「くまきち」は2代目だった
西浅草に昨年オープンしたハンバーグ&ステーキの店「Wazn(わずん)」。入り口には巨大……というより中くらいの、コック服を着た「くまきち」が座っている。店主さんによると、オープン時には初代「くまごろう」がいたのだが、何者かに盗まれてしまい、「くまきち」は2代目として購入したそうだ。
コック服も市販のもので、ハロウィンやクリスマスの時には違う装いになり、大雨の時にはカッパを着せているという。たまに洗濯はしているが、縮みそうなのでめったには洗えないとのことであった。熊を店頭に置いた理由は、お店の前が一方通行の道路なこともあり、店を出る時にお子さんが熊に目を留めることで飛び出し防止になるからだということだ。
また、マスコットを置くことで「お店の名前は覚えてもらえなくても、『あのクマの店』と覚えてもらえる」と店主さん。店内に飾られている小さい「くまたろう」を始め、熊のものをお客さんにもらうことも多いという。「おじいちゃん、おばあちゃんが多い地域ですので、お孫さんが熊を気にして来店して下さる」とのことであった。
お子さんに喜んでもらうため
東中野の不動産屋さんの店先にもベージュ色の大きな熊がいる。あれ、数年前に見た時にはこげ茶色の熊だった気が……と思いお店の方に伺うと、今の熊は2代目として購入したものだそう。
熊を置いた理由としては、商店街の中のお店なので人目を惹くようにということと、子供連れのお客さんも多いため、お子さんに喜んでもらえるようにとのことであった。お手入れについては特別なことはしていないというが、ファブリーズをしたり拭いたりなどのメンテナンスをし、雨の日には店内に入れるなどしているそうだ。
熊を置いて良かったことは、「小さい子が遊んでくれること」とお店の方。店の方では特に熊には名前を付けていないそうだが、もしかすると子供たちは思い思いの名で熊を呼んでいるのかも知れないと思った。
散歩中のワンちゃんに毎日かみつかれる?
ときわ台のクリーニング店「ホワイト急便 南常盤台店」。店頭にいる熊はアンパンマンのぬいぐるみを頭に載せているが、実は特殊な経緯でこのお店にやって来た熊であった。
お店の馬場さんによると、3年ほど前のある日、お店の前にアンパンマンのぬいぐるみが落ちていたという。そのアンパンマンの落とし主を見つけるため、馬場さん自ら巨大熊のぬいぐるみを買ってきてアンパンマンを頭上に載せ、落とし主に気づいてもらいやすくしたというのだ。今も熊の頭の上にアンパンマンが載っていることからも分かるように、まだ落とし主は現れていないそうなので、心当たりのある方はぜひ名乗り出てもらいたい。
3年が経った今、店頭の熊は地域の方々にもすっかり馴染み、「散歩中のワンちゃんが毎日かみついてくるんですよ(笑)」と馬場さん。
熊専用の衣装ケースも用意
店内にも一回り大きな熊がいるが、こちらも馬場さんが近所のスーパーの催事で購入したものだそうだ。店頭、店内どちらの熊にも名前はついていない。「募集しようとおもったけれど、面倒くさくて(笑)」とのことだった。
店頭の熊は取材時にはデニムのベストをオシャレに着こなしていたが、父の日にはネクタイ、7月には浴衣、夏にはレイなど季節ごとに衣装を着替え、馬場さんは熊専用の衣装ケースも用意しているという。
雨の日は店頭の熊を店内に入れるため狭くなってしまうのが難点ではあるが、お客さんの問い合わせの際に「あっ、クマのあるお店!」とすぐにわかってもらえる上、順番待ちに飽きてしまった子供が熊で遊んでくれるのが、熊を置いて良かったことだという。
えっ、うちの他にもあるんですか?
店頭に巨大熊を置く理由。それは「子供への優しさ」であった。子供に対する温かい思いが店頭に熊を置かせるのだ。今回の熊たちは全て、「もらったけど持て余して」などという理由ではなく、店頭に置かれるために購入されていることからもそれがわかる。
ところで、今回お話を伺ったお店の方からはもれなく「えっ、うちの他にも大きなクマを置いている店があるんですか?」と尋ねられた。あります、それもたくさん。
これをお読みになっているあなたのお店にも、ぜひ巨大熊を置いてみませんか。
絵・写真・文=オギリマサホ