日本酒はなたれ

磯の風味がふわっと穏やかに香る

無花果300円、九十九里の地蛤、肝醤油をつけた秋刀魚串、真鱈白子、豆腐、新レンコン、カボチャが入 った海おでん5種盛り1880円(1~ 2品はサービス)。魚介のおでんに合うのが「丹沢山」90㎖ 550円。お燗もぜひ。

出汁の色はくっきり濃い。でも、すすってみると、ふくよかな磯の風味が優しく口に広がる。佐島の漁港や市場から直送しているという大ぶりの地蛤や秋刀魚などの魚介類の味わいを、そっと引き立てる名脇役です。おでん種としては珍しい無花果も、すんなり包み込む懐の深さもある。「日本酒に合うおでんを考えて作りました」と話す店主の村本昌彦さんが約50種あるなかから選んでくれたのが、「丹沢山」の純米酒。これまた、優しい口当たりの酒で、出汁によくなじみスッと体に染みてくる。新しいけれど真っ当で、心が穏やかになるおでんだった。

2015年に同店をオープンさせた店主の村本昌彦さん。
蟹味噌や青海苔を混ぜてウニをのせた贅沢な海のポテサラ780円。
恵比寿の路地裏にひっそりと立つ。

『日本酒はなたれ』店舗詳細

住所:東京都渋谷区恵比寿1-26-12 フラット16 1F/営業時間:18:00~翌1:30LO/定休日:不定/アクセス:JR・地下鉄恵比寿駅から徒歩7分

おでんや den

素材をぐっと生かす上品な出汁

淡路島の蒸し玉ねぎ300円、長野のこんにゃく200円、高野豆腐300円、プチトマト200円、自家製がんもどき300円。素材の良さがシンプルに伝わってくるおでんには、「栗駒山」800円を。他にも日本酒は15種類揃う。

扉を開けた瞬間に、ぶわ~っとかつお出汁の匂いがしてきた。「僕が好きなのは香りがいい出汁なので、かつお節を800g も使います。でも、入れすぎるとくどくなるのでこの味にするまでにけっこう苦労したんですよ」と店主の佐藤真一さん。自家製のがんもどきや滑らかな高野豆腐、淡路島の玉ねぎなどのいい素材に寄り添った、ほどよく塩気が効いた出汁のおでんは、上品で繊細。豊かな甘みの「栗駒山」の旨さも引き出されて、相乗効果でおでんも酒も止まらなくなる。すりたてワサビの「梅わさ」で、もう一杯。出汁でさらに、もう一杯。

日本酒に合わせたい南高梅とすりたてワサビの「梅わさ」500円。
開店してから約30年。店に立ち続ける店主の佐藤真一さん。
出汁の香りをまとった蒸し玉ねぎ。

『おでんや den』店舗詳細

住所:東京都新宿区四谷1-8 B1/営業時間:18:00~23:30/定休日:土・日・祝/アクセス:JR中央線四ツ谷駅から徒歩3分

おでん丸忠

練り物の旨味が染み出ている

大根200円、しらたき100円、ちくわぶ100円、豆腐200円、中華揚げ200円、カレーボール150円、玉子150円。出汁たっぷりのおでんと「スダチハイ」400円。

いろんな旨味が重なった、丸い口当たりの出汁だった。すんなり言葉にできないほど複雑な味の秘密は、たくさんの練り物にある。『丸忠』は、もともと隣にある練り物屋のテイクアウト専門のおでん屋から派生した酒場。「石臼で練るできたての練り物の味がおでんに染み出ています」と店長の西村浩志さん。定番の大根やちくわぶのほか、ピリッと辛い中華揚げやカレーボールなどの変わり種も多く、ビールやスダチハイ、燗酒など幅広いお酒と合わせたくなる。立石を飲み歩いた後に、締めで燗酒とおでんをいただくのもおすすめ。

酸っぱい発酵ソーセージ400円には「日置桜」750円の燗酒を。
おでん種は50種類以上ある。
店長の西村浩志さんは大の燗酒党。

『おでん丸忠』店舗詳細

住所:東京都葛飾区立石1-19-2/営業時間:14:00~21:00 LO(日・祝は13:00~20:00 LO)/定休日:木・第3水/アクセス:京成押上線京成立石駅から徒歩1 分

