スカイツリーのおひざ元、押上には〝肉料理〟といえばここという名店がある。『もつ焼 まるい』は、モルタル一軒家を改装して酒場にしたインパクト大な佇まい。

特に二階にある席は、完全に〝人んち〟でここが本当に酒場なのか、酒に酔ってなくても混乱してしまいそうになる。

そんな〝人んち〟で出てくる肉々しい『馬刺し』は、新鮮そのもので食べ応え抜群。この店の目玉料理というべき『仔牛ステーキアボカド』など、まずその迫力のビジュアルに誰もが歓声を上げる。コッテリとしたアボカドと一緒に、仔牛肉の弾けるような食感と肉汁が合わされば他に何もいらない。
他にも『牛レバたれ焼き』や『黒タンカルビ焼き』など、目にも鮮やかな肉料理の数々に、もはやロマンスを感じざるを得ないが……

ここには本題のパン、『サンドイッチ』があるのだ! ただのサンドイッチではない。超極厚のパンから大胆にはみ出したレタスとトマト、ここにも仔牛肉がムギュッと押し挟まれているのである。

パンと酒場だけでも珍しい組み合わせなのに、この断面のインパクトよ! 本家パン屋さんでもこんなサンドイッチを出すところはないだろう。自分の限界の1.4割増しで口を開け、一気に頬張る──ウマいっ!! ひと噛みひと噛み、ふっくらとしたパンの間から、ジュワリと肉汁と野菜の旨味が染み出すようだ。それは大胆に見えて、実はパンの厚みと具の量の絶妙なバランスからなる〝奇跡〟ともいえる。

パンと酒場が出会った──そう、これは〝ロマンス〟だ。
パンという酒場とは畑違いなものが逢瀬する……まるで映画『ローマの休日』のようにとは大げさだが、私はそんな素敵なロマンスを求めて、夜な夜な酒場に訪れているのだ。……と、当分それを大義名分に飲みへ行こうと思う次第で御座います。


取材・文・撮影=味論(酒場ナビ)