那須与一伝承館
源平の合戦で名を馳(は)せた弓の名手は今も郷土の誉れ
道の駅『那須与一(なすのよいち)の郷』の一角にあり、『平家物語』に弓の名手として描かれる当地ゆかりの那須与一宗隆と那須家にまつわる資料を展示。館内の「扇の的劇場」では、屋島の合戦(1185年)における与一の活躍を、映像を交えながらからくり人形風ロボットが演じ、大人でも十分楽しめる出来ばえになっている。
ザゼンソウ群生地
那須野が原扇状地の伏流水が湧出する湿地帯
ザゼンソウはミズバショウに似たサトイモ科の多年草で、花のかたちが座禅を組んだ僧の姿に似ていることからその名が付いたとされる。地下水が湧き出る約1400㎡の湿地帯に群生し、例年2月から3月中旬にかけて開花。群生地をめぐる木道が設置されているので、踏み外さずに観賞しよう。
●見学無料。2月1日~3月中旬一般公開。栃木県大田原市北金丸1708
ハクチョウ飛来地
優美な姿の冬の使者が見る者の心を和ませる
遠くシベリアから数千㎞の旅を終えたハクチョウが、例年10月末から翌3月ごろにかけて越冬のため羽を休めているのが、市内北部の羽田(はんだ)沼と南部の琵琶池。本来、飛来数は羽田沼のほうが多いとされるが、ここ最近は周辺農家による給餌の影響などもあり、飛来数の減少が気になるところ。一方、琵琶池では個体数は少ないものの、ゆったりくつろぐハクチョウに出合える確率が高い。
●散策自由。
栃木県大田原市羽田785-1(羽田沼)
栃木県大田原市藤沢(琵琶池)
芭蕉の里 句碑めぐり
松尾芭蕉が「おくのほそ道」で長逗留した地を訪ねる
俳聖・松尾芭蕉が、元禄2年(1689)に弟子の曽良を伴い旅に出た「おくのほそ道」。約5カ月にわたる道中、芭蕉らは現在の市内黒羽(くろばね)地区に13泊14日もの長きにわたり逗留し、数多くの句を詠んでいる。大田原市観光協会では点在する芭蕉一行の句碑を紹介する地図入りパンフレットを配布しており、訪れた先々でスタンプを押しながら句碑めぐりを楽しめるようになっている。
●散策自由。栃木県大田原市黒羽田町ほか
☎0287-54-1110(大田原市観光協会)
黒羽芭蕉の館
芭蕉と曽良のブロンズ像が前庭で来館者を出迎える
芭蕉の広場に隣接して立つ入り母屋造りの施設で、「おくのほそ道」にまつわる松尾芭蕉の足跡を中心に、かつて黒羽の地を治めた大関家の資料などを展示。句碑めぐりと組み合わせて立ち寄るのに好都合な立地なので、周辺散策がてら足を運びたい。
大雄寺(だいおうじ)
室町時代の様式を伝える総茅葺き屋根造りが圧巻
黒羽藩主大関家の菩提寺として長く庇護(ひご)のもとにあった歴史をもつ曹洞宗の禅寺で、創建は応永11年(1404)。本堂をはじめ禅堂・庫裡(くり)・総門・廻廊・鐘楼堂など伽藍(がらん)はいずれも総茅葺(かやぶ)き屋根で、国の重要文化財に指定されている。解説付きの堂内拝観は30分程度。背筋がゾッとする幽霊の掛け軸も一見の価値がある。
高橋商店
防腐剤を使わず手づくりにこだわった黒羽名産
市内を南北に貫くように流れ下る清流・那珂川。黒羽地区中心部には川を挟むようにアユを扱う店が点在するが、最も活気があるのがこちら。鮎甘露煮は炭火焼きのアユを醤油・砂糖・みりん・酒で仕上げたもので、濃厚な味わいながらくどさがなく、見た目以上に食べやすい。
御亭山(こてやさん)
十分に防寒対策を施して、真冬ならではの眺望を
国土交通省関東地方整備局が選定した「関東の富士見百景」のひとつ。県内最北の選定地ゆえ、よほど好条件が整わないと富士山まで見通すのは難しい。三等三角点の置かれた標高512.9mの山頂には山座同定盤があり、360度の眺望をうたっているが、ひときわ大きく開けているのは南西側。那須野が原越しに沈む夕日が美しい。
●散策自由。栃木県大田原市北滝1820
岡繁
人気のさんたからあげが目指すのは激辛でなく旨辛
肉料理を中心とした気軽な町の食事処。とうがらし生産日本一の地の看板グルメ「さんたからあげ」は店ごとに個性を打ち出しているが、代表の岡野隼平さん曰く「辛いものが得意ではないので、ウチの店は激辛ではなく旨辛を目指しています」とのこと。その言葉どおり辛さは控えめで衣も薄く、若鶏のモモ肉ならではのジューシーな旨味が十分感じられる。