日本橋お多幸本店

こっくり濃い出汁。おでん界の重鎮

がんも、はんぺん、たまご、だいこんのみはからい4品(1人前)1000円。出汁が濃いおでんと「㐂六」650円。焼酎は30種類以上。

お酒も進む。ごはんも進む。大正12年(1923)創業の『日本橋お多幸本店』のおでんは、これまで注ぎ足されてきた、甘みと旨味がギュッと凝縮されたこっくり濃い出汁が特徴で、酒飯によく合う。「注ぎ足しは手間もかかりますし塩梅が難しいので、毎日慎重にやりながらお多幸の味を守っています」と店長の坂野善弘さん。これからの季節は、ひやおろしの日本酒もいいけれど、濃いおでんをまろやかにする焼酎のロックやお湯割りもぴったりだと教えてくれた。素材にしっかり味が染み込んだ老舗のおでんは、素敵なおでん缶に入れておみやげにもどうぞ。

蟹味噌、塩辛、松前漬けの珍味三種盛と「初孫」1合770円。
人気のカウンター席。
焼酎アドバイザーの店長、坂野善弘さん。

『日本橋お多幸本店』店舗詳細

住所:東京都中央区日本橋2-2-3/営業時間:11:30~13:30LO・17:00~22:15LO/定休日:日/アクセス:地下鉄日本橋駅から徒歩1分

善知鳥

細やかな仕事がにじむ繊細な出汁

山伏茸300円、巻貝三種500円、大角天200円、根曲り竹200円、牡丹竹輪200円、鴨つくね300。大角天や牡丹竹輪などの練り物は青森から取り寄せている。

されどおでんと、改めて『善知鳥』で思う。「おでんはすぐに出せるからいい、なんて簡単に思っていたのにバチが当たったんです」と青森出身の店主の今悟さんは苦笑い。生姜味噌をつける青森おでんの特徴はそのままでも、出汁は高級な干し貝柱を使い、練り物はしっかり油抜きし、大根は3日、玉子は約5日間かけて炊き、煮頃じゃないものは出さないこだわりよう。これがまた、店主がつける燗酒に合いすぎて泣けるくらい旨い。

手作りの鱒筋子600 円には「喜久酔」800円の燗酒をどうぞ。
お燗名人としても知られる店主の今悟さん。

『善知鳥』店舗詳細

住所:東京都杉並区西荻北3-31-10 2F/営業時間:17:00~ 22:30(肴21:00LO、酒21:30LO)/定休日:日・祝/アクセス:JR中央線西荻窪駅から徒歩5分

green glass

そば前にいただきたいおでん

黒はんぺん、大根、ちくわ、こんにゃく、牛すじ、玉子の日替わりおまかせ盛り合わせ1500円~。「白隠正宗」900円のほか、静岡の地酒のみを約10種揃える。

2016年にオープンした『green grass』は、おいしいそばが味わえる店だが、静岡おでんもぜひ食べてほしい一品。静岡出身の店主、関根美徳さんは「地元の味と違うのは、そばつゆの出汁をおでんに入れているところです」と話す。色の決め手になる醤油はいいものを使い、無添加の練り物にワサビ農家が手作りしたこんにゃくなど、素材は妥協しない。味が優しく染みたおでんには白隠正宗の燗酒を合わせて、締めはそば、なんて最高ですよ。

そばの「もり」1000円の本日は福井産と栃木産。なお、そばを食べない人は入店お断りなのでご注意を。

『green glass』店舗詳細

住所:東京都新宿区上落合3-28-9/営業時間:12:00~14:00LO(火・水・木・土)・17:30~ 23:00(21:00以降の入店は要連絡)/定休日:日・祝・不定休/アクセス:西武新宿線・地下鉄大江戸線中井駅から徒歩5分

gindachi

北イタリアの風土を感じるおでん

豚スペアリブ、粗挽きソーセージ、小じゃがいも、キャベツ、ミディトマトのポーク&ベジタブル1200円。「ムゼオ・シラー」430円を合わせたい。

『gindachi』では、ボリートという北イタリアの煮込み料理を、親しみやすいおでんという呼び名に変えて提供している。失礼ながらポトフと似ていると思っていたら「それぞれ具材を煮て、後からトマトベースのスープと合わせて出しています」とスタッフの久田茂幸さんの話を聞き、これは間違いなくおでんだ、と納得。真っ赤なトマトの出汁で煮込まれたおでんは、旨味と酸味のバランスがよく、体が元気になる味わいだった。

きびきび働くスタッフの久田茂幸さん。
モッツァレラチーズとトマトのバジルソース和え580円と「コドーニュ・クラシコ・ロゼ」700円。

『gindachi』店舗詳細

住所:東京都中央区銀座2-7-7/営業時間:16:00~23:30(土・祝は~22:30)/定休日:日(祝の場合は翌)/アクセス:地下鉄銀座駅から徒歩3分

構成=株式会社エスティフ 取材・文=山内聖子 写真=井原淳一