驚くような目新しさではなく、小さな新しさや気持ちよさをプラスする
大きな窓からやさしい日射しが入り、店内がふわっと明るかった。それぞれ違う形の椅子が、シンプルな中の程よいアクセントになっている。そう、まさに「ほんのちょっと」がこの店のキーワードだ。
それは店名につく「+」にも表れていて、食堂にカフェを「プラス」、新しさを少しだけ「プラス」、心地よさを少しだけ「プラス」、「木漏れ日が小さく輝く感じ」をピクトグラムで表現……。などなど、たくさんの意味を持つ。
「奇をてらうのではなく、食べ慣れた食材を工夫して、少しだけ新しい、そんなおいしさに出合ってほしい」と店長の中林さんは話す。
管理栄養士のシェフが腕を振るう「おいしく栄養を摂る」料理
メニューを考えているのは、管理栄養士の資格を持つシェフで妻の敏子さん。どうしても不足しがちな野菜を補うために、ドレッシングに野菜をたっぷり入れるなど「野菜で野菜をおいしく食べる」ための工夫をしているという。
オープン時から提供している人参ドレッシングは、たっぷり入ったニンジンのすりおろしでもったり重め。素材自体の甘みにぴりりとした生姜の風味がさわやかで、サラダをいっぱい食べたくなる味。店で食べてファンになり、自宅用に購入する人も多い。
細やかな気遣いを感じる「一汁五菜」の週替り定食
店で一番人気なのが、一汁三菜に二菜をプラスした一汁五菜のこもれびプラスプレート。幅広い年齢層においしく食べてもらうため、奇をてらった食材は使わず、強くスパイスをきかせることもしない。バランスを考えて、馴染みのある材料を丁寧に調理するというが、出された料理には、小さな驚きや意外性があった。
この日のメインはミートローフと人参のかき揚げ。ミートローフには、豚肉、玉ねぎ、ブロッコリー、ニンジンのみじん切りが入っている。野菜の量は豚肉の半分以上というと淡白な味を想像するかもしれないが、きちんと味を整えた野菜と味噌の味付けで思った以上にコクがあり、肉の食べごたえもある。また、上にかけられたラタトゥイユソースにも野菜がたっぷりで、トマトの酸味と玉ねぎの甘味がミートローフとマッチしていた。
ちょっとおもしろかったのが、人参と白胡麻のかき揚げだ。千切りにしたニンジンとゴマをぎゅっと握って形を作り、からりと油で揚げる。ニンジンのざくざくした食感とゴマの風味、仕上げにかけたわずかな塩気がニンジンの甘さを引き出していた。
ばらばらにならない最低限の量の薄力粉の衣で揚げるため、揚げ物なのに軽さがあり、お腹への負担も少ない。
全体として、彩りがとてもきれいなこと、そしてキャベツやキヌア、なめこなど、たくさんの品目による食感の変化で、食べることがとても楽しかった。
日常に、からだにいいおいしいものをプラスする。
プラスプレートは週替りなので、毎週楽しみにしてくれる常連も多いという。メインが肉のときは、翌週は魚、と客を飽きさせないように、栄養のバランスの取れたメニューを考えるという。
ちょっとだけ新しく、意外性のある驚きを味付けに、細やかな気遣いのある料理を楽しめる。心と体の両方が喜ぶ健康志向であたたかなカフェだ。
取材・⽂・撮影=ミヤウチマサコ