その日の気候でレシピを考える?『玄関食堂』
手抜き料理研究家の肩書を持つ葉月しのママ。例えばマグロとホタテの柚子胡椒オリーブオイル和えは柚子の香りとホタテの甘み、海苔の磯の風味が混然一体となり、手抜きとは思えないほど旨い。「例えば1万円のコースで食べておいしかったものを、安く提供するには何を省略するかのアイデア料理なんです」。絶品料理に加え、おちゃめなママと常連陣のおもしろトークも絶妙な酒肴に!
『玄関食堂』店舗詳細
日本酒好きの店主が迎える。『吟之介』
店主の前田誠司さんは埼玉の花陽浴(はなあ)びが有名になる前から店で扱うなど、大の日本酒好き。「自然と日本酒に合うものが増えた」という肴は、カキの昆布焼なら鮮烈な磯の旨味のハーモニーが、燗映えするお酒と抜群に合う。水分の少ない特別なジャガイモを使うポテサラ550円は甘み濃厚で、フレッシュな日本酒が進みそう。お酒のチョイスに悩んだら、一見寡黙だが 実は話好きの店主に尋ねるべし!
『吟之介』店舗詳細
名物は串煮込み、店の魂は味噌スープ。『ささよし 』
名物串煮込みは、信州味噌と水とモツしか使っていないのに、スープに深みが。「新鮮なシロモツを 弱火で1日煮込むから、この味が出るんです」と店主の渡邊崇(たかし)さん。注文後に煮込むキャベツはスープの旨味をしっかり吸い、鍋にチャポンと浸してから焼く豚カルビやトマト巻きは味噌スープ効果でほんのりまろやかに。この味噌風味が、キンミヤを赤ワインで割った濃い葡萄(ぶどう)割りを加速させるのだ。
『ささよし』店舗詳細
魚マスターの舵取りに身をゆだね、ほろ酔う『魚と酒 まる孝』
店主の石井孝児さんは、両親が寿司屋で幼少期から魚を見て育ったというのだから、魚への目利きは折り紙付き。「新鮮な魚、珍しい魚を味わってほしい。常連客はそれを期待し、メニューも見ずに『今日は何がある?』って聞いてくれます」。春はアンコウを刺し身で出す日もあれば、ワカメしゃぶしゃぶというレアメニューも。かつお出汁でしゃぶしゃぶして頬張れば鮮烈な海の香りが広がり、地酒が進んで仕方なし。すみません、「阿部勘熱燗」おかわりで!
『魚と酒 まる孝』店舗詳細
ホームから見える燗酒のオアシス『ひねもす』
「燗酒に合わせることだけを考えて」献立を考える店主・雨宮謙二さん。「料理に合わせて経験と好みで」銘柄と温度を探る明日香さん。ならば、二人にすべてを委ねようではないか。和食のみならず、タイのハーブ・バイマックル入り卵焼き、純米酒を使った南仏料理も登場。それぞれに、燗で甘酸っぱさが広がるうす濁りや、肉の脂をさらりと撫でる純米原酒が供される。作家ものや骨董の酒器も楽しみで、燗酒のごとく心身も、ふわっ。
『ひねもす』店舗詳細
店主の気合と人情味が渦巻く『三鷹のやまちゃん 本店』
「なんやここ、怪しいな」と引かれ、八丁(三鷹駅北口にある袋小路の横丁。両パンダもここにある。)の『千鳥』に通っていた店主・山本研二さん。徳島の仕出し屋に生まれ、自衛隊の料理班、ジャマイカの日本料理店などを経て、その路地に着地した。「世界へ羽ばたくぞ」と“本店”を掲げ、72時間連続営業や流しそうめん大会など奇想天外なイベントを連打する一方、スダチ、地酒、家族の名をつけたメニューに故郷への愛を表現している。常連の年齢幅は広く「全席シルバーシートのときもあるよ」。
『三鷹のやまちゃん 本店』店舗詳細
八丁に異なるキャラの“パンダ”2店『万歳パンダ+孫ぱんだDX』
「家庭料理を日本のワインで」と、華やかな笑顔のモモちゃんこと屋良弓枝さんが迎えてくれる『万歳パンダ』。割烹着にソムリエバッジを着けてテキパキと働く姿は界隈の看板で、ふわっと胸中を包み込む、しなやかな接客が魅惑的。斜め前に開店した『孫ぱんだDX』は、夜が更けるほど盛り上がる。店長・アッさんのニヒルな雰囲気が、狭小店内を弾ませたり、和ませたり。真逆のオーラを発するこの姉妹店、料理の相互出前もできるのだ。
『万歳パンダ』『孫ぱんだDX』店舗詳細
酒飲みの気持ちに寄り添い37年『婆娑羅』
大きなコの字の中で、この道40年になる店主・大澤伸雄さんと若者スタッフが、個々の持ち場を淡々とこなす。その風景を眺めるともなしに、囲むお客が酒をちびちび。基本、放っておいてくれるので、静かに憩うには最適なのだ。肴はいたってシンプル。だが、手間隙をかけるのは大前提で、お通しの出汁、自家製ポン酢は飲み干せてしまう。「お客さんが店の雰囲気を醸してくれる」と、大澤さん。流れる音楽も渋い、ご当地大御所だ。
『婆娑羅』店舗詳細
凍らせるジョッキと安さが自慢『誠一郎本舗』
「ギョーザと唐揚げの店です」と明記した名刺。なぜ両方?の質問に、店主・井上修さんは、「この2つ、嫌いな人いないでしょ」。一見頑固そうな顔を緩ませた。唐揚げは、若鶏モモ肉の皮や脂肪を徹底的に掃除して、ふわっと柔らかい唐揚げに。仕上げにゴマ油を振る上品な餃子は、三鷹産キャベツを使うことも。開業時、吟味して選んだ生はモルツ。「脂をスッと切る感じが良かった」という。ジョッキは凍らせる派で、専用冷凍庫で出番待ち。
『誠一郎本舗』店舗詳細
味わい深〜いビールに寄り添う焼き鳥『焼鳥 山もと』
まるで寿司屋の握りのように、客の食べる呼吸を見ながら、一つひとつ焼き鳥が目の前に差し出される。熱々をいただくと、肉汁がこぼれんばかりに口に広がった。土佐の備長炭で焼き上げられた肉厚な大山鶏は、端正な旨味があり脂もおいしい。「焼き上がったらすぐに!食べてほしい」と店主の山本洪太さんは穏やかに笑った。合わせたいビールは、グビグビと喉越しを楽しむだけではなく、じっくりと味わって飲みたくなる銘柄が中心。志賀高原ビールや湘南ビールなど、焼き鳥の旨味と脂にしっかり寄り添う6タップを揃えている。
『焼鳥 山もと』店舗詳細
取材・文=佐藤さゆり、松井一恵(teamまめ)、鈴木健太、山内聖子 撮影=オカダタカオ、小野広幸、金井塚太郎、高野尚人、丸毛 透、本野克佳