磯の風味がふわっと穏やかに香る『日本酒はなたれ』
出汁の色はくっきり濃い。でも、すすってみると、ふくよかな磯の風味が優しく口に広がる。佐島の漁港や市場から直送しているという大ぶりの地蛤はまぐりや秋さんま刀魚などの魚介類の味わいを、そっと引き立てる名脇役。おでん種としては珍しい無花果も、すんなり包み込む懐の深さもある。「日本酒に合うおでんを考えて作りました」と話す店主の村本昌彦さんが約50 種あるなかから選んでくれたのが、「丹沢山」の純米酒。これまた、優しい口当たりの酒で、出汁によくなじみスッと体に染みてくる。新しいけれど真っ当で、心が穏やかになるおでんだ。
『日本酒はなたれ』店舗詳細
パリッと軽い、黄金色の〆(シメ)餃子『えびすの安兵衛』
皮と餡が超軽く、〆でも3皿 あっという間。「厚さは普通の皮の半分。キャベツ多めの餡を包み置くと破れるから、注文後に包みます」と、店長の井戸啓人さんが土佐弁で言う。鉄のフライパンに並べて野菜スープで蒸し、油を注ぎ揚げ焼きに。華麗な職人技で作る1日2000個が、ビールと交互にお客の口へゴール。
『えびすの安兵衛』店舗詳細
「生ビールの味で店の評価は決まる」と追求『串いろいろとわっぱ飯 民家』
1本110円〜の串揚げにわっぱ飯。16時から飲める、気軽な居酒屋といった風情だが、店主・大和田政晴さんの生ビールへの情熱はすごい。「お客様の最初の一口は、料理ではなく乾杯の生ビール。おいしい生ビールは、そのまま店の評価にもつながる」。そう気づいたのは十数年前。メーカーの勉強会に参加し、生ビールの味を左右するのはサーバーの洗浄だと学んで徹底。後に、「パーフェクト黒ラベル」の1号店に任命された。客に「民家の泡はスイーツだ」と評されるほど甘くクリーミーな泡は、数分経っても減らない。店の一番人気は、独自の仕入れルートを確保し、鮮度抜群のレバーを使ったレバカツ。「時間が経ってもおいしさが失われないよう工夫しています。ビールの泡と一緒です」。
『串いろいろとわっぱ飯 民家』店舗詳細
熟成酒の価値を伝えて、日本酒の別天地へ『ミズノトリ(旧:GEM by moto)』
蔵元さんの横文字サイン、アンティークをちりばめた内装。バル風の活気ある店内奥に、-5℃の氷温熟成庫が鎮座する。この温度が、酵素の働きを冬眠させ、熟成を進ませるのだ。「ガス感やフレッシュさを残しながら味だけをのせて、きれいに熟成したお酒を飲んでいただきたくて」と語るのは、店主の千葉麻里絵さん。新宿の『日本酒スタンド酛』で日本酒の魅力を伝えるなか、「これは2年後に飲みたいな」とイメージするようになり、熟成酒への思いが芽生えたという。同じ熟成酒でも、冷酒やお燗、時にはロックで、料理に合わせた飲み方も提案する。飲み頃の酒が随時、口開いていくが、今宵はどんなお宝を飲めるのか? 気になるぞ。日本酒はその時々の仕入れ状況によって変わる。写真も来店時のもの。
『ミズノトリ』(旧:GEM by moto)店舗詳細
半地下の角打ちテラスで「泡」とパスタ『山本商店』
ワイン箱がスタンディングテーブルの立ち飲み席。缶ビール、缶チューハイ他一部以外は持ち込み料なし、すべて店頭販売価格で飲める。夕暮れ時の木漏れ日が半地下の階段からきらきら差し込んでくるのがすてき。乾杯のスパークリングワインを選んだら今夜のアテを店内で吟味。缶詰や生ハムはもちろん、ジェノベーゼにピザなど冷凍食品は調理&盛りつけしてくれる。カマンベールに蜂蜜がけなんてオシャレな一皿も。
『山本商店』店舗詳細
スムージーに込めた欧州の香り『らんまん食堂』
唐揚げの専門店。レモンは唐揚げに「搾る」のではなく、「飲み干す」をモットーに、独自のレモンサワーを考案。スペイン産レモンを濃縮した果肉入り果汁と、フランス産のレモンシロップをブレンドし、イタリア製マシンでスムージーに。それを、酎ハイやハイボールにフロートするスタイルだ。爽やかな香気が口いっぱいに広がり、唐揚げの脂気を洗い流すよう。常連客にはすでに浸透しており、今やビールよりも優勢なのだ。
『らんまん食堂』店舗詳細
構成=フラップネクスト 取材・文=川端美穂(きいろ舎)、さくらいよしえ、沼 由美子、松井一恵(teamまめ) 、山内聖子 撮影=井原淳一、小野広幸、オカダタカオ、金井塚 太郎、丸毛 透