セレブの街・銀座でビルの隙間に建つ豊岩稲荷神社
平日はサラリーマンやOL、土日は歩行者天国となってショッピングや銀ブラを楽しむ人々が数多く行き交う銀座7丁目の交差点。
そこから花椿通りを山手線に向かって入ったビルの脇に、探さないと見つけられないくらいの存在感で立っている小さな石碑があります。
そこから、きらびやかな銀座の街とは裏腹に「都会の背面」のようなビルの隙間を縫って進んでいった先に見えてくる朱塗り建物が、豊岩稲荷神社です。
お稲荷さんらしく、凛々しい狐が守る本殿(といっても、ビルの一部になっています)の前には、しっかり鈴が下がっており、ここが間違いなく神社であることがわかります。
こちらの由緒は、はっきりしていませんが今から約350年前の江戸初期には、すでにこの場所にあったとされています。
祀られる御祭神は「保食神(ウケモチノカミ)」もしくは「倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)」なので、いずれにしても「食べ物」に関連する神様です。
飲食店がひしめくように立ち並ぶこの辺りに、ピッタリの神様ですね。
その他、技芸上達のご利益があるとされ歌舞伎役者や芸能関係の人々がお参りに来たり、最近では縁結びの神様としても密かな注目を集めています。
まるで異界への通路に迷い込んだような、この場所で手を合わせると、不思議と静謐(せいひつ)な気持ちになってきます。
現代的な空港ビルにひっそりと建つ社(やしろ)、羽田航空神社
東京の玄関口として国内だけでなく海外への飛行機も往来する羽田空港は、多い年では年間8500万人以上(2018年度)の利用者数を誇ります。
現代の英知の賜物である飛行機や空港と、古代からの伝承を思わせる神社はあまりマッチしないように感じるかもしれませんが、実は羽田空港内に神社があるのです。
場所は羽田空港第1ターミナルの1階。お手洗いやデンタルクリニックがある人通りの少ない通路を進みます。
こんなところに神社があるのかと、不安になったあたりで目の前に現れるのが羽田航空神社。
ターミナルの一室にお社が置かれ、周囲に気持ちばかりの木々を配した簡素なものですが、れっきとした神社です。
その歴史は最初の東京オリンピック(1964年)の前年。財団法人日本航空協会(当時)にあった、航空神社から、神様をもらい受け空港内に神社を設置しました。
御祭神は、これまでの航空事業の発展に寄与した人々や飛行機事故など航空関連で亡くなった人々など、6000以上の御霊。
お参りに来る人は、かつては飛行機運行の安全を願う、航空会社や空港の職員の方々がほとんどでした。
しかし、飛行機が「落ちない」ことを祈る神様であることから、近年では受験に「落ちない」ようにと合格祈願をする人々の姿も見られるようになっています。
課金しないと出てこないレベルの発見難易度、花房稲荷神社
日本のサブカル・アニメ・アイドル文化が海外にまで広がるとともに、日本国内はもとより世界中からの観光客が集まる秋葉原。
そんな町の裏側のような場所に、ひっそりと立つ花房稲荷神社があります。
場所は秋葉原駅から徒歩わずか5分。土日は歩行者天国となって、多くの人が往来する秋葉原中央通りの中古アニメフィギュア・アイドルグッズ販売店『リバティー4号店』の裏です。
銀座の豊岩稲荷神社では石碑がかろうじて目印になりましたが、こちらはそれさえもありません。
関係者以外は入ってはいけなさそうなビルの隙間を入るのは、なんだか不審なことをしているような気分になります。
室外機がずらっと並ぶ、まさに都会の暗部のような通路を抜けると、鳥居が見えてきます。
由緒など書かれていないため、御祭神ははっきりしませんが稲荷神社であるということは「宇迦之御魂神(ウカノミタマ)」だと推測します。
同神のご利益は五穀豊穣で、農業での五穀豊穣が商人にとっては財が豊かになるのをさすことから、転じて商売繁盛の神様としても日本全国で信仰されています。
また、ここ花房稲荷神社では、古くから「百日咳や風邪などの咳止め」にご利益があると考えられ、お参りする人が多かったと言います。
大きな神社の神様は、たくさんの人の願いを叶えるのに忙しくて「叶え忘れ」たりすることもありそうですが、今回ご紹介したような神社ならその心配はありませんね!
みなさまも、都会のヒダに埋もれた神社に、お参りに行ってみてはいかがですか?
写真・文=Mr.tsubaking