ユー・アンド・アイ(『華麗なるレース』1976年)
月の中を歩こう
5枚目の『華麗なるレース』は『オペラ座の夜』の次のアルバム。前作と同一路線にあり、しかし「ボヘミアン~」ほどのヒット曲がないので存在感が薄めですが、でも素晴らしいです。「タイ・ユア・マザー・ダウン」などのハードな曲に隠れて「愛のすべてを」「ロングアウェイ」「麗しのラバー・ボーイ」「ミリオネア・ワルツ」など美しい小品がきらめいています。個人的に特に好きなのはこの曲。いかにもジョンらしいストレートなラブソングですが、フレディのささやくような歌い方によくはまっています。
We’ll go walking in the moonlight
Walking in the moonlight
面倒な話は明日にして、今日は月の中を歩こうって感じの歌詞です。
BPM=135
うつろな日曜日(『オペラ座の夜』1975年)
2曲目はこれじゃなきゃね
そして2曲目はどうしてもこれ、『オペラ座の夜』の2曲目です。「月曜は仕事に行って、火曜はハネムーン、水曜日は自転車に乗って、木曜日は動物園へ、金曜はルーブルで絵を描いて、土曜日はプロポーズ、そして日曜日の午後はだらだら過ごす」……という歌詞がロシア民謡の「一週間」のようです。金属のバケツの中でヘッドフォンを再生して録音したというエピソードもキュート。次作『華麗なるレース』の「懐かしのラヴァー・ボーイ」の原型ともいえる美しき小品です。イントロがちょっとラジオ体操みたいで、ウォーキング的にもグッドでしょう。
BPM=130
ボーン・トゥ・ラブ・ユー(『メイド・イン・ヘヴン』1995年)
これはフレディのソロでは?
初出はフレディのソロ曲ですが、死後発売された『メイド・イン・ヘヴン』では、フレディの歌に他の3人による演奏が録音重ねられ、あらたにクイーン名義で再生されました。日本ではドラマの主題歌にもなり、第3次(だか5次だか)クイーンブームの火付け役。とはいえリアルタイムで聴いている身には、クイーンではなくフレディのソロのイメージが強い曲です。というか、フレディのソロといえばこの曲というか。クイーンの演奏はもちろんいいんですが、頭の雷音などやや過剰な演出も気になります。と思うのは、私がオヤジなせいでしょう。ウォーキング的にはバッチリです。
BPM=140
誘惑のロックンロール(『シアー・ハート・アタック』1974年)
アメリカツアーが題材
「ブライトン・ロック」とどっちを入れるか迷いましたが、聴きやすいこっちにします。いかにもブライアンらしい初期を代表する曲の一つ(邦題も含めて)。歌詞の中にはクイーンがアメリカツアーで前座を務めたモット・ザ・フープル(イギリスのグラムバンド)がらみのものが多く出てくるようです。なるほど、だから映画でもアメリカツアーの場面に使われてたんですね。ちなみに「クイーニィ」とはクイーンファンのことだそうです。
BPM=137
ボディ・ランゲージ(『ホット・スペース』1982年)
ビデオはやばめ
過激すぎる歌詞、そしてこのPV……。4人が分裂状態のときのシングルなので破れかぶれだったんでしょうか。でも、私はわりと好きなんです。シンセベースがうねってて(ジョンではなくフレディらしい)、ボーカルは水を得た魚、クイーン流ファンクの極致だと思います。もちろんウォーキング的にもバッチリです。でも歌詞はここに書くのは危険なので自分で調べてくださいね。
本文=133
うつろな人生(『世界に捧ぐ』1977年)
ブルージィな少年の人生
作詞作曲、歌すべてブライアン。クイーンには珍しい純度の高いブルース。下町の道ばたをねぐらにトランペットを吹いていた少年のところに、ある日突然でかいリムジンに乗った男たちがやってきて契約書にサインをさせます。壁のない部屋でペットを吹けと言われ、吹いたらたちまち最優秀レコードを受賞。大スターになったものの、やがて流行おくれといわれきづけば100万ドルの借金……で、おれはまた路上にもどってトランペットと吹いて寝てるんだよ、というお話です。ブルースですなあ。ギターソロがもうちょっと派手ならもっといいのにと思うのは私だけでしょうか。
BPM=131
カインド・オブ・マジック(『カインド・オブ・マジック』1986年)
最後のメガヒット
この曲は、いいですよねえ。アレンジもノリの良さも完璧なヒットチューン。ジョージ・ベンソンばりのブライアンのギターにも心を持っていかれます。あの映画を信じれば「ライブエイド」で再び一つになったメンバーの結束、つまり“一つの夢、一つの魂”が魔法のようだという歌詞なんでしょうが、まあとにかくいい感じです。発売当時、さすがにもうクイーンはいいやと思っていたのに、聴いた途端KOされたことをよく覚えています。そしてこれがクイーン最後のメガヒットとなりました。
