目白・椎名町の基礎知識
目白といえば学習院大学の印象が強い。多くの皇族が通っていたこともあって、目白=高級住宅地というイメージができあがった。
実際、周辺は都内有数の高級住宅地で、目白通りを挟んで北側には尾張徳川家ゆかりの徳川ビレッジがあり、南側には皇族・華族の方がお住まいになった下落合のお屋敷街が広がる。この一角にアトリエを構えたのが洋画家の佐伯祐三と中村彝。静かな環境が創作の場に最適だったのだろう。
南長崎(旧椎名町)は、多くの漫画家たちが青春時代を過ごしたトキワ荘があったところ。町名変更で椎名町は駅名のみになったが、『トキワ荘マンガミュージアム』が街の記憶を伝えている。
1 徳川ビレッジ
静かでモダンな高級住宅地
尾張徳川家当主の本邸跡地に造られた高級住宅地で、庭付きの大きな邸宅が立ち並ぶ。外国人居住者も多く、どことなく海外の雰囲気。敷地内にある徳川黎明会は、徳川家の美術品や文献を保管しており、多くの公益事業を展開。
2 目白庭園
春にはカルガモも訪れる大きな池を、のんびり一回り
庭の真ん中に池を配した回遊式の日本庭園で、シダレザクラや紅葉など、四季折々の花や草木が楽しめる。水面に優雅な姿を映す「赤鳥庵」はこの地で創刊された文芸雑誌『赤い鳥』にちなんで命名。
志むら
一年中楽しめるかき氷の「崖」はインパクト大
昭和14年(1939)創業。あんこがおいしいと評判の老舗和菓子店で、九十九餅と福もちは創業以来の名物だ。高さのあるかき氷748円〜は「目白の崖」と称され、季節メニューの種類も豊富。年間を通して大人気だ。
3 切手の博物館
世界でも珍しい切手専門の博物館
切手を通じて郵便の歴史に触れることができる。企画展示室は4カ月ごとに展示が替わり、毎回約800点の世界の切手を紹介。ミュージアムショップや切手専門の図書館も併設している。
4 おとめ山公園
緑豊かな湧水スポット
徳川家の所有地で、鷹狩りに使われていた江戸時代に、一般人立ち入り禁止の意味の「御留山」と呼ばれていたのが名前のルーツ。「東京の名湧水57選」に選ばれた湧水がある。
5 中村彝アトリエ記念館
天井から光が降り注ぐ、明るいアトリエ
大正時代に活躍した洋画家・中村彝(つね)(1887〜1924)のアトリエ。当時の部材を数多く再利用して、大正5年(1916)の建築当初の姿に復元した。室内の家具や調度品(展示品はレプリカ)は、彝の多くの作品に重要なモチーフとして描かれた。
6 佐伯祐三アトリエ記念館
貴重な大正時代のアトリエ建築
フランスと日本を行き来し、街角の風景を描いた洋画家・佐伯祐三(1898〜1928)の、日本で唯一の活動拠点。ここで連作「下落合風景」に取り組んだ。
7 豊島区トキワ荘通りお休み処
ミュージアムグッズはここで!
ミュージアムの関連グッズを販売し、2階はトキワ荘の兄貴分・寺田ヒロオの部屋の展示がある。おみやげはトキワ荘のマンガ家たちが飲んだという焼酎のサイダー割り「チューダー」の飴が人気。
8 豊島区立トキワ荘マンガミュージアム
当時の姿を徹底的に再現!
マンガの巨匠が集った伝説の木造アパート「トキワ荘」を忠実に再現。2階に上る階段は、あえて「ギシギシ」という音が鳴るリアルさだ。館外のレトロな電話ボックスも要チェック。
赤門テラス なゆた
「人」を「良くする」ための「食」を大切に
お寺の中の緑豊かなカフェ。野菜を中心に、丁寧で体にやさしい料理を提供する。季節の野菜たっぷりのお寺ごはん1584円は有機発酵玄米に変更可能。もちもちとした食感がたまらない。
【街探検】トキワ荘の伝説
多くのマンガ家たちが育っていった伝説のアパート
トキワ荘は、豊島区椎名町(現豊島区南長崎)にあった木造2階建てのアパート。昭和28年(1953)、手塚治虫はこのアパートの住人になった。
手塚は、翌年、引っ越すが、手塚を慕って、寺田ヒロオ、藤子不二雄(藤子・F・不二雄、藤子不二雄(A))、石ノ森章太郎、赤塚不二夫などがトキワ荘の住人になり、青春の日々を過ごす。
トキワ荘は昭和57年(1982)に解体されたが、著名なマンガ家を輩出したアパートがあった町として、マンガの聖地になった。地元の商店街や町会は、トキワ荘を地域の文化遺産として伝えていこうと「トキワ荘通り協働プロジェクト協議会(現・トキワ荘協働プロジェクト協議会)」を発足させる。
そして、「トキワ荘のヒーローたち マンガにかけた青春」などの企画展を開催したり、トキワ荘跡地モニュメントや記念碑「トキワ荘のヒーローたち」を設置するなどの活動をしてきた。
その集大成ともいえるのが、『トキワ荘マンガミュージアム』の開館だ。再現されたマンガ家たちの部屋や街の歴史を紹介するコーナーなどで、“トキワ荘の青春”を体感してみよう。
取材・⽂・撮影=アド・グリーン
『街がわかる 東京散歩地図』より