ビルの谷間で感じる暮らしの匂い
恵比寿駅を出ると、渋谷と一駅しか違わないのに、随分雰囲気が違う。喧噪よりも落ち着きを感じ、街行く人もどこかオトナだ。
駅前には「えびすストア」があり、鮮魚店や八百屋が連なる昔ながらのアーケードのような佇まい。駅前の信号を渡り、少し西側へ行けば、なんと青果の無人販売まである。「お金を自分で計算して、お金入れに入れて下さいネ」という性善説MAXの文字に、心ほころぶ。所々でこういう暮らしの匂いを感じられるから、恵比寿に住みたいと憧れる人も多いのだろう。
恵比寿神社を北に進むと、フレンチの名店の『モナリザ』が見えてくる。この地で23年、東京のフレンチをけん引してきた河野透シェフの店だ。
「23年この店をやっているけど、季節ごとに料理を変えているし、これまではコースを4種も出していたから(現在は2種)、手がけた料理は数千種になるんじゃないかな」。
スペシャリテのトマトのロザス仕立ては、トマトの甘みと爽やかさ、カニ肉のうまみが広がった後、ほんのりカレーの風味が余韻を残す。こういう「ハレの日」使いできる店が近所にある人はうらやましい。
さらに北に向かい代官山方面へ。並木道に面して立っているマンションが「シャルマンコーポ恵比寿」だ。「歩道がきれいに整備された並木道に広い間口が面していて、一階にしゃれた雑貨店や飲食店などがいくつも入っています。何だか帰ってくるだけでウキウキさせてくれて、まさに恵比寿のイメージを感じさせるマンションですね。恵比寿駅からはフラットな地勢ですが、ちょうど代官山から降りてくる坂を背に建っています。何気ない坂ですが、恵比寿の華やかさと、代官山の落ち着いた空気が混ざり合って情緒を感じさせてくれます」と石川さん。
同じく代官山方面から下ってくる坂の下、恵比寿西二丁目あるのが「メゾン代官山」。「敷地の高低差をうまく設計で個性的なデザインに昇華しているマンションです。重厚感のある落ち着いたレンガタイルに、植栽の緑や、花壇の明るい色のコントラストが鮮やかに映えていますね」。
代官山らしい瀟洒なヴィンテージマンション発見
「シャルマンコーポ恵比寿」から坂を上ると、閑静な住宅街の雰囲気に。代官山は地名の通り、山状の地形になっていて起伏が多いのも特徴。生活道具のそろう『Allegory HomeTools 代官山本店』は、その坂を上った先にある。
マグカップは1000円ぐらいからあり、気軽に買いやすい。代表の大館聡史さんいわく「代官山にも、かっぱ橋にあるような購入しやすい価格帯の生活雑貨の店があったらいいなと思って。代官山は意外と生活感があり、地元の人の代官山愛が深いと思います」。犬の散歩をしている地元の人が、店に入らず外から「あれとあれちょうだい」と買ってくれることもあるそう。
『Allegory HomeTools』が入っているマンションが『代官山風の館』だ。「“風の館”という名前の通り、欧風の詩的な外観がひと際目を引くマンションですね」と石川さん。
東横線を歩道橋で超え、代官山駅に着くと、グーンとそびえる「代官山アドレス」が!
「地上36階建の『ザ・タワー』など約500戸の集合住宅、洗練されたショッピングゾーン『ディセ』、公共施設『渋谷区代官山スポーツプラザ』などから構成される都市型複合施設ですね。人でにぎわう商業施設と一体ながら、オープン空間を多く設けて空間の広さを感じさせています。どこから見ても“絵になる”構図で、よくドラマのロケで使われるのも納得です」
「ここはもともと『同潤会代官山アパート』の跡地で、このアパートも味のある歴史的な建築物だったんですよ。ところどころ外壁に、同潤会代官山アパートの写真が掲げられているので探してみましょう」と石川さん。
代官山の地下から文化を発信するのが、イベントスペース『晴れたら空に豆まいて』。ジャズから落語、浪曲に無声映画、トークショーまで、ライブのジャンルはいい意味でごちゃ混ぜだ。代表の松崎さんに聞くと「そちらの方が表現者同士で有機的につながることができ、いろんなコラボが生まれて楽しいんです。わりとアングラなこともやっているけど、“グロい”イメージにはならないのは代官山という街にあるからでは」。
「晴れ豆」から西へ歩くと、すぐにヒルサイドテラスのある旧山手通りへ出る。通りの北側に広がるのが閑静な住宅地の猿楽町。石川さんによると、低層の高級マンションが多い場所だ。
「『代官山シティハウス』はまさにそう。エントランスの向こう側には大理石調の床があり、大きな開口から中庭を望むラウンジスペースも併設しています」と石川さん。
「築年数は経っていますが、大理石調の床や、木製の共同郵便受けなど、備えられているものがモダンレトロの風格を感じますね」
歴史と文化の奥に、和みスポット
旧山手通りを西側にそれ、目切坂を下る。坂の途中には東京音楽大学があり、キャンパス内にはDEAN & DELUCAが。学生以外の一般の人も利用できるようで、窓際の大きなソファー席でくつろぐ親子が印象的だった。
そこから10分ほど歩き、西郷山公園に到着。芝生の広場からは、中目黒の街並みを一望できる。レジャーシートを敷いた地元の人が日向ぼっこしているのを見て、自分も芝生にゴロン。おしゃれだけではない代官山がたくさんあるんだな……この日はレザーのシューズで歩いたけれど、次はサンダルで散策してみようと思う。
紹介したお店の詳細
紹介したマンションの詳細
*残りの5軒については、マンションライブラリをご覧ください。
取材・文・撮影=鈴木健太