北海道名物「ザンギ」をお供に夜を楽しむ『釧路食堂』
目玉はなんといっても、北海道・釧路の『鳥松』が発祥といわれている鳥の唐揚げ「ザンギ」。釧路出身の店主・山本ごんたさんが、そのレシピを教わって2002年に開業した。鶏肉の味付けは、複数のスパイスと生姜、山椒。ウスターソースに似たオリジナルのタレをつけて食べるのが『鳥松』流だ。揚げ油のラードは注ぎ足して使うため、油だけを味見してもしっかりと鶏の風味がするそう。一般的な鶏の唐揚げとは全く異なる味わいで、ザクザクの衣は食感もあいまって香ばしく、鼻を抜ける香りにも旨味を感じる。店のメニューには、ザンギのほかにもホッケのくんせいや厚岸(あっけし)の岩ガキなど北海道の美味が並ぶ。
『釧路食堂』店舗詳細
サク飲みに最高なやきとりスタンド!『鳥勇 一番通り店』
創業約100年の老舗は元精肉店。「鶏肉を卸していたけど砂ぎもや皮、レバーがどうしても余る。それらで“ミックス”って串を作ったのがウチのやきとりの原点」と3代目。ミックスを頬張れば備長炭で焼いた皮はカリッ、レバーはふわとろで噛まずとも溶けていく。焼く際に一度たれにくぐらせているが、お客が食べる前に自らたれをつけ、好みの濃さに調整OK ! もちろん二度づけ禁止だ。
『鳥勇 一番通り店』店舗詳細
広東出身シェフによる立ち飲み中華とは?『中華立飲 盛苑』
中華料理屋で25年以上腕を振るっていた羅国雄(ローコクション)さん。近所の立ち飲み屋が大人気なことに気づき、立ち飲み中華への転換を決意。ゆえに、料理の多くは税別220~520円ながら味は本格派だ。水餃子4個352円の皮は自家製でモチモチ、1人用塩どり1/8 473円は柔らかな肉質とバンウコンの根を隠し味に使ったソースの香味が後を引く。お酒も200円台からあり、今や羅さんの店も繁盛店に!
『中華立飲 盛苑』店舗詳細
/定休日:水/アクセス:東急電鉄目黒線武蔵小山駅から徒歩6分
飲むほどにピリリと辛さがしみる『豚星』
市場から直接仕入れた新鮮な豚肉を用いたもつ焼きを、リーズナブルな価格で味わえる名店。17時を過ぎると、サラリーマンでにぎわう。ここを訪れたらぜひとも頼みたいのが、大葉を水草に、唐辛子を金魚に見立てた金魚サワーだ。見た目の涼しさもさることながら、大葉のさわやかな香りと唐辛子のピリリとした辛さが食欲をそそり、強炭酸が脂を切ってくれるので、もつ焼きが何本でもペロリと食べられてしまう。サワーをお代わりするたびに増えていく金魚を、「1匹、2匹……」と数えながら夜を楽しもう。
『豚星』店舗詳細
手でむしり、食らいつく幸せ『目黒 月鳥 武蔵小山店』
まずはキャベツをビールの供に、揚げ上がりを待つべし。胃が準備を整えた頃、銀皿にのったひな鳥半身がでんと姿を現す。食べやすいようカットもしてくれるが、ここは半身のまま、熱さと闘いながら、ムネ、手羽、モモへと攻め込みたい。パサつきがちなムネでさえジューシ〜で、喉がビールを手招き。「素揚げだから、あまり油も吸わず、食べやすいんです」とは、店主の吉田貴弘さん。内臓を抜いた国産生のひな鶏を店でばらし、塩をなじませて半身ごと揚げる。火の通り具合は部位ごとに異なるものだが、揚げ温度や余熱でタイミングを計り、調整。その技にも感服だ。くびからぼんじりまでひとつなぎの元祖せすじや、モモ内側の脂「なみだ」など、希少な素揚げも捨てがたい。
『目黒 月鳥 武蔵小山店』店舗詳細
元寿司職人の繊細な技にほろ酔う『佐一』
両親が開いた大衆酒場を、寿司職人の佐藤雪男さんが引き継いだのは2009年。古い付き合いの豊洲の仲卸などから仕入れた鮮魚を、良心的価格で味わえる。例えば、イワシはさばきたてを包丁でなでるように和え、なめろうに。まぶされたトビコの食感が心地よい。当日はそのイワシの内臓周辺の脂身を刺し盛りに添えてくれたが、コクと爽やかな甘みに驚く。魚を触って約半世紀、店主の技と知恵の詰まった酒肴が、地酒を進ませるのだ。
『佐一』店舗詳細
男気あふれるムサコ最大級のやきとり『うち田』
ヤゲンなんこつ250円は回りに身がたっぷり、官能的なねっとり食感のつくね250円はピンポン玉級のデカさ。どのやきとりも巨大で、持つと串が折れそう。「お客さんが喜ぶからどんどん大きくなり、串も太くしました」と店主の内田智也(ともなり)さん。柔らかな肉質の信玄どりのうまさを引き出すため、基本は天日塩で提供。肉の旨味が詰まった巨大胸トロ250円もねぎま250円も確かに塩が一番!
『うち田』店舗詳細
味覚の反復運動にヤミツキ『coQere』
興味はあれど、取っ付きにくい。そんな個性の強い日本酒は「振り子の法則を応用すればトライしやくなります」。そう教えてくれたのは、店主の柘植和志さんだ。つまり、甘くて癖のあるどぶろくには、山椒の効いたピリ辛の中華料理を対峙させ、異なる味覚を交互に作用させるといいという。四川生山椒と、老酒で発酵した乾燥唐辛子、パクチーの和え物は、よく混ぜて食べる。舌がカーッとなったところに大分県『中野酒造』の「ちえびじん」を流し込むと、ヨーグルトのような酸味が辛味を一掃。次の瞬間、舌のビリビリはよみがえるが、食材が秘めた苦み、酒の甘み、コクも盛り上がってきて複雑なグラデーションを醸す。辛さのせいもありつつ、この新感覚に感動の涙。柘植さんは本場の食材を入手するため定期的に中国へ渡る。
『coQere』店舗詳細
※事前予約で17:00~可/定休日:月・第3火/アクセス:東急電鉄目黒線西小山駅から徒歩4分
パンが肴の至福のイタリアン酒場『Cizia』
イタリア料理人歴8年、パン職人歴2年の馬場且江シェフがオープンしたイタリアン。自家製酵母を使ったパンや、イタリアンな前菜を肴にグラスワインを味わえる。ワインは国産、イタリア産、ジョージア産などの自然派を複数用意。写真のトマトソースやからすみのペペロンチーノなど、締めに食べたいパスタの種類も豊富だ。
『Cizia』店舗詳細
構成=中村こより 取材・文=鈴木健太、佐藤さゆり(teamまめ)、 石原たきび、信藤舞子、風来堂、中島茂信、中村こより 撮影=オカダタカオ、高野尚人、丸毛 透、山出高士、井原淳一、金井塚太郎、中村こより




