サク飲みに最高なやきとりスタンド!『鳥勇 一番通り店』
創業95年の老舗は元精肉屋。「鶏肉を卸していたけど砂ぎもや皮、レバーがどうしても余る。それらで“ミックス”って串を作ったのがウチのやきとりの原点」と3代目。ミックスを頬張れば備長炭で焼いた皮はカリッ、レバーはふわとろで噛まずとも溶けていく。焼く際に一度たれに潜くぐらせているが、お客が食べる前に自らたれをつけ、好みの濃さに調整OK ! もちろん二度づけ禁止だ。
『鳥勇 一番通り店』店舗詳細
広東出身シェフによる立ち飲み中華とは『中華立呑 盛苑』
中華料理屋で25年以上腕を振るっていた羅国雄(ローコクション)さん。近所の立ち飲み屋が大人気なことに気づき、立ち飲み中華への転換を決意。ゆえに、料理の多くは税別150~450円ながら味は本格派だ。水餃子4個275円の皮は自家製でモチモチ、1人用塩どり396円は柔らかな肉質とバンウコンの根を隠し味に使ったソースの香味が後を引く。お酒も200円台からあり、今や羅さんの店も繁盛店に!
『中華立呑 盛苑』店舗詳細
酔客を見守る飴色空間はムサコの宝『牛太郎』
2代目の城さんが朝5時から仕込むもつ焼きは新鮮で、味噌仕立ての煮込みは濃厚でうまい。でも、それは魅力のほんの一部。昼、開店前からカウンターに座して台拭きを手伝いつつ飲む常連、マイ青汁で割って一杯やりだすおじさんなど、ほどよく自由な空間が最高なのだ。左隣の客いわく「俺、皆勤賞。店にタイムカードがあるの(笑)」。右隣の客いわく「30年ぶりにここに座ったけど光景は変わらないね」。牛太郎よ、いつまでもこのままで。
『牛太郎』店舗詳細
飲むほどにピリリと辛さがしみる『豚 星』
市場から直接仕入れた新鮮な豚肉を用いたもつ焼きを、リーズナブルな価格で味わえる名店。17時を過ぎると、サラリーマンでにぎわう。ここを訪れたらぜひとも頼みたいのが、大葉を水草に、唐辛子を金魚に見立てた金魚サワーだ。見た目の涼しさもさることながら、大葉のさわやかな香りと唐辛子のピリリとした辛さが食欲をそそり、強炭酸が脂を切ってくれるので、もつ焼きが何本でもペロリと食べられてしまう。サワーをお代わりするたびに増えていく金魚を、「1匹、2匹……」と数えながら夜を楽しもう。
『豚 星』店舗詳細
手でむしり、食らいつく幸せ『目黒 月鳥』
まずはキャベツをビールの供に、揚げ上がりを待つべし。胃が準備を整えた頃、銀皿に鎮座したひな鳥半身がでんと姿を現す。食べやすいようカットもしてくれるが、ここは半身のまま、熱さと闘いながら、ムネ、手羽、モモへと攻め込みたい。パサつきがちなムネでさえジューシ〜で、喉がビールを手招き。「素揚げだから、あまり油も吸わず、食べやすいんです」とは、店主の吉田貴弘さん。内臓を抜いた国産生のひな鶏を店でばらし、塩をなじませて半身ごと揚げる。火の通り具合は部位ごとに異なるものだが、揚げ温度や余熱でタイミングを計り、調整。その技にも感服だ。くびからぼんじりまでひとつなぎの元祖せすじや、モモ内側の脂「なみだ」など、希少な素揚げも捨てがたい。
『目黒 月鳥』店舗詳細
味覚の反復運動にヤミツキ『coQere』
興味はあれど、取っ付きにくい。そんな個性の強い日本酒は「振り子の法則を応用すればトライしやくなります」。そう教えてくれたのは、店主の柘植和志さんだ。つまり、甘くて癖のあるどぶろくには、山椒の効いたピリ辛の中華料理を対峙させ、異なる味覚を交互に作用させるといいという。四川生山椒と、老酒で発酵した乾燥唐辛子、パクチーの和え物は、よく混ぜて食べる。舌がカーッとなったところに大分県『中野酒造』の「ちえびじん」を流し込むと、ヨーグルトのような酸味が辛味を一掃。次の瞬間、舌のビリビリは甦るが、食材が秘めた苦み、酒の甘み、コクも盛り上がってきて複雑なグラデーションを醸す。辛さのせいもありつつ、この新感覚に感動の涙。柘植さんは本場の食材を入手するため定期的に中国へ渡る。
『coQere』店舗詳細
※事前予約で17:00~可/定休日:月/アクセス:東急目黒線西小山駅から徒歩4分
取材・文=鈴木健太、佐藤さゆり(teamまめ)、 石原たきび、信藤舞子、風来堂 撮影=オカダタカオ、高野尚人、丸毛 透、山出高士、井原淳一