群馬県でカツ丼といえばソースカツ丼。ご飯の上にソース(タレ)にくぐらせたカツがのるだけのシンプルなものが主流だ。県全域で食べられるが、前橋市や桐生市ではご当地グルメとして愛されている。
信州のソースカツ丼はキャベツをのせるが、上州ではカツとご飯だけの店が多い。汁を使わず、卵でとじず、ソースもさらっとしたタイプなので、衣はカリッとしている。カツは3枚というのがお決まりだ。
群馬県でカツ丼がよく食べられている背景には、豚肉の生産が盛んだということも無縁ではない。県内の養豚頭数は約63万頭で全国第4位(2019年2月1日現在)を誇る。
養豚農家は前橋市の赤城山麓に多く、前橋市は「TONTONのまち」を標榜し、豚肉料理で街おこしをしようと、豚肉料理ナンバーワンを決めるコンテスト「T-1グランプリ」を開催している。
このコンテストで初代グランプリに輝いたのが『そば処大村総社』のソースかつ丼。『かつどんなかや』は、ソース・しょうゆ・塩の3つの味のカツ丼を提供する。鳥めしで有名な『登利平本店』には、自慢の鶏肉を使ったソースかつ重があり、店ごとに異なる味を楽しめる。
登利平本店
鳥料理店では鳥ムネ肉で勝負!
登利平のルーツは東京・北千住の鶏肉専門店。暖簾(のれん)分けにより1953年に先代が前橋で開業。メインは鳥めしだが、根強いファンを持つのがソースかつ重だ。ビタミン・ミネラル豊富な餌で飼育した肉質の柔らかいひな鳥のムネ肉を厚めにカットして使用。揚げたてを辛口のブレンドソースにくぐらせ、熱々ご飯にトッピング。カツとご飯の間に敷かれたきざみ海苔が名脇役。
『登利平本店』店舗詳細
かつどん なかや
3つの味が楽しめるかつどん
かつ丼は、ソース、しょうゆ、塩の3種類。それぞれ豚ロース肉を3枚に切って揚げたカツがのるが、ソースとしょうゆは2枚+1枚の合い盛りにもできる。梅風味のご飯に塩を振りかけて味わう塩かつどんは、最後の1枚にはだし汁をかけてかつ茶漬けとしても味わうのがこの店のスタイル。豚肉は群馬県産を使用、ソースもしょうゆも自家製ブレンド。味付けご飯に豚肉を巻いて揚げたかつむすびは家族で考えたアイデア料理。
『かつどん なかや』店舗詳細
そば処 大村 総社
そばつゆベースの秘伝ダレ
「おそば屋さんのソースかつ丼」は、群馬県産豚ヒレ肉のカツを、そばつゆをベースにした秘伝のタレにくぐらせるのが味の決め手。ご飯は、新潟米「コシイブキ」を川場村の名水で炊く。「大正9年(1920)創業の本店から受け継いだタレを最大限に生かすため、豚肉、パン粉、揚げ油、米の種類など素材を厳選し、揚げ方や炊き方まで研究しました」と店長・柴崎清一さん。丼の中にこだわりが詰まっている。
『そば処 大村 総社』店舗詳細
取材・文=塙 広明(アド・グリーン)、阿部奈穂子 撮影=高野尚人、野本浩一郎
『散歩の達人』2020年9月号より