競技人口の少ないパラ競技界の強力な助っ人
そもそも競技人口がパラ競技は圧倒的に少ない。だから競技団体会員の会費収入も多くは見込めず、事務局が役員宅だったりとボランティア精神が支えてきた。練習場所確保も難しい。
そんなパラ競技界に強力な助っ人登場。長年障害者福祉に携わる日本財団の支援により設立された「日本財団パラリンピックサポートセンター」だ。開設当初から関わる金子知史さんに話をうかがった。
「2013年の東京2020オリンピック・パラリンピック招致決定をきっかけに、まずパラリンピックの現状を調べる研究会を発足、2015年にセンターを立ち上げました」。浮かびあがったのは、競技団体のスタッフ確保や練習場所、それに運営費不足などの諸問題だった。
そこで港区赤坂の日本財団ビル内に、各競技団体の共同オフィスを設置。現在、夏冬あわせて29のパラリンピック競技団体がここに集結。スタッフが一堂に集って情報交換できるのも大きな収穫だ。
経済界へスポンサー協力のお誘いに「お見合い」の場を設けることもある。また競技団体を悩ませる助成金の煩雑な手続き代行、翻訳者、税理士に弁護士と心強い支えが盛りだくさんだ。パラ選手を対象にスピーチトレーニングを行い、学校向けの出前授業を企画するなど、パラスポーツ普及事業にも取り組んでいる。
車いす競技も思う存分練習できる喜び
もうひとつの大きな課題が練習環境だ。「とある調査ではトップ選手でも5人にひとりが練習場の貸し出しを断られた経験があるそうです」と金子さん。車いす競技は床にゴム製タイヤ痕が付き、転倒で床を傷つける。そこで日本財団パラアリーナが建設された。バリアフリーの専用体育館だ。「トップアスリート向けのカッコいい建物です」と金子さん。掃除や床の傷は専門業者が修復しなくても運営スタッフで対応できる。パラアリーナは時間単位で借りるだけでなく、数日間同じ競技で予約することも可能だ。
「2018年の車いすラグビー世界選手権優勝もパラアリーナで練習できたから」とこの連盟広報担当・佐藤さんは語る。
パラアリーナは惜しくも2021年度をもって閉館予定だ。でもパラサポセンターも当初は同時期に終了のはずが、「日本財団からの支援継続が決まりました」と金子さん。きっと関係者は大喜び、私たちもパラ競技を知り、触れ合うきっかけをもたらしてくれたことに大いに感謝だ。
取材・文=眞鍋じゅんこ 撮影=鴇田康則
『散歩の達人』2021年9月号より