目にも耳にも涼しい可睡斎の夏⇒目にも耳にも涼しい、可睡斎の風鈴[静岡県袋井市]
今や、暑さ対策といえばエアコンをはじめとして電気を使うものが中心です。
しかし、電気が存在していなかった頃の人は、目や耳から涼を感じようと知恵を絞りました。
その1つが、風鈴。
チリンチリンという高音は涼やかで、彩り豊かに彩色された風鈴の揺れる様子は、見ていて暑さを忘れさせてくれます。
静岡県袋井市のお寺、可睡斎では、毎年初夏から初秋にかけて「風鈴まつり」を開催。
境内に2000個もの風鈴が吊るされ、清らかな音と色で涼を運んでくれます。
その他、可睡斎の見どころはなんとトイレ!
生活の全てが修行と考える禅宗では、トイレにも「東司(とうす)」という、修行場としての名前がついています。
そして、トイレの中心にはかっこいい仏像が!
こちらは、「烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)」という仏で、世の中の不浄なものを焼き尽くす力を持っているとされます。
つまり、仏教版「トイレの神様」なのです!
瀬戸内海の風が心地よい、耕三寺[広島県尾道市]
日光東照宮は、歴史の深さと絢爛な建築で世界中から多くの観光客が訪れていますが、広島県尾道市に「西の東照宮」と呼ばれるお寺があります。
瀬戸内海を見下ろす高台に建つ「耕三寺」。海を通る気持ちの良い風が吹きるける同寺は夏にもオススメ!
境内にはなんと、国の登録有形文化財に指定されたお堂や塔が15棟もあり、見飽きることがありません。
また、寺宝を所蔵するミュージアムには、あの快慶が作った宝冠阿弥陀如来坐像をはじめ、国の重要文化財に指定される作品がいくつも!
さらにはお寺には似つかわしくない地中海風のおしゃれな外観をしたカフェも併設。
涼しい店内でゆっくり休むこともできる、至れるつくせりなお寺です!
山と木に囲まれた涼しげなお寺、室生寺[奈良県宇陀市]
奈良県宇陀市にある「室生寺」は、標高400mにあるため、市街地より気温が低く木々が茂り静謐な涼しさを作り出しているので、暑い季節の参拝もオススメです。
仏教の一大修行場である高野山は、近代まで女人禁制でしたが、室生寺は女性の参詣が自由であったことから「女人高野(にょにんこうや)」と呼ばれています。
仏像ファンが垂涎するほどに見事な仏像がズラリと揃っているのが見所。
「十一面観音立像」や「釈迦如来坐像」(いずれも国宝)は、その優美な姿はもちろん1200年以上前に作られたことを考えると、手を合わせずにはいられません。
昭和を代表する写真家である土門拳を心酔させる、室生寺の仏像群は仏像好きでなくても感じるところがあるはずです。
暑い日はせめて気持ちでヒヤッと。全生庵[台東区]
涼しげな景色や音色で目や耳から涼を感じ、冷たい素麺などをいただいて体の中から冷やし、エアコンで体の外からも冷やされる。
その他、冷えていないところは、そう「心」です。
そんな心まで冷やしてくれるお寺が、台東区谷中の「全生庵」。
昔から、夏の暑い夜には怪談話をして、心の底からヒヤッとするのが日本の定番ですね。
そんな怪談話に登場する、昔ながらの幽霊を想像してみてください。
白い着物を着た足のない女性ではありませんか?
日本人にはDNAレベルにまで染み込んだと言っても過言ではない、足のない幽霊の姿。
実は、江戸時代の円山応挙という絵師の描いた幽霊画が始まりだと言われています。
「全生庵」では夏の間(2023年は〜8/31)、この円山応挙の作と伝わる作品をはじめ、数々の幽霊画を公開。
体だけでなく、心までヒヤッとしてみるのはいかがでしょう。
まんが喫茶のようなお寺、多門院[港区]
酷暑、ショッピングやお散歩の際の休憩として、喫茶店やネットカフェを利用する人も多いはず。
港区の多聞院は、まんが喫茶のような利用もできる珍しいお寺です。
中に入ると、御本尊である阿弥陀如来の描かれた掛け軸とお鈴や木魚が並んでいるので、まずはここで合掌礼拝します。
その隣の部屋の壁面に並ぶのは、手塚治虫の『火の鳥』や中村光の『聖☆おにいさん』など、200冊を超える仏教関連のマンガ。
エアコンの効いた和室で自由に読むことができ、難しく感じる仏教にも気軽に触れて学ぶことができます!
さらに、セルフサービスのコーヒーやお茶もいただけます。
これだけ揃って、無料というのは、まさに仏の慈悲のようですね!
暑さでお出かけが億劫になる夏。涼しいお寺に出かけてみてはいかがですか?
写真・文=Mr.tsubaking