寒い季節に咲き誇る「雪中四友」とは?

「雪中四友(せっちゅうのしゆう)」ということばをご存じでしょうか?これは中国で生まれたもので、古くから画の題材として好んで描かれた4つの花、梅(ウメ)、蝋梅(ロウバイ)、水仙(スイセン)、山茶花(サザンカ)のことです。文字通り、雪の降る寒い中で花を咲かせます。日本人にとっても親しみがあり、どれも街中で散歩しながら楽しめる花々です。

古くはお花見といえば「梅」だった!?

春が近づくと真っ先に花開くのが梅です。寒空の下、ふと見上げて木の枝の先に咲いているのを見つけた時は「春もすぐそこだ」とうれしい気分になります。桜に比べると小ぶりで少し地味な印象もありますが、実は古くは「お花見」といえば桜ではなく梅を愛でるイベントだったことをご存知でしょうか?

お花見の風習が生まれたとされる奈良時代、お花見として親しまれていたのは、中国から伝わった梅が主流でした。

奈良時代に成立した日本最古の和歌集とされる「万葉集」でも、桜に比べて梅を詠んだ歌が圧倒的に多かったのです。平安時代になり、やがて人々の関心は桜へと移っていきますが、春の訪れを真っ先に知らせてくれる梅の姿に令和の時代も魅了されている人は多いはず。

ことしは一足早く楽しもうと「梅見散歩」に出かけたところ、数日前に降った雪がまだ残っている中、ちらほらと可愛らしい梅たちが寒さに耐えるように花開いていました。梅と一口に言っても、赤にピンクに白、花びらにはグラデーションのように少しずつ違いがあります。そして、違いがあるのは色だけではありません。近くで遊んでいた子どもたちが香りも花によって違うことを教えてくれました。

早春に真っ先に咲くことから「百花の魁(さきがけ)」とも呼ばれる梅の花。その種類は数百種類にも及ぶといわれますが、色に香りに様々な違いを楽しんでみるのはいかがでしょうか?

奥ゆかしく美しい「ロウバイ」の香りも味わってみて

梅と姿形がよく似ている冬の花といえば、蝋梅(ろうばい)があります。

「梅」と名が付けられていますが、バラ科の梅とは別物でロウバイ科の植物です。透き通るような黄色い花びらは、ろう細工のように見えることからロウバイといわれるようになったそうです。

ロウバイの花言葉は「奥ゆかしさ」や「慈悲の心」など。お辞儀するように花を咲かせて、ほんのり控えめに香りでアピールする姿は花言葉通りの奥ゆかしさに思えます。

あまりの美しさに恋しちゃった!あの言葉の語源「スイセン」

スイセンの花には名前にまつわる興味深いエピソードがあります。まず「水仙」という漢字を当てた名は中国伝来のものです。古代中国の「仙人には天に在るを天仙、地に在るを地仙、水に在るを水仙」という文章が元になっているといわれています。

また、スイセンの学名は「Narcissusz(ナルキッスス)」です。何だか響きになじみのあることばではないでしょうか?

ナルキッススは自己愛を意味する「ナルシスト」の語源といわれています。

ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッススは、池の水面に映る自分の姿があまりにも美しいと陶酔し、そのまま死んでしまい、その場所に咲いていたのがスイセンだったという言い伝えがあります。

スイセンには「雪中花」という別名もあります。一定の寒さにさらされないと開花できず、名前の通りに寒い季節だからこそ楽しめます。

ツバキと似ている!?散り際に注目してほしいサザンカ 

「雪中四友」ラストの花は、サザンカです。

街中の公園や道路沿いの植え込みでもよく見かける花です。ツバキの花とよく似ていますが、花の咲き方や葉の大きさなどに違いがあります。ことしはもうサザンカの見頃を過ぎていますが、そんな時だからこそツバキと決定的に違う特徴を見ることができるんです。

その違いとは、花の散り方です。

ツバキの花はボトリとお花の形を崩さずに落ちるのに対し、サザンカは花びら一枚一枚ばらばらに散っていきます。

朝晩を中心にまだ冷える2月。今だからこそ楽しめるお花を眺めながら、春を待ちたいですね。

 

文=片山美紀 写真=片山美紀・写真AC

 

参考
「空の歳時記」(京都書院)平沼洋司
北海道 花めぐり・庭めぐりhttps://www.pref.hokkaido.lg.jp/kn/tkn/hana/flower/he009.html
ウェザーニューズ 「サンサカ」から読み方が変わった、ツバキに似た花とは?
https://weathernews.jp/s/topics/202312/150095/