味のあるデザインの看板は、見ていて飽きない
古いアーケード商店街では、通りを歩いている人から見えるように、各店舗の壁面に垂直に看板を設置していることが多い。袖看板とか突出し看板などと呼ばれるこれらの看板に、いいデザインのものが多いのだ。
突出し看板は、店名や業種などの文字のみで構成されている場合が多い。限られたスペースに必要な情報を入れるため、ある意味仕方のないことである。しかし、その店名が書かれたフォントが味のあるものであったり、
「みかんの御用は 田丸屋みかん店」、
「和風スパゲッチ専門店 ほかほか一丁目」
などグッとくる店紹介が書かれていたりと、見ていて飽きない。もちろん狭いスペースであっても、絵が入ることもある。
まだまだ尽きない、惹かれる看板
ここまでは突出し看板について見てきた。しかしアーケードの看板はそれだけに留まらない。「屋根がある」という利点を生かし、天井部に設置されている看板も多い。商店街の数店舗を一気に紹介する看板もあれば、
一店舗ずつに分かれて設置されているものもある。
こちらも突出し看板と同様に、工夫されたデザインのものが多く見られる。
個人的に一番好きな天井系看板は、京急汐入駅近くのアーケードに設置されている理容店と喫茶室のものだ。
同じ名前なので系列店か家族経営なのだろうが、「若いセンス」「若いムード」と呼応する感じが歌詞のようで楽しい。
大規模なアーケード商店街となると、看板自体が同じデザインで統一されているものが見られる。
中にはかっぱ橋道具街のように、突出し看板がかわいらしいカッパの人形で統一されているところもある。
かわいらしさで突出しているのが、綾瀬駅東口、サン・アヤセ商店街の店名看板に設置されているからくり人形たちである。
1993年に設置されたこれらの人形は、時間になると駅入り口のメインの人形が登場し、各店舗の人形たちも合わせて踊り出すという、大変凝ったつくりになっていたようだ(※注1)。老朽化のためか現在は稼働していないようで、撤去されてしまった人形もいくつかあるが、それでも人形たちは商店街のにぎやかさに一役買っているのである。
近頃、新しく建設される店といえば大規模なテナントビルやショッピングモールが多く、昭和の時代のようなアーケード商店街は少なくなっていくかもしれない。それでも商店街の店舗、そして味わい深い看板をこれからも見られるようにと願うばかりである。
イラスト・文・写真=オギリマサホ
※注1:「あだち広報」1993年4月15日号