さて、今回歩いたのは浅草3丁目。場所的には浅草寺の裏側、といいますか、奥浅草とも呼ばれるエリア。
利用者の多い東京メトロ銀座線や都営浅草線の駅からは徒歩15分弱なので、キャリーケースを引いて歩くような観光客も少なく、どちらかというとローカルで隣同士の距離が近いような魅力が。積み重ねてきた月日も味わいに染みていそうな老舗からつい最近産声を上げたような店舗、その間に点在する戸建てやマンションなどいい塩梅に入り混じっているのもチャームポイントのひとつなのでしょう。
更に、路上園芸も充実している素晴らしい街でした。

蔦にがんじがらめにされつつある自転車。

奥の駐輪スペースに停められている自転車より明らかに開放的な場所にあるにもかかわらず、こちらのほうが不自由に見えてしまう不思議。ルールを守ってこその自由、とでもいいましょうか。
そして「路上園芸のアロエは治癒能力よりも殺傷能力が高めに見える」のも私の中のお約束。絶対強い。



卵の殻と植木のコンビもお約束!私がひかれたのはここ、枝に殻が引っかかってるんですよ。どういうことかというと、明らかに上からぽいっと投げ入れたということ。
立派な木が育つためには、ある程度の荒々しさと適当な感じも必要というわけですね。人間もまた然り。

ふとある一角に鮮やかなスポットを発見。微かに西日を浴びる花達は、日光を吸収しているようで顔を背けているような気がしていじらしい。日焼けしたくないものね、わかります。
実はこの時、プラチナショートヘアのマダムがお宅から出ていらして、枯れた葉っぱを取り除いたり向きを整えたりしていたんです。ほんの3分程だったかと思うのですが、義務感でもやってあげてる感でもなく、日常の一部として彼女の中に組み込まれているような気がして、話しかけたりシャッターを切ることができませんでした。

さて、この日向かったのは浅草3丁目にお店を構える和菓子屋「徳太樓」さん。。創業1903年の地域の重鎮。
都内百貨店でも曜日限定商品として販売されるほど美味しいと名高いきんつばですが、ここは私の大好きな「利休饅頭」を。

利休饅頭のお手本のような小麦肌はきらりと艶やか。人差し指と親指でお饅頭の天と地を挟みそっと圧力をかけると、微かに跳ね返してくるような弾力も指先に伝わってきます。
まずはそのままひと口。ほろりと心地よくほどける皮、うんうん。
お次は半分に割って。よく蒸かされた小麦粉の生地特有のスンとした香り、そして小さな小さな空気の部屋。薄皮のしっとり系だけではなく、ふかふかとした食感もお饅頭の醍醐味。
黒糖の香りの下から昇ってくるようなつぶし餡もたっぷり。つぶ餡でもこし餡でもなく、つぶし餡という適度な皮の旨味や食感が、こちらの利休饅頭にはぴったり。



そこに住まう人たちの日常の中に路上園芸は生まれるものであり、つまるところ生活の一部。
放置された自転車や卵の殻、枯葉の除去など、誰かの日常の一場面に触れるような散歩も悪くないなと思いながら、素朴な味わいの利休饅頭を胃に収めたのでした。