【しっかり食べたいときはここ!】
妻がよみがえらせた名人の味『とんかつ やまいち』
靖国通りに程近い閑静なオフィス街の一角で営業するとんかつの名店。名人と称された亡きご主人のかつの味をよみがえらせたのは、妻の里絵さん。3種の油を合わせた銅鍋でカラリと揚がったかつは、サクサク、ジューシーで柔らかで、豚肉の旨味と甘みがジュワッと広がり、感動間違いなしのおいしさ。ランチのイチ押しは数量限定の特ロース2200円。「始めは塩で、次におろしポン酢、最後にソースと、順々に濃い味に移っていくと味のバランスがいいですよ」と里絵さん。絶妙な炊き加減のあきたこまちのごはん、三ツ葉香るなめこの赤だしもほっと和む味わいだ。
『とんかつ やまいち』店舗詳細
部位によって揚げ方変えるこだわり『とんかつ旭軒』
昭和11年(1936)創業の老舗店。現在は3代目の笹原詳司さんを中心に、父と母とともに店を切り盛りする。揚げ油には精製ラードと、軽く空気に触れさせながら肉の筋からも旨味を抽出させた自家製ラードを合わせている。そうすることによって揚げるときに風味と旨味が凝縮されるのだ。ヒレカツ定食は、切って揚げることでヒレがパサつかない仕上がりになり、肉質の柔らかさと赤身本来の味わいを感じることができる逸品だ。ロースカツ定食1450円は、2度揚げすることによって、均一に火が通り肉がほんのりとピンク色になっている。一切れを薄く切っているのが特徴で、脂と肉のおいしさを一緒に食べられる。ワインは2500円~とともに楽しみたい。
『とんかつ旭軒』店舗詳細
炭火で豪快に焼き上げた絶品ステーキをほおばる『東京ブッチャーズ』
驚くほどリーズナブルで満足度の高いランチで行列ができる人気店。牛赤身肉のステーキの付け合わせにフライドチキンまで付いて、結構な量のフライドポテト、グリーンサラダを盛り合わせ、スープとライスが付いてお会計はなんとたった1000円。カウンター席から見えるレンガ造りの炭火焼きグリルの上で、火通りを考えながら焼き位置を変えつつ炭火で焼かれた肉は、ほどよいミディアムで肉本来の味を思う存分堪能できる。ごはんは大盛り無料、50円プラスでライスをカレーがけに変更もできるなど、がっつり食べたいときにおすすめだ。
『東京ブッチャーズ』店舗詳細
旬の香味を引き出す天ぷらの妙味『天ぷら 魚ふじ』
豊洲で仕入れた旬味は、素材ごとに衣の濃度を変え、生搾りの太白ゴマ油ベースの油へ。揚げたてを一つひとつ供してくれる。会食にも利用される正真正銘の名店だが、昼は「毎日の食事だから、低価格で提供できないか」と店主の木口和浩さん。上は1万円以上の本格コース、下は1000円以下のお手ごろメニューまで揃えたスタイルは、あらゆる客を喜ばせたい想いの表れだ。グレードの高い定食やコースの締めには、大粒の小柱をミツバと粋なかき揚げに。下関の甘みある塩で味わうのも捨て難いが、かき揚げ丼や出汁かけの天茶に仕立てても旨い。
『てんぷら 魚ふじ』店舗詳細
上品なあっさり醤油が後を引く『麺や そめいよしの』
羅臼昆布を筆頭に乾物を十数種使うスープは、やさしい味を追求して完成させた。「まず、熱々のスープを試してほしい」と、店主の大津直人さん。スープの温度が下がらぬよう、全部載せは具を別に盛る。ブレンド小麦「そめいよしの」を使う特注麺は、低加水で冠水を使わない。ざらっとした舌触りと歯切れのよさが持ち味だ。「そばを意識しています」。控えめに語る大津さんだが、実は、神田明神の神輿を担ぎたくてこの地へ来た、祭男!
