お話を聞いたのは……ヤオコー本社 コーポレートブランド戦略部の皆さん

部長 下池周子さん

【好きな商品】
自家製厚焼き玉子
買い物帰り、ちょっとつまむのにもちょうどいいハーフサイズが好き!

主任 日吉麻衣子さん

【好きな商品】
ミゲールさんのアボカド
どれを選んでも、固すぎず、柔らかすぎず、いつも食べごろなのが最高!

山﨑丹菜さん

【好きな商品】
鰹だしを効かせた 大粒真だこたこ焼き
冷凍と侮るなかれ。ソースなしでおいしい yes! premiumのたこ焼き!

本社社屋はヤオコー川越美術館と同様、伊東豊雄氏のデザインで造られた。
本社社屋はヤオコー川越美術館と同様、伊東豊雄氏のデザインで造られた。

青果店からスーパーマーケットへ。今も続くヤオコーの進撃

ヤオコーの創業をたどると、明治時代まで遡る。創業者・川野幸太郎によって明治23年(1890)に比企郡小川町で開かれた青果店『八百幸商店』は、昭和に入ると息子の清三が経営を継ぎ、野菜だけではなく、鮮魚、乾物まで扱う、界隈随一の大店となった。

昭和20年代後半頃の「八百幸商店」の軒先。小川町でも評判の店だった。
昭和20年代後半頃の「八百幸商店」の軒先。小川町でも評判の店だった。

そんな折、清三の弟・壮輔の元へ嫁いできたのが、のちのヤオコー名誉会長・川野トモだ。彼女こそ、『八百幸商店』に海外式のセルフサービス方式を導入し、スーパーマーケット・ヤオコーへと昇華、チェーン展開も実現した人物である。
対面方式の商売が主流だった当時、トモの挑戦は先進的で、苦難の連続だったであろう。しかし、常に学び、行動するバイタリティと、徹底的に顧客目線の店づくりで地元住民の信用をつかみ取る姿が多くの人々の心を動かし、現代のヤオコーの礎を作った。

セルフサービス方式に転換した頃の「八百幸商店」。
セルフサービス方式に転換した頃の「八百幸商店」。

「トモ会長は、本当に商売が生きがいで、夢中になっていたと聞きます」とは、戦略部の下池さん。「お客さまへのおもてなしの心を忘れないこと。そのために、社員一人一人が失敗を恐れずに挑戦すること。これらが今も風土として根付いています」。

1986年には、より人材確保に力を入れるべく、都心に近い川越へ本社機能を移転。さらに1994年以降は、各店舗の専門性を高める「個店経営」を明確に会社の方針として打ち出した。本部からの指示ではなく、各店舗が主体的に、住民の豊かな食生活への貢献を考える。この現場主義の経営スタイルを原動力に、ヤオコーは今でも快進撃を続けているのだ。

現場主義の生き生きとした店づくりに魅了される

店舗へ足を運べば、市場のようににぎわう雰囲気を目の当たりにして、胸が高鳴る。

特に、スーパーマーケットの顔たる青果や鮮魚、精肉は、気合いの入れ方もひとしおだ。青果売場では、県内外から仕入れた新鮮な野菜がズラリ。地元野菜の売場は、生産者自身が価格を決め、朝採れの野菜や完熟の果物を納品するという。

「日頃から農家さんとコミュニケーションをとり、豊作の時期や作付け状況などの情報を共有してもらうんです。それを元に、店舗では特設売場を作って旬のものを売る。そのようにして、生産者の思いをお客さまに伝えることに力を入れています」。

見よ、このマルシェ感! “マルシェ”をイメージした川越的場店。青果、生鮮、精肉が同ラインにある。
見よ、このマルシェ感! “マルシェ”をイメージした川越的場店。青果、生鮮、精肉が同ラインにある。

試食会などのイベントも、生産者と二人三脚であることが多い。戦略部の山﨑さんは、「最近では鳥取県産スイカの店頭販売が印象に残っています。生産者の方と一緒に、10tのスイカをひたすら売りまくるっていう(笑)」。

なかなかインパクトの強い絵面だが、本気度は120%、ビンビン伝わってくる。面白い!

生鮮売場をのぞけば「刺身バイキング」が開かれていたり、精肉売場ではちょっと珍しい肉を発見したり、売場の気になる商品に、足を止められてしまう。知らず、買い物かごも重くなる。

また、デリカの作り込みもハンパない。20年を超えるロングセラー商品のおはぎは、単品で売り場があるのだから、オドロキだ。なんと、同じ形、同じ大きさに手作りできるよう修業を積み、厳正なる「おはぎ検定」を合格したスタッフが担当しているという。思わず売場の商品に目をやるが、成形のブレは皆無。いや、すごすぎでしょ。

PB商品は、「良い目利きになるためには、商品を熟知せねばならぬ」という育成方針から、バイヤーが開発を担当。現在、約1300種のラインナップだが、これまた厳しい審査をくぐりぬけた品々ばかりなのである。

創業期から脈々と受け継いできたバイタリティやホスピタリティに、個店経営ならではの柔軟な発想が融合した、現代のヤオコー。帰結する先は、「お客さんの喜ぶ顔を見るために全力」。それに尽きる。その思いが売場に、商品に、スタッフの表情に映り、にぎわいを作るのだ。

今後も「街の中央市場」として、暮らしに彩りと楽しさを与えてくれるに違いない。

ヤオコーのココが楽しい!

地元野菜売場!

地元野菜は、店長と青果主任が実際に農場へ赴き、作柄を確認することもしばしば。

手握りおはぎ!

「ヤオコーと言えばおはぎ」と言わしめる大人気商品。厳しいおはぎ検定をクリアしたスタッフの職人技が圧巻!

デリも超本気!

的場店には成形と焼きを目の前で見られるピザステーションが。

ライブ感あふれる鉄板焼きコーナー。実に18層の厚焼き玉子はひと口頬張れば出汁がしみ出る。
もはや和食店の味っすわ!

『ヤオコー 川越的場店』店舗詳細

住所:埼玉県川越市的場新町21-10 ザ・マーケットプレイス川越的場/営業時間:9:00~22:00/定休日:無(臨時休あり)/アクセス:JR川越線 的場駅から徒歩15分

取材・文=どてらい堂 撮影=井上洋平 資料提供=ヤオコー
『散歩の達人』2023年10月号