一緒に歩くのは……石川 勝さん
不動産専門家集団の「東京カンテイ」でマンションの評価・調査を担当する、不動産鑑定士。中古マンションに特化した評価方法で複数の特許を取得! 街歩きとともにおすすめマンションを巡る企画を行う、マンションさんぽの達人でもある。「東京カンテイマンションライブラリ」内ではブログ「今週のチラ見物件」を連載、駅で待ち合わせて周辺環境を紹介しながらマンションまで案内するというバーチャルな体験をWEB上で展開している。「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 基礎編」「選ぶまえに知っておきたいマンションの常識 実践編」を監修・執筆。

緑がまぶしい武蔵野の住宅街

JR阿佐ケ谷駅を出ると、高さ30mはあろうかというメタセコイア(アケボノスギ)を見上げる。

「さすが杉並区」

生命力あふれる大木に元気をもらって、駅周辺を歩きはじめた。この駅前ロータリーが象徴するように、阿佐ケ谷を歩くと、樹々がつくる印象的な風景に出会える。

例えば、フレンチレストランと小劇場を併設する映画館『ラピュタ阿佐ヶ谷』。駅前の繁華街を20mほど外れると、森に眠る古代遺跡のような館があらわれる。

住宅街に異彩を放つ建築は、縄文杉の切り株をモチーフにつくられた。ガリバー旅行記に登場する空飛ぶ島「ラピュータ王国」をイメージしたという(ジブリ映画の『天空の城ラピュタ』ではなく)。

作品のラインナップは支配人の石井紫さんが編成し、昭和30~40年代の日本映画を中心に上映。戦後の黄金期にうまれた名作を楽しみに、遠方からも映画ファンが通う。

阿佐ヶ谷神明宮、世尊院と、駅近に比較的大きな寺社があることも、阿佐ケ谷ライフのポイントだ。通勤や通学の行き帰り、お参りがてら緑豊かな境内を散歩し、気分を新たに仕事や学業に打ち込めそうだ。

さらに住宅街へ分け入れば、「弁天さん」と地元で親しまれる阿佐ヶ谷弁天社。堂々たるケヤキの御神木が迎えてくれる。
「ライオンズマンション阿佐ヶ谷」。

祠のすぐ裏手には「ライオンズマンション阿佐ヶ谷」。「ライオンズマンション特有のレンガタイルが、落ち着いた印象ですよね」と石川さん。

静かな住宅街で名店に出会う

ラピュタ阿佐ヶ谷』や阿佐ヶ谷弁天社がある阿佐ヶ谷駅北側は、石川さんいわく「低層の戸建住宅が立ち並ぶエリアで、閑静な住環境が特徴」。マンションも目立った高層建築はなく、景観に調和している印象だ。

こちらは、重厚感ある外観が目をひく「コスモ阿佐ヶ谷ロイヤルフォルム」。「敷地は南側の間口が広く、住戸はワイドスパンの開口を持ち採光に恵まれています」と石川さん。

阿佐ケ谷駅から徒歩4分、7階建ての「コスモ阿佐ヶ谷ロイヤルフォルム」。

このあたりに住むと生活圏になるのが、松山通り商店街。年に数回、露店や大道芸でにぎわう「ゆうやけ市」が開催されている。

そこでぜひ通いたいのが、『Gelateria SINCERITA』だ。国際コンテストで3位に輝いた本格派のジェラート店は、常時17種類をそろえ、一部の定番を除き大半を1〜2カ月で入れ替える。

コンテンストに出品した「メルノワ」(手前)は、荻窪のはちみつ専門店『ラベイユ』のフランス産「森のはちみつ」を使ったミルクジェラートに、香ばしいクルミが散りばめられている。

「それしかやることがないし、ジェラートをつくるのが好きなので……」と微笑む店主の中井洋輔さん。新作づくりは素材が命だが、ひたすらジェラートを突き詰める中井さんには自然と素敵な出会いが訪れるようで、ファンから生産者を紹介されたり、素材を持ち込んでくれる生産者もいたりする。

毎月の新作発売を楽しみに待とう。

広々としたキッチンで試行錯誤が繰り返され、数々の名作がうまれてきた。ジェラートを通して四季を感じるのもオツなものだ。

これぞ阿佐ケ谷の台所!

また、阿佐ケ谷での暮らしをイメージするなら「阿佐谷パールセンター」は外せない。JR阿佐ケ谷駅から地下鉄南阿佐ケ谷駅周辺まで、約700mのアーケード商店街だ。

阿佐ケ谷駅南口の目の前にアーケードの入口が。雨の日でも安心して買い物も散歩も楽しめる。
昭和29年にはじまった阿佐谷七夕祭(毎年8月開催。2020年は新型コロナウイルスの影響で中止)では、迫力のハリボテでアーケードが彩られる。

昭和11年創業、『蒲重かまぼこ店』の三代目・太田泰司さんは「阿佐ケ谷は、パールセンターを中心にした住商一体の街です」と話す。食料品や日用品は何でもそろうし、飲食店も充実しており、このあたりに住めばかなりの頻度で通うことになるだろう。

