日本では文部省が長年学校体育に取り入れたので、バスケットボールは馴染(なじみ)深い。なのに「若い頃は専用競技場がほとんどなかった」と、日本バスケットボール振興会役員の羽佐田さんと黒川さん。だから1964年、東京オリンピックで代々木に専用体育館ができると聞いて大喜び。が、完成後訪れた感想は「異様な建物」。そう、丹下健三設計のいまだ世界に類を見ない吊り屋根建築物が2棟並んでいたのだ。
完成したのは大会が始まる39日前。選手らに練習で使い心地をみてもらい、「桜材の床が滑る」などの声に、手直ししてなんとか間に合った。
世界の激戦を先のお二人は記録係と報道係として全試合記録。16カ国中日本は4勝5敗で10位と健闘した。心に残る場面の数々を今も忘れない。また決勝の審判を往年の名選手・松尾武司氏が務めたことも栄誉だった。
以来、代々木第二体育館はバスケットボールの聖地となった。使い勝手もよかった。暗幕で外光が遮られるし、円形の観客席は一体感がある。
プ レイも会場もお楽しみなのだ
だが3000余人の収容力では昨今は手狭に。そこで今回は2万人収容できるさいたまスーパーアリーナが選ばれた。これまでに世界大会が何度も行われた実績があるのだ。
なるほどここも観客席は円形で、選手たちが高身長なせいかものすごい臨場感だ。と思ったら「今回は約2万人規模ですが、もっと大きなスペースにもなるんですよ」 と、さいたまスーパーアリーナ広報担当の中村薫子さん。
なんとこのアリーナは、客席やコンコースを含む巨大な構造物が70m水平移動し、2万席のメインアリーナから最大3万7000席のスタジアムに変化するのだ。壁面や床面にも座席が隠されているとのこと。「だから催しによって訪れたお客様は、それぞれ違う印象のアリーナを記憶するのでしょうね。世界でも珍しい施設ですよ」 と中村さん。いやびっくり!
奇しくもこの競技、二つの時代の「駅前にして世にも珍しい建築物」 の会場に恵まれたのだった。
ところで今回の見どころは?日本バスケットボール協会の広報担当者によれば、 「男子は44年ぶりの出場、女子はメダルを狙います」 。
アメリカやヨーロッパの大迫力プレイを目の当たりにできるのも大きな魅力。熱い15日間がやってくる!
取材・文=眞鍋じゅんこ 撮影=鴇田康則