赤坂・四ッ谷の基礎知識
赤坂は、東京でも指折りの繁華街だが、外堀通りの東側、日枝神社周辺は、背後に官庁街が広がっていることもあり、落ち着いた街並みになっている。清水谷公園がある一帯は紀尾井町。紀州家、尾張家、井伊家の中屋敷があったことが名の由来だ。紀尾井坂を上れば四谷見附の石垣も残り、歴史を感じる。『赤坂離宮迎賓館』は外国からの要人を迎えるところだが、見学できるのでぜひ訪ねたい。ネオ・バロック様式の宮殿建築や館内の華麗な装飾には言葉を失う。『東海道四谷怪談』ゆかりの寺社がある四谷寺町は、入り組んだ路地と坂の街。『消防博物館』や『新宿歴史博物館』も実物展示が多く見ごたえがある。
1 日枝神社
城内鎮守の社として崇敬される
文明10年(1478)、江戸城築城の際に太田道灌が川越山王社を勧請したのが始まりとされる。徳川家康の江戸移封以来、徳川家からも崇敬された。6月に行われる山王祭は江戸三大祭の一つ。
2 清水谷公園
大久保利通が暗殺された地
江戸時代には紀伊家と井伊家の屋敷境となる谷にあり、紀伊家の屋敷内に清水が湧き出ていたことが名の由来。大久保利通が暗殺された地であり、公園内に大久保公哀悼碑が立つ。
3 迎賓館赤坂離宮
国宝指定の宮殿建築物
ネオ・バロック様式の本館は明治42年(1909)に東宮御所として建てられたもの。庭園、本館、和風別館が見学できる。
4 西念寺
伊賀忍者・服部半蔵の墓所がある
徳川家康の長子・信康を供養するため、家康の家臣であり、伊賀忍者であった服部半蔵が、文禄3年(1594)に麹町に建てた庵が始まり。半蔵は槍の名手でもあり、数々の手柄を立てたことから、家康より槍を拝領した。この槍は寺宝として伝わっている。本堂裏に信康の供養塔、墓地に半蔵の墓がある。
5 須賀神社
社殿を飾る三十六歌仙絵が見事
四谷十八ヵ町の鎮守で、地元では6月の例祭・天王祭にちなんで「天王様」と呼ばれる。石段の参道はアニメ映画『君の名は。』の舞台でもあり、今なお多くのファンが訪れている。
6 陽運寺
お岩様ゆかりの寺
かつてこの地に、『東海道四谷怪談』に登場するお岩様の霊堂があったが、戦災で焼失したため栃木県沼和田から薬師堂を移築し、寺を再建。境内にお岩さんゆかりの井戸がある。
7 四谷於岩稲荷田宮神社
『四谷怪談』のお岩さんを祀る
主人の田宮伊右衛門に討たれ、非業の死を遂げたお岩が幽霊となって現れ復讐を果たす『東海道四谷怪談』の舞台。田宮家の屋敷跡にお岩さんを弔うために建てた社が神社の始まり。
8 消防博物館
実物資料で消防の歴史を知る
消防関係の資料約8000点を所蔵。江戸時代の町火消しの活動、明治から昭和初期にかけての消防装備、大正から平成にかけての消防自動車など、実物資料が多く、見ごたえがある。
9 新宿歴史博物館
知らなかった新宿がここにある
石器時代の石造物や江戸時代の内藤新宿の様子、さらに昭和の文化住宅を実物大で再現したコーナーや東京市電5000形のレプリカなど、新宿の歴史を多面的に振り返る。
【街探検】都心とは思えない四谷寺町
点在する寺社を結ぶ坂道と路地。趣のある寺町散歩
西に外苑東通り、北に新宿通りに囲まれた新宿区須賀町と若葉2丁目あたりは、約25軒の寺社が点在する寺町となっている。寛永年間(1624〜44)、江戸城外濠の造成工事のため、当時、麹町周辺にあった寺社が、四谷に移転させられたからだという。
このあたりは台地と谷地が入り組んだすり鉢状の地形のため坂道が多く、崖地もあちこちで見られる。東福院坂、戒行寺坂、観音坂など、坂の名も寺社にちなむものが多い。
服部半蔵ゆかりの西念寺は、蓮乗院、信寿院、真成院などに囲まれている。このあたりは、寺に寄り添うように住宅が立ち並ぶ住宅地でもあり、迷路のように路地が入り組む。
アニメ映画『君の名は。』の聖地でもある須賀神社から、四谷於岩稲荷田宮神社にかけても寺社が点在している。車の騒音に煩わされることが少ない静かな街並みで、恰好の散歩道といえる。
取材・文・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より