『蒲重かまぼこ店』のように、手づくりのお総菜が気軽に買える店があるのもありがたい。戦前から愛されるさつま揚げを一枚いただいて、商店街を食べ歩きするのも一興だ。

自慢のさつま揚げをはじめ、揚げ物などの総菜が豊富。できたてが次々と店頭に並ぶ。

本当に住みやすい街

パールセンターの南側を抜けると、地下鉄南阿佐ケ谷駅はすぐそこ。

「JR阿佐ケ谷駅と地下鉄南阿佐ヶ谷駅は、並行するメイン道路と商店街によって繋がっていることもあり、同一商圏と言えます」と石川さん。「ただ、南阿佐ケ谷駅周辺の方がより“住まいの入り口”としての役割が大きいかもしれませんね。阿佐ケ谷駅付近には、両隣の高円寺・荻窪の色合いもあり中央線独特のサブカル色が見られるのに対し、こちらは杉並区役所や警察署・税務署などの公共施設が集まるほか、南側の背後地は緑地・公園に囲まれて空が広く感じられ、住む環境として恵まれていると思います」。

クリオレミントンハウス阿佐ヶ谷」は再開発でうまれた、全167戸+17店舗の都市型マンションだ。石川さんいわく、「このエリアではめずらしい高級仕様で、特にエントランスホールは西欧のホテルのよう。フロントサービスが用意されていて、ラウンジやクラブハウス、コミュニティハウス、託児所など施設が充実しています」。

高さの異なる4棟がコートハウス風(中庭を中心に四辺に中層建物を配置する建築方式)に配置される。「街のざわめきは建物によって遮断され、内側には静寂の落ち着きが漂っています(石川さん)」。

南阿佐ケ谷駅から10分弱歩けば、蛇行しながら流れる善福寺川。武蔵野の面影を残す川沿いの遊歩道は、散策にもジョギングにも絶好のコースだ。

春は桜、秋は紅葉が美しい善福寺川緑地。

善福寺川緑地に隣接して、「プラウドシティ阿佐ヶ谷」が広がる。旧・阿佐ヶ谷住宅の跡地に建て替えられた、7棟の再開発マンションだ。

「『プラウドシティ阿佐ヶ谷』は、緑と人々の交流が大切にされた旧・阿佐ヶ谷住宅を継承しています。かつて敷地内に植えられていた樹木も、できるだけ移植する努力がなされました。約4400本の樹木による3つの森と約2600㎡の面積を誇るグランドガーデンを含む4つの中庭、そして提供公園を抱く緑豊かなランドスケープを描きます」と石川さん。

旧・阿佐ヶ谷住宅を設計した津端修一氏は、単に建物を建てるだけでなく、都市計画にも目を向ける建築家だったそう。住民のコミュニケーションをうみだす設計思想は、「プラウドシティ阿佐ヶ谷」にも受け継がれている。

「ゲストルームや本格的なキッチンスタジオを備え、宿泊やパーティに利用できます。ラウンジや集会室、キッズスペースなどが住民の交流の場として活用されています(石川さん)」。

個性派飲食店がきらめく夜の繁華街へ

夜の散歩は、再び阿佐ケ谷駅方面へ。阿佐ケ谷駅は開業からおよそ100年(1922年開業)経つだけあって、駅前繁華街の歴史は古く、充実している。南口から徒歩1分の「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」に我が家があれば、心置きなくハシゴ酒が楽しめそうだ。

南口ロータリーの一角にある好立地の大型マンション「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」。
30mほどの路地に人気の飲食店が並ぶ「いちょう横丁」。

「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」からほど近い「いちょう横丁」には、ミシュランガイドでピブグルマンに選出された『餃子坊 豚八戒』がある。予約必須の人気店だが、現在テイクアウトを提供中(予告なく終了する場合あり)なので、手軽に名店の味を堪能するチャンスだ。

看板メニューの華餃子(羽根付焼餃子)580円。ハルビン出身のマダムがつくる本格派だ。

線路を挟んだ北口の線路沿いは、約150もの小さなお店が軒を連ねる「阿佐ヶ谷スターロード商店街」。戦後に闇市や飲み屋がならんだエリアで、渋いムードの路地に迷い込むのも味わい深い。

「スターロード」の名にふさわしく、キラ星のような飲食店が散りばめられている

こうして線路沿いの繁華街を歩いていると、シャレの効いた店名、大胆な壁画に目を疑うような激安店など、強烈な個性が伝わってくる。近くのマンションに住んで毎日通っても、気になるお店をすべてまわるには、何ヶ月も必要だ。毎日ワクワクした気持ちで、夜を迎えられるに違いない。

マンションライブラリ
【阿佐ヶ谷~南阿佐ヶ谷編】私に「ちょうど良い」感じ!?ケヤキ並木と商店街が特徴的なこの街のマンションの住み心地とは?

紹介したお店の詳細

住所:東京都杉並区阿佐谷北2-12−21/営業時間:上映時間により異なる/定休日:無/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩2分
住所:東京都杉並区阿佐谷北1-43-7/営業時間:11:00〜20:00/定休日:無/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩7分
住所:東京都杉並区阿佐谷南1-47-10/営業時間:9:00〜19:30/定休日:水/アクセス:JR中央線阿佐ケ谷駅から徒歩2分
住所:東京都杉並区阿佐谷南3-37-5/営業時間:16:00~20:00/定休日:日・月

紹介したマンションの詳細

ライオンズマンション阿佐ヶ谷
東京都杉並区阿佐谷北1-8-22
コスモ阿佐ヶ谷ロイヤルフォルム
東京都杉並区阿佐谷北2-36-4
クリオレミントンハウス阿佐ヶ谷
東京都杉並区阿佐谷南1-12-5
プラウドシティ阿佐ヶ谷
東京都杉並区成田東4-3-1
パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス
東京都杉並区阿佐谷南3-35-8

*残りの5軒については、マンションライブラリをご覧ください。

取材・文・撮影=小越建典