門前仲町で50年以上つづく『富水』
もともとは魚屋として80年以上前に今とは別の場所でお店を構えた『富岡水産』。今ある場所にお店を移転した際、広々とした空間を定食屋として利用できないかというアイデアから現在の『富水』がスタートしたのだそう。
現在の女将さんは3代目。定食屋としての『富水』は50年以上まえにオープンした。
「この辺りは以前とくらべお店も少なくなってきてねぇ」と寂しそうに女将さんは言う。
「以前はもっとにぎわっていた場所だったけど、家族経営のお店が多くて、後継者がいなくなってしまい、お店を畳んでしまう事が多い」とのこと。
そんな中、3代も続いている『富水』の人気を探ってみた。
魚が新鮮! 魚屋が営む定食屋さんは大人気
3代も続いている『富水』の人気は2つあった。一つはなんといっても新鮮な魚。もう一つは女将さんの人柄だ。まずは新鮮な魚について。魚屋直営の『富水』。魚屋の魚がすぐに食べられるのだ。メニューは、焼き魚・煮魚・フライ・刺し身が中心で、今回は富水定食の上1250円(刺し身・天ぷら)を頂いた。刺し身はマグロとはまちの2種類・天ぷらは茄子とシシトウ、エビとイカ。
マグロは口の中で溶けてしまうほどで、とてもおいしく新鮮で、刺し身だけではなく天ぷらも頂けるのはうれしい。満足度はかなり高かった。もしがっつり食べたいなら、丼メニューもあるので丼を頼んでみよう。
念のため伝えておくと、同じメニューでも夜の部は少し金額が違うので要注意だ。
さらにうな重3750円も一品。土用の丑の日というと夏に食べるものだと思いがちだが、鰻の旬は秋から冬にかけて。鰻は、冬眠にそなえて栄養をしっかりと採っているので脂がのっているのだ。『富水』の鰻も、大きく脂が乗っている。それでいて身も締まっているのでとてもおいしい。
タレは程良く、鰻の旨さを引きたたせている。取材じゃなければ日本酒が飲みたいなと思ってしまった。冬の季節に食べる鰻には、箸が止まらないのだ。
近くにある神社へ初詣に行った帰りに、熱燗とうな重という組み合わせは冷え切った体にしみわたり最高だろう。
下町の気風の良さが魅力!女将さんのファンになってしまった
3代も続いている『富水』の人気の理由、2つ目は女将さんの人柄。笑顔で元気、いかにも下町の女将さんという雰囲気だ。取材中も、来るお客さん来るお客さんに「まいど!」「いらっしゃい!」「どこでも好きなところに座って!」と店一番の大声を出している。こちらまで元気になってしまう。お会計の際も、常連のお客さまなのだろうか、笑顔で立ち話をしている女将さん。「またおいで!」「お腹いっぱいになったかい!」とまるで実家の母に言われているような気持ちになる。
おいしくて新鮮な魚を食べたいという方も多いだろうが、女将さんの元気な笑顔をみたいというファンも多いのではないだろうか。僕はすっかり女将さんのファンになってしまった。
活気のある店内は広々、回転が早いのも特徴!
そんな人気のある『富水』は思っている以上に店内が広い。テーブルも大きく、イスもゆったりしているので窮屈な感じはまったくしない。満席で80人くらいは座れるよと女将さん。お店の開店は11時。次から次へとお客さんがやってくる。それでも注文してから、料理が提供される時間も早いので、回転も良い。外で並んでしまったとしても、ちょっと待てばすぐに席につけるだろう。
料理をいただき、店外に出ると女将さんは魚屋の切り盛りをしていた。バイタリティーがすごい。少しの時間ではあったが『富水』のパワーに年末のたまった疲れも吹き飛んでしまった。
最近元気がないなと感じている人は『富水』のおいしい魚と女将さんから元気をもらうといいだろう。
取材・文・撮影=アサノ カツヒト