量で分ける。
2)こなし生地で餡を包み、帽子型に整えて、縁にぐるりと箸で溝を付ける。
3)白あんを茶こしで漉して、帽子の綿に見立てて、2)の溝につける。
難関の包餡作業も細かい作業も先生の手元をしっかり見られるうえ、適宜質問もできるので心配ない。
和菓子作りにチャレンジ!
先生の手元をじっくり見て作り方を学んだ後は、受講者も和菓子作りをスタート。画面に作業中の自分の手元がうつるようにセッティングすれば、講師に見てもらいながら和菓子作りを進められる。
まずは、こし餡と赤いこなし生地を3等分(今回は体験時間の関係で、そのうちの2個だけを仕上げた。)して丸める。はかりがあれば重さを量る。なければ目分量で3等分すればいいそうだ。
続いて赤いこなし生地で餡を包む。講師の手の動きをじっくり観察してからのぞもう。
苦戦するようなら講師に手元を見てもらい、アドバイスをもらいながら進めよう。
帽子形に整えたら丸い白あんの飾りを付けて、箸で縁に溝を付ける。完成まであと少し。
白あんを「茶こし」や「ふるい」でこす。これを綿に見立てて溝に付ける。
取材を忘れて黙々と作業を進める。綿に見立てた白あんをぐるりと付けたら完成。それらしくできあがり感無量だ。
同じ生菓子を3個ずつ作る理由は、リアルタイムで上達を実感してもらうためだという。私自身、1個目は要領がつかめず四苦八苦したけれど、2個目はなんとかそれらしくできあがり、取材後に一人で取り組んだ3個目は、時間をかけたこともあり1個目2個目よりうまく包めた。ちなみに写真奥が1個目、手前が2個目、3個目は配分を見誤り、綿が足りなくなってしまったので完成していない。
完成してすぐに、いそいそとお茶を淹れて、しばし「サンタクロース」を愛でてから試食をした。もっちりとした弾力のあるこなし生地も奥行きのあるこし餡の風味もたまらない。材料はすべて『両口屋是清』製なのでおいしいに決まっているけれど、自分で成型した和菓子は特別なのだ。
もう1つの12月の和菓子「侘助」は、道明寺粉を水に浸して加熱するところから作る。生地から自分でつくるので達成感はひとしおだろう。
初心者にも優しい『両口屋是清』オンライン和菓子教室
オンライン和菓子教室を「負担なく楽しんでほしい」と材料を事前に送り、できるだけどこの家庭にもあるような道具を使う。
「小さな子どもがいるのでオンライン教室の方が参加しやすい」、「遠方に住んでいるのでオンライン教室だからこそ参加できた」など、好評を博しているそうで、今後も名古屋市東山店でのリアル和菓子教室と並行して、オンライン和菓子教室も継続していくとのこと。
初心者にも優しい教室なので気軽に参加してみてはいかが。
価格:単月コース4400円(材料・送料込)/3か月コース1万1000円(材料・送料込)
内容:各回生菓子2種類×3個の作成
詳細・申し込み:両口屋是清公式オンライン「オンライン和菓子教室」
文・撮影=原亜樹子(菓子文化研究家)