『麺や そめいよしの』店舗詳細
旨いカレーに隠されたマスターの生き様『葡萄舎』
マスターの池田賢一さん(64)は、若いころ放浪の旅の途中でマラリアにかかった。その時に食べたのがミールス料理(南インドのベジタリアン中心の定食)。ここでの体験がメニューに生かされている。30年ほど前、ワインバーとして開店したが、カレーの味が評判になり、やがて、昼はカレーランチ750円~、夜はカレーのほか、にこごりや刺し身などのつまみも楽しめるバーになった。ゆったりと居心地のよい店内にも、マスターの人柄がにじみ出ている。
『葡萄舎』店舗詳細
たまには池波正太郎のように昼酒を『神田まつや』
ビル街の一角で、屋号を記した釣り行灯(あんどん)や軒下に下がる大きな提灯が目を引く。かつてこの地には明治17年(1884)創業のそば屋『松屋』があったが、昭和2年(1927)に閉店することになり、その店を譲り受けたのが始まり。ソバは、北海道や長野、茨城など、その時季に最もよい産地のものを選び、石臼で碾きぐるみにして、そば粉10に対してつなぎ2の割合で手打ちする外二(そとに)。そば粉が多く、つなぎに鶏卵を使用するため、そばの香りと喉越しのよさが特徴だ。食通で知られた池波正太郎がなじみにした店としても知られる。
『神田まつや』店舗詳細
そばとつゆの相性にこだわる『神田 尾張屋 本店』
大正9年(1920)創業。屋号は初代の出身地である尾張町(現在の銀座5丁目あたり)に由来する。そばは、主に北海道産そば粉を使った細打ちの二八。温かいそばは、鯖節と本枯れ節で出汁を取り、風味を生かすためにつゆは薄口仕上げ。冷たいそばは本枯れ節のみで出汁をとり、つゆは濃いめの辛口。温冷とも、そばとつゆの相性を考え抜いた逸品だ。ビジネス街という場所柄、丼もののメニューも多く、夜は酒席として利用する人が多数を占める。
『神田 尾張屋 本店』店舗詳細
爽やかな酸味、見た目にも涼しげ『香川一福 神田店』
のびのある細めの自家製麺とさば節を利かせた香り高いつゆが特徴。かけ(あつかけ、ひやかけ、そのまま)小460 円、中530 円、大600円に、天ぷらなどをトッピングするのが基本。季節替わりのうどんもあり、夏季は宮崎県日向産のヘベスという柑橘類を薄切りにして浮かべたヘベすうどん(小)620 円が登場。出汁が効いた冷たいつゆにヘベスの香りが移り、ほどよい酸味とほんのり感じる甘みに食が進む。ヘベスには抗酸化作用に効果があるというフラボノイドがたくさん含まれているので、夏バテ克服にもぴったり。
『香川一福 神田店』店舗詳細
具材とルーを調和させるスパイスの妙技『カレーノトリコ』
ご飯の横はインド風。バリッと焼いた鶏肉に、どんな具材にも合うようスパイス配合を考えたルーをかけ、桜の香りがするハーブ、カスリメティを散らす。上は、粗挽き合挽肉とマスタードシードが存在感大のドライカレーで、どこを攻めても口中がザワザワとにぎやかだ。店主・田邉周平さんは「食感を大事にしています」と、断言。「近隣のサラリーマンのパワーになれば」と、期間限定品も仕込む。
『カレーノトリコ』店舗詳細
名物煮込み+もう一品のダブル主菜ランチ『あぶくま亭』
「和牛黒煮込みは前日に作ってひと晩寝かせます」と、店主の大橋さん。牛のモツやバラ、タンは舌で溶けそうなほどトロットロ。味が染み込んだ大根と玉子にも心が躍る。真っ黒な見た目と裏腹に、口当たりはさらり。それでいて旨味は深く、ご飯にかけてもまた一興。さらに、主菜は日替わりの品からもうひとつ選べる。この日はサバの梅生姜煮。あっさり優しい味は煮込みと好対照でほっこり。
『あぶくま亭』店舗詳細
ネタがあふれんばかりの贅沢ちらし『すし定』
開店は明治36年(1903)。現店主の加藤さんは5代目だ。「ちらしは先々代の頃からこの形」と胸を張る。並盛りでも10種以上のネタがのるが、常連の目当ては大盛りだけに付く中落ち。脂がのった身から、マグロ旨味がガツンと舌に伝わってくる。また、シャリはコシヒカリの新米と古米を合わせ、硬さと粘りを調整。酢の香りは控えめでネタの味を邪魔せず、絶妙に食欲を刺激する。
