まずは、うずらの卵から見てみる
タマゴはタマゴでも、変則的な「うずらの卵」から話を始めよう。スーパーなどで売られているうずらの卵は、大体10個入りのプラスチック製ケースに収められており、デザインもシンプルなものがほとんどである。一方、以前訪れた市場では、なんと30個入りの紙箱が販売されていた。
この箱のデザインがレトロでかわいらしいのだ。フタを開けると、中にはうずらの卵が整然と並べられており、これはこれで標本を見るような楽しさがある。
なお市場には、以前このコラムにも紹介した「うずらの卵水煮缶」も数多く販売されており、
デザインが良いからとあれこれジャケ買いしてしまうと、家じゅうがうずらまみれになってしまうため、注意が必要だ。
では、鶏卵も見てみよう
鶏卵についても見てみたい。ニワトリのタマゴのデザインで特筆すべきなのは、生卵のパックよりも、バラ売りされているゆでタマゴである。
特に、各地の温泉で土産物として売られている温泉卵のデザインが良い。
温泉卵そのものについては、真っ黒な箱根・大涌谷の黒タマゴや、南紀白浜・鎌倉商店の「いでゆ反対タマゴ」(黄身が固まり、白身が固まっていないため、このようなネーミングとなったようだ)など、見た目や名前がユニークなものも数多くある。しかしパッケージもユニークなものが多いのだ。
鳥取砂丘の熱した砂に埋めて作られた「砂たまご」(温泉卵とは製法が異なるが、ここでは広く『観光地ゆでタマゴ』と分類したい)は、煤けたような和紙にくるまれて販売されている。
砂で蒸し焼きにしている分、水分が抜けてホクホクして美味しいのだが、パッケージも古い雑貨のようで趣きがある。
こうした「観光地ゆでタマゴ」のデザインの中で、私が最も気に入っているのが、福島・飯坂温泉のラジウム玉子である。
日本で初めてラジウムが発見された地として知られる飯坂温泉で作られた温泉卵は、その名をとってラジウム玉子と呼ばれている。
町内に数件の販売店があり、それぞれに黄身の固さや味わいなどが異なるが、どれも赤や青といったカラフルな包み紙に包まれているのが特徴だ。レトロな「ラジウム玉子」(店によってはラヂウム玉子)という字体とも相まって、とてもかわいらしい。
現在もなおタマゴの価格高騰は続いているが、タマゴまわりのデザインは、タマゴ本体とともに身近で親しみやすいものであり続けて欲しいものだと思う。
イラスト・文・写真=オギリマサホ