ゴルフ好きの店主とフレンチプレスコーヒー

『Tee Time』は、JR神田駅からほど近い場所にある雑居ビルの2階で営業している。看板に記された店名のロゴには、ゴルフボールのイラスト。この時点ですでにお気付きの方もいると思うが、店名のTee Timeとはゴルフのスタートタイムを指す言葉に由来している。

店主の渡辺明彦さんは、大のゴルフ好き。店内の壁や梁にも、クラブなどのゴルフグッズが飾られている。渡辺さんがこの地に出店を決めたのも、ゴルフ仲間の多くが神田周辺で働いていることが大きかった。そんなこの店では、喫茶店経営のほかにゴルフコンペ・プロデュースやラウンドレッスン・コーディネートの依頼も請け負っている。

店内のあちこちに飾られているゴルフグッズ。

看板商品は、コーヒー豆の焙煎から手掛ける“プレスコーヒー”。この店をオープンする以前から長らくコーヒー関連の仕事に携わってきた渡辺さん。コーヒーとともに過ごすなかでフレンチプレスコーヒーと出合い、その美味しさに感動したことが、きっかけだった。

金属のフィルターでこすことで、豆の油分までダイレクトに抽出できるのがプレスコーヒーの特長だ。しかし、抽出に時間を要することから看板商品に掲げる喫茶店は少ない。それでも渡辺さんは、フレンチプレスでしか味わえない美味しさを伝えたいと考え、オープン以来看板メニューとして提供を続けている。

熟成させたコーヒー豆。

渡辺さんには、コーヒーへの5つのこだわりがある。それは、「豆のクオリティ」「焙煎度合い」「挽き方」「抽出方法」「お湯の温度」。手間暇かけて栽培されたコーヒー豆であることを重視して仕入れた豆を、渡辺さんが直火式ロースターを使いながら、毎日お店で焙煎する。そして、異なる煎り具合の豆をブレンドし、2~3日熟成させる。そうすることで炭酸ガスがほど良く抜けて、落ち着いた味のコーヒーに仕上がるという。実際に、3日ほど寝かせた豆を見せていただいたが、よく見ると豆の表面にじんわりと油がしみ出ているのがわかる。この油(コーヒーオイル)が、コクの元となるのだ。

豆は抽出方法に応じて、それぞれ適した挽き方に仕上げる。例えば、フレンチプレスでは、豆を細かく挽けば挽くほど雑味が出てしまうため、粗挽きが適しているという。さらに、深煎りの豆を使用するプレスコーヒーでは、95~90℃と高めの温度のお湯で淹れることで、あえて苦みを引き立たせるのが渡辺さん流。豆の煎り方によって、お湯の温度も調節している。

ストレート フレンチプレス W(本日のオススメ)650円。

そんなこだわりのプレスコーヒーは、液体の表面に油分が浮いているのがわかるほど。口に含めば、その瞬間に苦みを感じ、嚥下(えんげ)したあとに油分によるまろやかさが口の中に残る。まさに、コーヒーの広告でよく目にする“コクとキレ”を体感したような感覚だ。ドリップコーヒーでは味わったことがないほどの油分を引き出せるのは、フレンチプレスならではといえるだろう。また、プレスコーヒーは1度のオーダーで2杯分いただける。2杯目は、1杯目よりも濃くなるため、「ミルクを入れて味を変えながら楽しむのもおすすめ」と渡辺さん。

ビジネスパーソンの拠り所

クラブサンドイッチ600円。

こだわりのコーヒーのほかにも、この店にはさまざまな魅力がある。ひとつは、フードメニュー。クラブサンドイッチやホットサンド、ホットドッグなど、これらのレシピにも渡辺さんのこだわりが光る。

例えば、クラブサンドイッチに使用しているベーコンには、渡辺さんが自ら燻製を行うという、ひと手間がプラスされている。また、毎週金曜は「カレーの日」として、フードメニューがカレーのみになる。渡辺さん特製のキーマカレーも、人気が高いようだ。

お店の隣にある喫煙ルーム。

さらに、この店のすぐ隣には喫煙ルームを設けている。2020年4月に受動喫煙防止条例が施行されて以来、店内での喫煙は不可になったが、隣のスペースを喫煙ルームとして開放した。また、店内にはWi-Fiが完備されている。

こだわりのコーヒーとフードメニューで午後の活力を得て、急な仕事にもその場で対応できるような環境を提供する。そんな『Tee Time』は、働く人々の拠り所でもあるのだ。

『Tee Time』店舗詳細

住所:東京都千代田区内神田3-10-5 満留賀ビル2F/営業時間:9:00~18:30/定休日:土・日・祝/アクセス:JR神田駅から徒歩2分、地下鉄銀座線神田駅から徒歩4分

取材・文・撮影=柿崎真英