チャーシューを崩すと立ち上る湯気!アツアツ札幌ラーメンの秘密
『さっぽろ羅偉伝』のメニューを見ると、ラーメンは「みそ」「正油」「しお」「辛みそ」と4種類あるのだが、札幌ラーメンといえばやっぱり「みそ」! ということで今回は特のせみそ1300円を注文した。こちらはみそラーメンに、チャーシューが2枚と細切れのチャーシュー(通常は1枚と細切れがのっている)と味玉がトッピングされたものになる。
ほどなく目の前にラーメンがやってきた。分厚く切られたチャーシューで麺が見えない!その上にのせられたたっぷりのショウガとネギ。添えられたつややかなメンマに味玉。こっくりとした色のスープに、ビジュアルから期待感が高まる。
注目したいのはスープ表層に張られた油膜。スープの表面に油の層をつくることで湯気を閉じ込め、ラーメンが冷めにくくなるよう熱を保っているのだ。寒い土地で「温かくておいしい状態のまま食べてほしい」という思いで生まれたアイデアなのだという。うん、これぞ札幌ラーメンの醍醐味。
スープをひと口飲むと、広がるのはみその濃厚な味わい。豚のげんこつや豚足などをベースに、みそなどを炒めて作っているというこのスープ、強火で炒められたみそが香ばしく、しょうがの風味がしっかりと効いているためじんわり体に染みる。
そしてチャーシューの山を崩した瞬間、中から立ちのぼる湯気がたまらない! そのチャーシューの下には、しんなりしたもやしとひき肉が隠れている。このもやしがまた、スープの味が染みていてなんともいえないおいしさなのだ。
食べ応え抜群!ちぢれ麺を思いっきりすすって
ちぢれ麺を使用しているのも、札幌ラーメンの特徴のひとつ。中太でコシが強く短めの麺は、しっかりとした食べ応えで満足感がある。スープがよく絡み、すすって食べるとアツアツの麺とスープをダイレクトに感じられる。
店長の小林洋介さん曰く、「スープを熱く仕上げているため、少し固めに茹で上げ、最後まで伸びずにおいしく食べていただけるように工夫しました」とのこと。北海道の製麵所から麺を仕入れ、より本場の味に近づけているのもこだわりのポイントだそうだ。
分厚く、大きめに切られたチャーシューはボリュームがあるがあっさりとした味付けで、全体のバランスを崩さない。半熟の味玉は少し甘めの醤油味。やわらかく口の中でとろけて旨味を感じる。
食べ進めると、ショウガの存在感がどんどん増してくる。「途中で味変できるように多くのせているんです」と小林さん。スープの湯気を閉じ込めるほどの油を使っているため、途中でさっぱりと風味を変えられるようにしているそうだ。
「アツアツが売りなので、ショウガも一緒に食べてもらうことで体の芯から温まってもらえたらと思い、たっぷりのせています」
たしかに体全体が温まってきた。暑い日にあえてアツアツの一杯をいただくのもオツかもしれない。
札幌ラーメンの味を守り続けること
都内に進出していた、札幌ラーメンの名店で修業した小林さん。その店が東京から撤退するときに、味を引き継いで作ろうと思い立ち、高田馬場の全く同じ場所に店舗を構えることにしたそうだ。
「店が撤退して残念がっている人も多かったんです。僕はそのお店で働いていたので、『同じ人が同じ場所で作っているんだ』とわかりやすいかなと思って」。かつて修業していたラーメン店の味を踏襲している部分も多いため、以前の店でラーメンを食べた時の記憶がよみがえるのでは、と小林さんは考えている。
さまざまな種類のあるラーメンの中でも、小林さんが札幌ラーメンを選んだのは「一番好きなラーメンの味」だから。理由は「寒い冬に食べると一番おいしく感じる味がみそラーメンだと思うんです」。
ちなみに熱さを売りにしているラーメンだが、「暑い時季でも楽しんでほしい」と、夏場は冷やしみそラーメンも用意しているという。
寒い日に体に染みわたるスープで温まりたいとき、都内で札幌ラーメンを味わいたいと思ったときには、ぜひ小林さんこだわりのラーメンを味わってみてほしい。
取材・文・撮影=千乃あいみ