活気と熱気に満ちた本場所中とはまた違う、穏やかな雰囲気
大相撲の本場所が開催される聖地『両国国技館』。相撲に興味がない人でもその存在は知っているはず。両国駅の目の前にある建物は街のランドマークにもなっている。毎年1、5、9月に本場所があり、色鮮やかなのぼり旗が立ち並ぶ光景には思わずドキドキしてしまう。でも、実は場所のない期間も国技館はイベント会場として使用されることがある。最大1万人収容で、コンサートやプロレスの興行も行われており、相撲以外のエンターテインメントとも関係が深いのだ。土俵がない普段の姿を見ることはできないが、相撲ファン以外にも開かれた施設ということは覚えておきたい。
またイベントがないときも国技館は稼働している。国技館の地下に巨大な工場があることはご存知だろうか? 「手をつかない」ことから鶏は相撲では縁起がいいということで、相撲の聖地の地下にはやきとり工場があるのだ。相撲好きにおなじみの、濃厚醤油味のやきとりは場所の開催に関係なく日々、製造されている。観光案内所やJR東日本の駅弁店などで購入可能だそう。
相撲グッズがほしいという人はぜひ、国技館の入り口から入って左手奥の売店へGO。人気力士グッズはもちろんかわいいキャラクターのアイテムが手に入る。「近年、海外の方も増えてきたのでおもてなしの仕方もアップデートしたいですね」と話すのは売店を運営する国技館サービスの原 淑華(よしか)さん。相撲の伝統は大事にしながらも、時代に合わせ変化もしていきたいと語ってくれた。
そんな奥深い相撲の伝統を伝えている施設も注目だ。国技館内にある『相撲博物館』は入館無料で相撲に関する資料を目にすることができる。こちらも外国人観光客から高い人気。デジタルサイネージを設けるなど新たな試みも行いながら、相撲文化を世に広めている。また最近は博物館の尽力もあり、歩いて12分のところにある野見宿禰(のみのすくね)神社の整備が完了。博物館は今、神社のお守りを授与する場所ともなり以前よりさらににぎわいを見せる。神社に行ったあとに訪れるというのもおすすめだ。
場所が開催されていないときも、実は楽しい散歩スポット『両国国技館』。活気と熱気に満ちた本場所中とはまた違う穏やかな雰囲気を味わえるので、気軽に足を向けてほしい。
国技館の地下にある「やきとり工場」は、毎日稼働中!
地下で毎日作られる焼き鳥は肉、つくねでそれぞれ別々に焼かれ工法も違う。じっくり火入れし、何度もタレをつけるため冷めてもおいしいと評判! 場所の開催がなくても両国駅前の両国観光案内所などで購入できる。
場所中じゃなくても「売店」で相撲グッズを購入可能!
館内の一角で実は売店が営業中。好角家に限らず、一年を通しさまざまな層の客が訪れる。イラストや錦絵の入った品は外国人観光客からも人気!
本場所中はこの売店エリアが相撲案内所になる。
『相撲博物館』は本場所中でなくてもオープン!
蔵前国技館完成時にできたという歴史ある施設で、国技館の両国移転時に共に移ってきた。常設の展示に加えて、本場所の開催に合わせさまざまな企画展を行っており、場所の開催がないときも展示を見られる。化粧まわしや相撲の資料はファンにはたまらない!
2024年4月18日まで、大相撲の世界に描かれた2024年の干支「龍」を楽しめる「龍づくし」展が開催中。
相撲の神様が祀られている「野見宿禰神社」
『国技館』の徒歩圏にある神社。近年、『相撲博物館』が調査や工事を行い、参拝しやすい環境が整った。明治17年(1884)に相撲関係者により創建され、『日本書紀』に登場する相撲の始祖、勝利の神様として知られる野見宿禰を祀っている。『国技館』を訪れたらぜひ、ここまで足を延ばしたいところ!
『両国国技館』詳細
取材・文=半澤則吉 撮影=高野尚人 写真提供=国技館サービス 撮影協力=パールホテル両国
『散歩の達人』2024年2月号より