学生時代に有楽町のジャズ喫茶「ママ」へ先輩に連れられて行ったのがジャズとの出会い。プレスリー好きだった耳に鳴り響いた音楽にとても親しみを覚えた。その後、郷里で就職し、初任給で最初のレコードを購入。いつかジャズ喫茶をやりたいという想いを抱きながら、友人・知人のつながりのなかで念願を果たしたそうだ。
飾られた写真や絵からも和気あいあいとした店の雰囲気と歴史が伝わってくる。特に目を引くのがサックス奏者ズート・シムズの大きな肖像画。聞けば相澤さんは、全国に会員200人を擁するズート・シムズファンクラブの会長だとか。「単にお鉢が回ってきただけだけど、ズート・シムズは本当に好き!」とさらに笑顔に。
「演奏に温もりがあるの。常に盛り立て役で陰の人だけど、キラッと光る演奏が聴けると、バンマスの親分よりいい演奏じゃないか!とたまらなくなる。常に歌っていて、とにかく素晴らしい」とズート愛やまぬマスター。
そこはかとない温もりにあふれている店だ。
【店主が選ぶ一枚】Zoot Sims “Live in YAMAGATA vol.2”
閉店テーマもズートだぞ
店の一枚はズートを山形に呼んだときのライブ録音盤『ライブ・イン・ヤマガタvol.2』(1977)。長年の付き合いだったプロモーターの故・西陰嘉樹とともに成功させた伝説のライブだ。「最後、定番の終わりのテーマが、終われないでノリノリなの」と、レコードをかけながらそのエネルギーのほとばしりに満面の笑みの相澤さん。閉店テーマとしてテープで毎日流すのも、やはりズート。クインシー・ジョーンズが彼のために書き上げた「Evening in Paris」だ。
取材・文=常田カオル 撮影=谷川真紀子
散歩の達人POCKET『日本ジャズ地図』より