一緒に歩くのは……石川 勝さん
不動産専門家集団の「東京カンテイ」でマンションの評価・調査を担当する、不動産鑑定士。中古マンションに特化した評価方法で複数の特許を取得! 街歩きとともにおすすめマンションを巡る企画を行う、マンションさんぽの達人でもある。「東京カンテイマンションライブラリ」内ではブログ「今週のチラ見物件」を連載、駅で待ち合わせて周辺環境を紹介しながらマンションまで案内するというバーチャルな体験をWEB上で展開している。「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 基礎編」「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 実践編」を監修・執筆。

ビルの谷間で感じる暮らしの匂い

恵比寿駅を出ると、渋谷と一駅しか違わないのに、随分雰囲気が違う。喧噪よりも落ち着きを感じ、街行く人もどこかオトナだ。

駅前には「えびすストア」があり、鮮魚店や八百屋が連なる昔ながらのアーケードのような佇まい。駅前の信号を渡り、少し西側へ行けば、なんと青果の無人販売まである。「お金を自分で計算して、お金入れに入れて下さいネ」という性善説MAXの文字に、心ほころぶ。所々でこういう暮らしの匂いを感じられるから、恵比寿に住みたいと憧れる人も多いのだろう。

50年以上の歴史をもつ「えびすストア」。鮮魚店や八百屋だけでなく、奥に弁当屋やバインミーの店もある。
恵比寿駅徒歩すぐの路地裏で野菜や果物を無人販売する「ともちゃんの畑」。低農薬や有機栽培の青果も!
恵比寿地区の産土(うぶすな)の神、恵比寿神社。10月19・20日にはべったら市も開催される。

恵比寿神社を北に進むと、フレンチの名店の『モナリザ』が見えてくる。この地で23年、東京のフレンチをけん引してきた河野透シェフの店だ。

「23年この店をやっているけど、季節ごとに料理を変えているし、これまではコースを4種も出していたから(現在は2種)、手がけた料理は数千種になるんじゃないかな」。

スペシャリテのトマトのロザス仕立ては、トマトの甘みと爽やかさ、カニ肉のうまみが広がった後、ほんのりカレーの風味が余韻を残す。こういう「ハレの日」使いできる店が近所にある人はうらやましい。

『モナリザ』の1万1000円のディナーコース(サービス料10%別)の二品の一例。牛フィレ肉のロッシーニ(1650円追加料金)とトマトのロザス仕立て。
壁紙専門店『WALPA STORE TOKYO』などが一階に入っている「シャルマンコーポ恵比寿」。

さらに北に向かい代官山方面へ。並木道に面して立っているマンションが「シャルマンコーポ恵比寿」だ。「歩道がきれいに整備された並木道に広い間口が面していて、一階にしゃれた雑貨店や飲食店などがいくつも入っています。何だか帰ってくるだけでウキウキさせてくれて、まさに恵比寿のイメージを感じさせるマンションですね。恵比寿駅からはフラットな地勢ですが、ちょうど代官山から降りてくる坂を背に建っています。何気ない坂ですが、恵比寿の華やかさと、代官山の落ち着いた空気が混ざり合って情緒を感じさせてくれます」と石川さん。

「『メゾン代官山』のエントランスは地階に下るように配置し、階段回りを植栽や花木で彩ることで花壇のような役割を与えています」と石川さん。

同じく代官山方面から下ってくる坂の下、恵比寿西二丁目あるのが「メゾン代官山」。「敷地の高低差をうまく設計で個性的なデザインに昇華しているマンションです。重厚感のある落ち着いたレンガタイルに、植栽の緑や、花壇の明るい色のコントラストが鮮やかに映えていますね」。

代官山らしい瀟洒なヴィンテージマンション発見

シャルマンコーポ恵比寿」から坂を上ると、閑静な住宅街の雰囲気に。代官山は地名の通り、山状の地形になっていて起伏が多いのも特徴。生活道具のそろう『Allegory HomeTools 代官山本店』は、その坂を上った先にある。

右下から時計回りに『Allegory HomeTools』の冠急須6930円、一輪挿し528円、耐熱陶器のフライパン2750円、燕三条の銅タンブラー3300円。

マグカップは1000円ぐらいからあり、気軽に買いやすい。代表の大館聡史さんいわく「代官山にも、かっぱ橋にあるような購入しやすい価格帯の生活雑貨の店があったらいいなと思って。代官山は意外と生活感があり、地元の人の代官山愛が深いと思います」。犬の散歩をしている地元の人が、店に入らず外から「あれとあれちょうだい」と買ってくれることもあるそう。

『Allegory HomeTools』が入っているマンションが『代官山風の館』だ。「“風の館”という名前の通り、欧風の詩的な外観がひと際目を引くマンションですね」と石川さん。

『代官山風の館』は、シャモットタイル仕上げの外壁や中庭空間を設けた階段状の構成、屋根中央にそびえる尖塔が、まるで絵画のよう。
特に注目したいのは、エントランスに飾られたマンション名が刻まれた銅製プレート。「ここまでアートなプレートは見たことがありません」

東横線を歩道橋で超え、代官山駅に着くと、グーンとそびえる「代官山アドレス」が!

