関東の雪は春が近づく頃に降りやすい!?
雪というと冬のイメージが強いと思いますが、実は首都圏では春が近づく頃にこそ降りやすくなります。過去を振り返っても東京都心で雪の降った日の数(雪日数)は、1月中旬から2月中旬に多くなっています。ことし、2024年は2月4日に「立春」を迎えて暦の上では春となりますが、首都圏ではこれからが本格的な雪の季節だといえるのです。
たとえば、2014年2月中旬や2018年1月下旬には関東地方や山梨県で記録的な大雪となりました。特に2014年は2週連続で週末に大雪になり、東京都心では最大で27センチ(2月8日・15日)、山梨県甲府市で114センチ(2月15日)、埼玉県熊谷市では62センチ(2月15日)の積雪を観測しました。
大規模な車の立ち往生や自動車のスリップ事故が大きな問題になったほか、新幹線の運転見合わせや飛行機の欠航が相次ぎ、雪に慣れていない首都圏は大混乱となったのです。
首都圏の雪予報が難しいワケ
普段はあまり雪の降らない首都圏だからこそ、天気予報で雪の可能性と聞くと注目度がかなり高くなります。首都圏で大雪となる時に多くの場合、原因となるのが「南岸低気圧(なんがんていきあつ)」です。
本州の南岸沿いを東へ進む低気圧のことで、季節を問わず現れます。気温の高い時に近づくと雨を降らせますが、雪をもたらすおそれがあるものをこのように呼んでいます。
南岸低気圧に伴う雪の予報は非常に難しいと知られていて、気象庁でも「予報が難しい現象」として紹介されています。その理由は、南岸低気圧の進むコースのほか、様々な要素を考慮して予報を行わないといけないためです。
まず南岸低気圧のコースについてです。
南岸低気圧が関東に近づいても陸地から離れて通ると、雲は広がっても発達した雨雲や雪雲はかからず、晴れ間の出ることがあります。ですが、陸地に近づきすぎると低気圧に伴う反時計回りの風によって、南から暖かい空気を引き込むため雨として降りやすくなります。この中間のルートを通る時に北から寒気を引き込み雪になりやすいですが、一筋縄ではいきません。
関東平野には冷たい空気がたまりやすいという特徴があり、上空の寒気がそれほど強くない場合でも予想以上に冷えて雪になることがあります。
このほか沿岸で南からの風と北からの風がぶつかりできる沿岸前線の影響が加わると、さらに予報が難しくなります。
直前まで雪になるのか雨になるのか断定するのが困難なこともあるのが現状です。「南岸低気圧」と聞こえてきたら、こまめに最新の気象情報や交通情報をチェックするようにしてください。
覚えておこう 雪の日の散歩の注意点
雪が強まる場合はなるべく外出を控えてほしいですが、めったに雪の降らない首都圏です。いつもと違った近所の景色を少しでいいから眺めて歩いてみたいと感じるものですよね。
ただし、雪道を歩く時は十分な注意が必要となります。すべりにくい靴で歩くことはもちろん、すべりやすい場所を覚えておき、なるべく歩幅を小さくして、一歩一歩靴の底をつけ踏みしめるように歩くことを忘れないでください。特に橋や歩道橋の上は冷たい風が吹き抜けるため凍結しやすく要注意です。横断歩道やバス、タクシーなどの乗降場所も多くの人に踏まれて固くなるためツルツルになってしまいます。
どんなに寒くてもポケットに手を入れて歩くと転んだ時に大変危険なので、手袋などでしっかりと防寒をすることも大事です。
万が一、転倒したときはしりもちをつくようにすることでケガを最小限に防げます。
ただし、大きな影響を及ぼす大雪が事前に予測される時は、気象庁や国土交通省が記者会見を開きます。こうした時は散歩はもちろん、不要不急の外出は控えるようにしましょう。
参考
気象庁ウェブサイト
過去の気象データ検索 東京の雪日数(2014年~2023年)
予報が難しい現象について(太平洋側の大雪)
文・画像=片山美紀、ウェザーマップ