一番重要な“18”番目の願い
十円玉の裏面でもおなじみ「平等院鳳凰堂」の本尊でもある阿弥陀如来。
このお堂がお寺として成立した1052年は「釈迦の教えが廃れて、最悪の世界になる元年」と考えられていました。そのため、阿弥陀如来は「どんな人にも手を差し伸べる仏」として人気を得ていきます。
そんな阿弥陀如来は、悟りを開くための修行中に「仏になったら達成したい48のこと」という誓いを立てており、筆者はこれを「AMD48(えーえむでぃーふぉーてぃーえいと)」と呼んでいます。
その中でも最も重要だとされるのが18番目の誓い。
「この最悪な世界で、極楽に行きたいと願い、たった10回でも南無阿弥陀仏を唱える人がいたなら、私は絶対にその人を救う」(筆者意訳)というもの。
狩りや漁など、生活のために生き物を殺さざるを得ない人や、出家して修行ができない庶民にとって、18番目近いはとても心が救われたことでしょう。
みんなが知っている“108”つの煩悩の意味とは
煩悩の数は“108”つ。というのは、仏教を学んでいなくても多くの日本人が知っています。
大晦日(おおみそか)の除夜の鐘が、煩悩の数に合わせて108回つかれることを知った時に学んだ人が多いでしょう。
ではなぜ、煩悩は108だとされているのでしょう?
仏教では人間の煩悩を生む根底には「六根(ろっこん)」があると考えられています。
「視覚・嗅覚・聴覚・触覚・味覚」の五感に「意識」を加えた6つ。
この6つでそれぞれ「好き・普通・嫌い」を感知して、さらにそれを「きれい・きたない」に分けます。
ここまでで6×3×2=36。
さらにこれに「現在・過去・未来」を掛け合わせると、36×3=108となるわけです。
他にも、仏教から生まれた言葉「四苦八苦」が4×9+8×9=108となるためなど、いくつかの説があります。
ちなみに、お葬式などで皆さんが手にする数珠の珠(たま)の数も、108個もしくは、約数である54個・36個などで作られるので、ぜひ数えてみてください!
お釈迦さまは約“480”ⅽⅿの超高身長だった!
日本人男性の平均身長は約170cⅿで、アジア各国もそう大きな違いはありません。お釈迦さまもおよそ2500年前に生まれた実在の人物なのですが、ある種“伝説化”されているため、信じられないような身長だと伝わっています。
その身長はなんと約“480”cⅿ!!
日本の古い言い方では「一丈六尺(いちじょうろくしゃく)」というサイズです。
この数字に合わせて、約480cⅿの立像や、約240cⅿの座像が多く造られており「丈六仏(じょうろくぶつ)」と呼ばれ、人気もあります。
丈六仏を目の前にするとかなり大きく感じますが、これが等身大なのです。
「中尊寺」(岩手)の釈迦如来像、「高幡不動」(東京)の不動明王像、「戒光寺」(京都)の釈迦如来像などが有名です。
観音さまのパワーが“4万6000”倍になる日がある
夏の暑い時期、浅草寺で「ほおずき市」が開かれて風物詩になっていますが、実はこの時期に、お祭りが開かれるのにはワケがあります。
浅草寺の本尊は観音菩薩で、ほおずき市が開かれる7月9・10日は観音菩薩のパワーがなんと、“4万6000”倍になる、観音パワー爆上がりの日とされているのです!
1回お参りするだけで、4万6000日分の御利益があり、年に換算すると126年。つまりこの日にお参りすれば、一生分の御利益が!
なぜ、一生を4万6000日としたのかというと、一升瓶にお米を満タンに入れると4万6000粒入るため、一生と一升の掛け言葉になっています。
鎌倉の長谷寺などでは8月9日や10日になっていて、深夜の拝観が可能になっているお寺もあります。
夜の闇の中、ロウソクの光で浮かび上がる仏像は、いつもより神秘性が増して、思わず手を合わせたくなってしまいます。
“43億2千万年”という長すぎる修行
お釈迦さまは山にこもって6年間の苦行をしました。浄土真宗の宗祖である親鸞は比叡山で29年の修行をしています。
それでも十分に長い期間ですが、もっともっと長い期間、瞑想して悟りを求めた仏が「五劫思惟阿弥陀仏(ごこうしゆいあみだぶつ)」です。
五劫が期間を表しており、その長さは驚異の“43億2千万”年!
まず、一劫は「天女が100年に一度舞い降りて、約160kmもある大きな岩を羽衣でなでて、その岩が擦り切れてなくなるまでの時間」とされています。
SF感がものすごいですが、五劫はその5倍の長さになるわけです。
それにしても、43億2千万年も瞑想をしたという表現が、髪の毛が伸びるだけということに、愛らしさを感じずにはいられません。
待ちきれない!“56億7千万年”後にやってくる仏
現在この世界を見守ってくれるのが私たちの知っているお釈迦さま。しかし、お釈迦さまは、「私より前に7人の仏がいた」と語っています。
そして、未来にも仏が現れると考えられており、それがやってくるのがお釈迦さまが亡くなって56億7千万年後。
笑ってしまうくらいに途方も無い未来ですね。
気の遠くなるような時間ですが、そんな未来に満を持して登場するのが「弥勒如来(みろくにょらい)」です。
現在は、「兜率天(とそつてん)」という場所で「弥勒菩薩」として悟りを開くための修行を続けており、56億7千万年後に、晴れて悟りを開いた如来として、現れるのです!
なんとなく知っていた煩悩の数の由来や、SF映画のように途方も無い数字など、数から仏教を見てみると、また新しい発見もあったのではないでしょうか。
他にも仏教の中にはたくさんの数字が隠されていますので、それを探して由来をたどってみるもの楽しいはずです!
写真・文=Mr.tsubaking