BPM=131
タイ・ユア・マザー・ダウン(『華麗なるレース』1976年)
さあパワーウォーキングの始まりです
「ユー・アンド・アイ」の項でも書きましたが、『華麗なるレース』は私の愛聴盤。その1曲目がこれです。本当はこのプレイリストのトップにしようと思いましたが、ハードなのでエクササイズの要素が強すぎる気もしてこの位置に。ちょうどここから4曲、高BPMの曲が続きますので、ちょうどいいかもしれません。なんともすごいイントロから始まりますが、歌詞は「俺のことを虫扱いするおまえの母親なんで縛り付けておいて、おれと遊ぼうぜ」みたいな。若さゆえ、みたいな。そんな感じ。
BPM=135
クール・キャット(『ホット・スペース』1982年)
AORでしょ
映画では4人の仲に亀裂が入っている時期のアルバム『ホットスペース』。ですが、デヴィド・ボウイとの共演があったり、マイケル・ジャクソンの競演が入る予定だったりと、意欲的な作品だったことは間違いありません。そしてこの曲、めちゃAORです。なにがどうしてこの曲ができたのかはよく知りませんが、全編ファルセットのフレディのボーカルも、ブライアンのカッティングも、ジョンのベースラインも、どれも見事に西海岸ではないですか。そして作曲はジョン。これははまりますよ。
BPM=147
愛の結末~トゥー・マッチ・ラブ・ウィル・キル・ユー(『メイド・イン・ヘヴン』1995年)
きつい結末
この曲を入れるかどうかは迷いました。フレディの死後発売された『メイド・イン・ヘヴン』収録(その前にブライアンのソロアルバムにも収録されています)。「いろんな経験を経た男が、今苦しんでいる。サインをよまなかったから、苦しんでいる。大きすぎる愛に苦しんでいる」そんな感じの歌詞です。書いたのはブライアン。これをフレディが歌うのは、聴いててつらいものがあります。でもBPM的にはものすごいパワーウォーキング。そのギャップがなかなか。
BPM=146
ボヘミアン・ラプソディ(『オペラ座の夜』1975年)
歩けますよ。
今更私ごときが語ることは何もないのですが、一つだけ言わせてください。意外や意外、ウォーキングにぴったりなんですよこれが。計測してみると平均BPMは143。散歩というにはちょっと速めですが、ウォーキングなら問題ないでしょう。フレディが2番のバースを歌いおわるあたりまでのBPMは140、ロジャーが「ガリレオ~!」が歌うあたりは150とスピードアップしますが、ブライアンのギターが印象的なロックンロールパートからラストまではまた140。この曲はテンポがころころ変わるから散歩には不向きというイメージを勝手に持っていたのですが、そうでもない、というかむしろぴったりなのです。57にして初めて知ったよ、ママ~!
BPM=143
神々の業(『シアー・ハート・アタック』1974年』)
初期の定番ラスト
ラストはこの曲以外にあり得ません。3rd『シアー・ハート・アタック』のラストナンバーで、「伝説のチャンピオン」が出るまでは、ライブの大トリでもあった曲。原題「In the Lap of the Gods… Revisited」はいわゆる「神のみぞ知る」ですが、歌われているのはレコード会社との契約のことだとか。「お前は俺から逃げられない いや逃げられるさ おれならできる いつか自由になれるはず すべては神のみぞ知るなんていやだ」。美しく荘厳な讃美歌のようなので、この歌詞の背景を知ったときはちょっと意外でしたがやはり名曲です。ひと言で言えば「自分の道は自分で決めるぞ」ということでしょう。この次が名作4th『オペラ座の夜』。「ボヘミアン・ラプソディ」前夜の若き4人の野心を、かみしめるように歩きましょう。
BPM=132
というわけで、今回選びなおしたのはBPM130前後の速めのプレイリスト全12曲。この他に、過去に選んだもの合わせて全24曲のプレイリストとなっております。
ブレイク・フリー(自由への旅立ち/『ザ・ワークス』1984年)
アンダー・プレッシャー(シングル/クイーン&デビッド・ボウイ/1981年)
マイ・ベスト・フレンド(『オペラ座の夜』1975年)
地獄へ道づれ(『ザ・ゲーム』1980年)
恋のゆくえ(『世界に捧ぐ』1977年)
狂気への序曲(『イニュエンドゥ』1991年)
輝ける七つの海(『クイーンⅡ』1974年)
レディオガ・ガ(『ザ・ワークス』1984年)
’39(『オペラ座の夜』1975年)
ボヘミアン・ラプソディ(ライブエイド 1985年)
レディオ・ガ・ガ(ライブエイド 1985年)
なかなかボリューム。梅雨に入る前に、ご近所散歩で健康維持にお役立てください。
文=武田憲人(さんたつ編集長)