『すし定』店舗詳細
サクふわポップオーバーは中毒性高すぎ!『trattoria Macco』
ランチの名物は食べ放題のポップオーバー。シェフの宇佐美光林さんは「常にオーブンフル稼働で焼きたてを用意しています」と、笑う。少し塩味の入ったホイップバターを塗り、口に運ぶと、シュー生地のような食感だ。ふわっと溶け、香ばしさ鼻腔を抜ける。また、パスタは6種から選択。開店時から人気の渡り蟹のトマトクリームソースは、もっちり生パスタが絡み、深い旨味が後を引く。
『trattoria Macco』店舗詳細
とろ~り玉子のオムハヤシに頬が緩む『洋食キッチン 美味卵家』
「自慢のデミソースのうまさを最大限引き出したくて作ったメニュー」と、店主の佐藤善樹さん。名物のオムハヤシは、とろけるような玉子とデミソースに目が行くが、その下に隠れた白ご飯にかかる、ケチャップで和えた鶏ひき肉が決め手。口に運ぶと、トマトの酸味がパンチになり、爽やかな後味に。さらに、上にのった牛タンもガブリ。長時間煮込んだことでホロリと崩れる食感に、思わず頬が緩む。
『洋食キッチン 美味卵家』店舗詳細
【優雅に過ごしたい、カフェランチはここ】
日替わりのごはんと手作りスイーツがおいしい『カフェ レスピーロ』
神田駅から徒歩5分と近い割に、のんびりした雰囲気の神田紺屋町にあるカフェ。赤いシェードのある小さな間口の店内と外にオープンスペースがあり、まるで小さな隠れ家のよう。提供する料理やスイーツ、そしてパンに至るまで、すべて店内で手作り。とくに人気なのが「本日のゴハン&デリセット」。野菜と栄養がたっぷりの総菜がワンプレートにのったやさしい家庭の味だ。メニューは日替わりなので、毎日「ふだん着のゴハン」が楽しめる。また、自家製のクッキー、マフィン、プリン、ケーキなどもおいしいと評判で、コーヒーとともに、ほっとひと息つくのにおすすめ。
『カフェ レスピーロ』店舗詳細
上質な時間を提供する“コーヒーの達人”がいる喫茶店でランチ『高山珈琲』
中央通りと靖国通りが交差する、交差点近くの裏路地でひっそりと営業している『高山珈琲』。日中に訪れても外からの明かりがうっすらと入る程度のほの暗さと、その空間を静かに流れるジャズが大人の雰囲気を醸しだす。1994年の創業以来、まったく手を加えていない店内に、数十年ぶりに訪れるお客さんが当時を懐かしむこともしばしばだという。この店をオープンする以前から、複数の喫茶店の立ち上げに携わってきた店主の高山正秀さんは、いわば“コーヒーの達人”。2~3年乾燥・熟成させたオールドビーンズを、高山さんお手製のネルで丁寧に淹れたら、豆の味わいを細部まで表現した一杯の完成だ。
そんなこだわりのコーヒーと一緒に楽しみたいフードメニューも充実している。トーストやサンドイッチはランチにもちょうどいいボリュームで、サービスにりんごジュースが付いてくるのもうれしい。人気ナンバーワンのシナモン・トーストは、コーヒーとの相性も◎。贅沢に生クリームをつけて頬張れば、至福の時間が訪れる。
『高山珈琲』店舗詳細
フレンチプレスコーヒーとゴルフ愛が看板メニューの喫茶店『Tee Time』
『Tee Time』は、JR神田駅からほど近い場所にある雑居ビルの2階で営業している。店主の渡辺明彦さんは大のゴルフ好き。店内のあちこちに飾られているクラブなどのゴルフグッズは、すべて渡辺さんの私物だ。そんなこの店の看板商品は、コーヒー豆の焙煎から手掛ける“プレスコーヒー”。抽出に時間を要することから看板商品に掲げる店は少ないが、それでも渡辺さんはフレンチプレスでしか味わえない美味しさを伝えたいと考えた。豆は、毎日欠かさず直火式ロースターで焙煎を行い、その後2~3日熟成させたものを使用している。
また、クラブサンドイッチやホットサンド、ホットドッグといった、フードメニューにも渡辺さんのこだわりが光る。例えば、クラブサンドイッチに使用しているベーコンには、渡辺さんが自ら燻製を行うという、ひと手間がプラスされている。また、毎週金曜は「カレーの日」として、フードメニューがカレーのみに。渡辺さん特製のキーマカレーも、人気が高いようだ。