「地上36階建の『ザ・タワー』など約500戸の集合住宅、洗練されたショッピングゾーン『ディセ』、公共施設『渋谷区代官山スポーツプラザ』などから構成される都市型複合施設ですね。人でにぎわう商業施設と一体ながら、オープン空間を多く設けて空間の広さを感じさせています。どこから見ても“絵になる”構図で、よくドラマのロケで使われるのも納得です」

2000年に完成した代官山のランドマーク「代官山アドレス」。

「ここはもともと『同潤会代官山アパート』の跡地で、このアパートも味のある歴史的な建築物だったんですよ。ところどころ外壁に、同潤会代官山アパートの写真が掲げられているので探してみましょう」と石川さん。

「代官山アドレス」の通路に、アパートの昔の写真が展示されていた。
『Tempura Motoyoshi いも』は「代官山アドレス」の真ん前で開店。90時間熟成させた糖度の高い芋を揚げた芋天がのる、塩そふと丸十650円。

代官山の地下から文化を発信するのが、イベントスペース『晴れたら空に豆まいて』。ジャズから落語、浪曲に無声映画、トークショーまで、ライブのジャンルはいい意味でごちゃ混ぜだ。代表の松崎さんに聞くと「そちらの方が表現者同士で有機的につながることができ、いろんなコラボが生まれて楽しいんです。わりとアングラなこともやっているけど、“グロい”イメージにはならないのは代官山という街にあるからでは」。

「配信ライブは、いいアーティストを気軽に知ってもらうチャンスでもある」と『晴れたら空に豆まいて』の松崎信太郎さん。

「晴れ豆」から西へ歩くと、すぐにヒルサイドテラスのある旧山手通りへ出る。通りの北側に広がるのが閑静な住宅地の猿楽町。石川さんによると、低層の高級マンションが多い場所だ。

周囲の中でも標高が高い、いわゆる「ヒルトップ」で、開放感のある立地の「代官山シティハウス」。

「『代官山シティハウス』はまさにそう。エントランスの向こう側には大理石調の床があり、大きな開口から中庭を望むラウンジスペースも併設しています」と石川さん。

「築年数は経っていますが、大理石調の床や、木製の共同郵便受けなど、備えられているものがモダンレトロの風格を感じますね」

代官山のファッショナブルなイメージの象徴「ヒルサイドテラス」。
「ヒルサイドテラス」の敷地内には6~7世紀に造られた古墳、猿楽塚が現存。猿楽町の町名はこの塚が由来。

歴史と文化の奥に、和みスポット

旧山手通りを西側にそれ、目切坂を下る。坂の途中には東京音楽大学があり、キャンパス内にはDEAN & DELUCAが。学生以外の一般の人も利用できるようで、窓際の大きなソファー席でくつろぐ親子が印象的だった。

かつて、坂の上で石臼の目を切る仕事をしていた人がいたことから、その名がついたとされる目切坂。この先に東京音楽大学。
冬の快晴時は富士山も遠望できる西郷山公園。地元の人たちの憩いの場。

そこから10分ほど歩き、西郷山公園に到着。芝生の広場からは、中目黒の街並みを一望できる。レジャーシートを敷いた地元の人が日向ぼっこしているのを見て、自分も芝生にゴロン。おしゃれだけではない代官山がたくさんあるんだな……この日はレザーのシューズで歩いたけれど、次はサンダルで散策してみようと思う。

マンションライブラリ
【恵比寿~代官山編】たまに訪れるだけではもったいない!非日常と日常の良いとこどり。この街のマンションに住むってどんな人?

紹介したお店の詳細

住所:東京都渋谷区恵比寿西1-14-4 シティー・ホームズ恵比寿1F/営業時間:11:30~14:00LO・ディナー17:30~21:00LO/定休日:水/アクセス:JR・地下鉄日比谷線恵比寿駅から徒歩2分
住所:東京都渋谷区恵比寿西1-32-29-102/営業時間:12:00~19:00/定休日:無(年末年始のみ不定休)/アクセス:東急東横線代官山駅から徒歩3分
住所:東京都渋谷区代官山町20-6/営業時間:12:00~16:30/定休日:不定休(主に月休)/アクセス:東急東横線代官山駅から徒歩1分
住所:東京都渋谷区代官山町20-20 モンシェリー代官山B2F/営業時間:公演により営業時間は変動(ライブ配信も不定期開催)/アクセス:東急東横線代官山駅から徒歩1分

紹介したマンションの詳細

シャルマンコーポ恵比寿
東京都渋谷区恵比寿西1-17-2
メゾン代官山
東京都渋谷区恵比寿西2‐11‐25
代官山風の館
東京都渋谷区恵比寿西1-32-29
代官山アドレス
東京都渋谷区代官山町17-1-5
代官山シティハウス
東京都渋谷区猿楽町15-9

*残りの5軒については、マンションライブラリをご覧ください。

取材・文・撮影=鈴木健太