滝沢神社 不動の滝
気づかずに通り過ぎそうな、人影少ない落差数メートルの滝
那須塩原方面から流れ下る箒(ほうき)川のほど近くに立つ、永禄5年(1562)創建と伝わる滝沢神社。どこからか聞こえてくる水音に導かれるように本殿裏手へと回り込み、石段を30段下ると、規模は小さいながら、周囲から隔絶された感のある滝が現れる。滝のすぐ上を車が通り過ぎるが、立ち寄る人もほとんどいないかなりの穴場だ。
●散策自由。栃木県大田原市滝沢402
天鷹酒造
水・気候・風土に恵まれた自然豊かな地で酒を醸す
那須連山の伏流水や清流が大地を潤し、晴天率の高い恵まれた環境のもと、市内には酒蔵が複数ある。ここはその代表格で創業は大正3年(1914)。現在積極的に取り組んでいるのが有機日本酒の醸造で、徹底した対策により、国内の有機JAS法のみならずアメリカやEUの厳しい基準もクリアしている。試飲ができる直営店では酒器なども買える。有機純米天鷹(てんたか)720㎖1595円ほか。
なす風土記の丘 湯津上資料館
日本考古学発祥の地のいわれを簡潔に学べる
西暦700年ごろに建立されたとみられる那須国造碑(なすのくにのみやつこのひ)。その存在が江戸時代に旅の僧により伝えられ、聴いた徳川光圀が調査・保護を命じた侍塚古墳があるのが市内・湯津上(ゆづかみ)地区。館内では碑発見の経緯や古墳の発掘調査に至る関係者の尽力を中心に展示・解説。近年は事業の一環として周辺の自然や湧水、近現代の歴史など、地域の文化資源に着目した活動も積極的に行っている。
上侍塚古墳・下侍塚古墳
水戸黄門の命により日本初の発掘調査を実施
那須国造碑の謎を解明すべく、徳川光圀(水戸黄門)が佐々介三郎宗淳や那須郡武茂郷(むもごう)の庄屋・大金重貞に発掘を命じたのが、4世紀後半の築造とされる前方後方墳の上(かみ)・下侍塚(しもさむらいづか)古墳(ともに国指定史跡)だ。出土品の絵図を残し、発掘後にはそれらを埋め戻したうえでアカマツを植えて保全に努めたことから、「日本考古学発祥の地」と評される。
●見学自由。栃木県大田原市湯津上
☎0287-98-3322(なす風土記の丘湯津上資料館)
笠石神社
日本三古碑で国宝指定の御神体・那須国造碑を祀る
那須国造碑の存在を知った徳川光圀が命じ、元禄5年(1692)に創建。御神体である碑は、伊藤克夫宮司の詳しい解説を拝聴し、理解を深めてから対面するのが望ましい。光を当てると石碑に刻まれた字が浮かび上がって見えるから不思議だ。
栃木県なかがわ水遊園
淡水魚を中心に展示する県内唯一の水族館が人気
那珂川のほとりに広がるゆったりとした25haの公園。中核施設の「おもしろ魚館」では那珂川で見られる魚からアマゾン川に生息する稀少種まで、淡水魚をメインに300種2万匹を展示。水槽は外光を採り入れ、できるだけ自然の川の様子に近づけるなど、見学者を飽きさせない工夫を随所に凝らしている。
大田原 牛超(ぎゅうちょう) 本店
栃木の自然が育んだ極上の牛肉を味わえる至福の時間
大田原牛の登録商標をもつ、地域屈指の牛肉料理専門店。150gでなんと5万円を超える最高級超吟撰ステーキからハンバーグ、カレー、牛すじ煮込み、ローストビーフまで、こだわりの牛肉を味わい尽くすメニューがバラエティ豊かに揃うので、懐具合と相談しながら注文するといいだろう。各種牛肉の店頭販売もある。
~21:00)/定休日:無(臨時休あり)
黒羽温泉 五峰(ごほう)の湯
滑らかな肌触りが特徴の日帰り専用温泉施設
美人の湯と呼ばれるpH値9.9のアルカリ性単純温泉で、浴槽に身を沈めた途端に違いがわかるほど滑らかな肌触り。庭に面した明るい内湯は開放感にあふれ、数名が同時に入れる露天風呂も併設(2021年1月現在サウナは使用不可)。施設内には農家レストランや直売所もある。館外の駐車場脇には自慢の湯を持ち帰れる温泉スタンドがあり10ℓにつき10円で販売。
取材・文・撮影=横井広海
『散歩の達人』2021年2月号より