『Tee Time』店舗詳細
ランチで働く人々の胃袋を支える喫茶店『喫茶プペ』
オフィスビルが多く建ち並ぶ、比較的閑静な一画に『喫茶プぺ』はある。1970年に創業した当時のままのテーブルとイスを使用しているという1階の店内は、昔ながらの喫茶店を感じさせる風情が漂う。この店を利用するお客さんの大半が近隣で働く人という店柄、彼らの限られた時間を第一に考えたサービスを提供中だ。そのため、ゆっくり時間をかけてコーヒーを淹れることはなかなかできないというが、目黒にあるコーヒー店にこの店専用のブレンドを作ってもらうなど、豆にはしっかりこだわっている。
フードメニューも特製カレーをはじめ、オムライスやナポリタンなど洋食店に負けないクオリティの品々がそろう。中でも、ホテルのシェフからレシピを譲り受けた特製カレーは、でき上がるまでに3日かかるという手の込んだ一品。原直樹さんが2代目店長を引き継いでからも、手間を惜しまない製法を守り続けている。そんな特製カレーは、神田カレーグランプリの決勝戦に3年連続で出場も果たしている、この店の名物だ。
『喫茶プペ』店舗詳細
【旨いラーメンをたべるならここ】
唐辛子と山椒が効いた刺激的な味噌ラーメン『カラシビ味噌らー麺 鬼金棒 神田本店』
山椒と唐辛子を使った味噌ラーメンを提供しようと2009年にオープン。カラシビ味噌らー麺900円は、オリジナル調合の濃厚な味噌を使ったスープに、こだわり唐辛子スパイスと香り豊かな山椒のしびれ油が入る。麺は太さが異なる3種類が入り、バラエティ豊かな食感を堪能できる。唐辛子の辛さ「カラ」と山椒のしびれ「シビ」は抜き・少なめ・普通・増し・鬼増し(150円)があり、個別に調整できる。奥深い辛さとしびれを堪能しよう。
『カラシビ味噌らー麺 鬼金棒 神田本店』店舗詳細
一面ガラス張りでおしゃれな造りのラーメン店『塩生姜らー麺専門店 MANNISH』
外堀通り沿いにある一面ガラス張りでおしゃれな造りのラーメン店。塩生姜らー麺850円には、辛みが少なく、香りが高いことからアロマ生姜とも呼ばれる熊本県産「きな生姜」を使用。スープだけを飲むとかすかな生姜の風味だが、かき混ぜれば、生姜の風味が一層引き立つ。卓上にある生姜酢を加えれば、さらに生姜の風味やおいしさが増す。ほぼ日替わりで登場する限定ラーメンも試してみよう。
『塩生姜らー麺専門店 MANNISH』店舗詳細
人気メニューは熟成練り醤油らーめん『「 」(無銘)』
店名はなく、通称は「無銘」。人気メニューは熟成練り醤油らーめん800円。鶏ベースの塩スープには、ジャガイモが入りまるでポタージュのよう。そのままだとやや薄味だが、毎日作る練り醤油を溶けば、醤油の濃厚なコクと魚貝の風味が広がる。トマトの風味がある辛トマネギや肉肉しいバラチャーシュー、食感がいい茹でキャベツなど、トッピングも秀逸だ。
『 』(無銘)店舗詳細
「魚を飲んでみませんか?」がコンセプト『鮮魚らーめん 五ノ神水産』
「本来は捨てられてしまう食材(副産物)に付加価値を付けてラーメンにする」ということ心がけているという。この店は鮮魚系を前面に押し出したラーメンが人気。身や血合いが付いた銀ダラの骨のほか、焼いた中骨などを長時間煮込んだスープの香りはまさに銀ダラの西京焼き! 飲んでみると、見た目に違わず銀ダラの風味、西京味噌の甘さと優しいコクが広がる濃厚な味わい。銀だら西京味噌つけ麺900円。
『鮮魚らーめん 五ノ神水産』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり ・松井一恵・高橋健太(teamまめ)・塙 広明・速志淳・ミヤウチマサコ(アド・グリーン)・池田実香・柿崎真英 撮影=オカダタカオ・高野尚人・山出高士・鈴木賢一・丸毛透・加藤昌人 ・井原淳一・池田実香・柿崎真英・速志 淳